Kuniのウィンディ・シティへの手紙

シカゴ駐在生活を振り返りながら、帰国子女動向、日本の教育、アート、音楽、芸能、社会問題、日常生活等の情報を発信。

早川俊二札幌展で新たな早川絵画の魅力を発見!~HOKUBU記念絵画館にて

2015-10-04 | アート
大荒れの天気との予報にもかかわらず、札幌のHOKUBU記念絵画館で開催中の「早川俊二の世界 遥かな風景への旅」に行ってきました。



豊平川の横で途中風は強かったけれど、人気のない簡素な場所に建てられている聖堂をイメージした絵画館の正面の入り口をくぐると、魅惑の早川絵画群が待っている。



2つのフロアを使っての照明のあたり方、27の代表作の作品の並べ方、人がいないほどよい空間に早川作品の一つ一つが息づいている。
早川絵画の世界にどっぷり浸れる素晴らしい展覧会だ。
会期は今日で終わりだが、北海道はもちろん遠くから足を運ぶ価値はある。

2階から早川展始まるが、最初に出会うのが「女性の像・2003」(2003) で、2004年の展覧会のカタログの表紙にもなった早川氏の代表作中の代表作。



「Perfect!完成度高い!」と思わず叫びそうになる瞬間。
長野展でも何度も観ているのに、初めて観たような新鮮さ。
ひとえに神々しい、女神のような像が浮かび上がり、残像が目の奥に焼きつく。
女性の着衣の左側の水色のマチエールと右側の紫のマチエールがいつの間にか昇華して、全体が光で包まれているような感覚。
知的で孤高の女性がオーラを放つ瞬間を永遠に封じ込めたようだ。
この作品は他の作品とスペースが違って、一つの空間で他の作品に邪魔されずに対峙できるので、そのインパクトはより大きかった。

2階の隣のスペースには、私の気に入っている秀作「お茶を飲む人」(1995) の落ち着いた少女が静物画の砂糖壺や胡椒ひきと呼応し合っている。



フェルメールの女性像を思わせるような気品さをたたえ、落ち着きはらった知的な目鼻立ちの美少女が私たちの前に抜け出してくる。
削っては塗りを繰り返された透明感のあるグレーと茶を基調としたマチエールをバックに、胡椒ひきと青い鳥の模様の白いちゃわんの周りからほのかに光が発せられ、手に届きそうだ。



白い砂糖壺とほうろうの柄杓から立ち上がる無垢で純粋な心を感じる。


少女のセーターも白。
この3作品に強く惹かれる鍵は、「はやかわホワイト」とでもいおうか、早川氏が長年の油絵の具の研究で創り上げた独特の白なんだと実感する。

この部屋の真ん中に展示されているのが、展覧会唯一のモノクロのデッサンの「黄昏の光」(1983)で、初期の大作だ。



一見写真のようで写真ではなく、ドローイングのようでドローイングでもないかのような巧みな光と影の描写。
光と影を使い分けた巨匠レンブラントを思わせるようなモヤっとした空気感。
「何も描いてない所に光や空気感を感じるところがすごい」とこの展覧会を企画開催したHOKUBU記念絵画館長小西政幸氏は言う。
まさに西洋の巨匠レンブラントと東洋の巨匠長谷川等伯の世界の融合とでもいおうか…
圧巻の小宇宙の中で、人物の存在感が輝いている。
この女性の目線は何を捉えているのか。
何のためにここにいて、何をしようとしているのか、そそられる作品である。

この作品から一つおいた「クレマンスの肖像・ I」(1998) だが、今までさほど気にならなかったのに、今回いたく気に入った。



「はい、私はいつでもここにいます」という彫刻を施したようなクレマンスの声が聞こえてくるほど。
クレマンスは遠くにいるのか近くにいるのか…
私たちを惹きつけてはふりはらい、手の届かないどこかへ行ってしまいそう。
周りから出る光で私たちの心を惑わすのだろう。

代表作の「アフリカの壺」(1997) と私の大好きな「着衣するヴェラ・II」(1998) が隣同士に並ぶ。



ヌードのヴェラは、いつ見てもみずみずしく透き通って美しい。
女性のヌードをここまで神々しく美しく描いてくれる早川氏の才能に拍手!


初期の作品群

3階は話題になった2009年の個展の女性像の作品の迫力がすごくて、まるで時が止まったかのよう。
スペースが狭いせいか女性たちが私たちの心にグンと直接入り込んでくる。
「まどろむAmery-2」(2008) から出てくるおびただしい数の磁力のような波長がビシバシ胸に伝わってきた。


左がAmery-2の作品

今まで「まどろむAmery-1」(2008) の方を気に入っていたのだが、今回「Amery-2」の方に気持ちは一気に傾く。

いままで近寄りがたかった壮大な大画面の「風景へ-2 (Josette) ・2007」(2007-08) のジョゼットは、独立したスペースで観たせいか、今回みじかに感じられた。



「眠るtoto-2」(2006) の早川夫妻の愛猫totoも健在でまどろんでいた。



絵画館の普段の展覧会より大幅にお客を呼び込んだ早川展で、人々がその感動をこう表現している。
絵の中に吸い込まれていくような気持ち…
心が静まり浄化され、観ていると心が落ち着く…
何かの願いを込めているような感じ…



そして一番多かった共通コメントは、「また来ます」。
そう、何度も行きたくなる早川俊二札幌展でした。

次の早川俊二展は、10月30日から新潟の砂丘館に、来年1月は山形の酒田市美術館に巡回する。

札幌展
2015年7月16日~10月4日 10:00-17:00 開館日 木・金・土・日曜日
HOKUBU記念絵画館 TEL: 011-822-0306
URL: http://www.hokubu-kinen.or.jp/

新潟展
2015年10月30日~11月29日 9:00-21:00 月曜休館・祝日の場合は翌日
砂丘館 TEL: 025-222-2676
URL: http://www.sakyukan.jp/

酒田展
2016年1月5日~1月26日 9:00-17:00 月曜休館・祝日の場合は翌日
酒田市美術館 TEL: 0234-31-0095
URL: http://www.sakata-art-museum.jp/

早川俊二長野展実行委員会事務局
ブンゲイ印刷内 TEL: 026-268-0333

早川俊二長野展 URL: http://www.shunji-hayakawa.com/

早川俊二国内展事務局
アスクエア神田ギャラリー内 TEL: 03-3219-7373