Kuniのウィンディ・シティへの手紙

シカゴ駐在生活を振り返りながら、帰国子女動向、日本の教育、アート、音楽、芸能、社会問題、日常生活等の情報を発信。

パリ在住画家早川俊二氏からの近況報告〜早川氏のメールより

2019-09-03 | アート
このブログで前回早川俊二さんの近況報告を書いたら、すぐに早川さんからメールが届いたので、本人の許可を得て紹介します。

ブログ拝読しました。
僕の近況を皆様にお知らせいただきありがとうございました。
前立腺癌が発現してから、メールをお持ちの方々には随時今年の6月初めのMRI検査までお知らせをしましたが、2017年の2回目の検査で少々縮小してから、そのまま大きくならずに2年間くらい変化しませんでしたので、最後のお知らせということにさせていただきました。

実はその後8月半ばに総合血液検査がありまして、前立腺のPSA値が2ポイント下がっており、いよいよ食事療法の影響が出てきたかなと夫婦で喜び合いました。他の検査値はすこぶる良くなり、薬のたぐいはビタミンD3以外は処方されていませんでしたので、食養の影響以外に考えられません。体調の方もパリの2回の猛暑で少々夏バテになったかなという以外、ここ10数年来の中で一番良いように思います。3月に馬場さんにお会いしたとき撮ってもらった写真を見ると、どこかしらまだ病み上がりの顔をしているなと自分では思いますが、その頃に比べると体調がよく力も出てきて、一段と健康に食い込んでいると思います。

酒田市美術館に絵を所蔵していただいて、不特定多数の人々に絵を観てもらえるのは大変嬉しいことでした。
4箇所の早川俊二展の期間中に、どこの美術館で絵が見られるのかという質問がありましたので、今回それが酒田市美術館で実現でき、また札幌のHOKUBU記念絵画館に2点すでに所蔵していただいているので、少しずつですが早川絵画が知られる機会が増えて大変嬉しく思います。


「女性の像-1」(2008年)HOKUBU記念絵画館所蔵


「茶色のピッシェ」(2008年)HOKUBU記念絵画館所蔵

『月刊美術』7月号の特集も内容が良かったですね。療養中の掲載でしたので、読むと何か焦る気持ちが湧いてきますが、次回の発表を待っていただけると嬉しく思います。

さて、馬場さんの文中にある、新年に観た「ルーブル美術館のギリシャの壺」のことを少々語りたいと思いますが、何しろ文才から遠いこの頭には、言葉での表現は難しいものがあります。あのときは、「僕の残る人生はこの受けた感覚を実現できれば良いな」といたく感動をしたのです。ルーブルに行くたびに観ている壺でしたが、その時は何か天からの啓示のような衝撃的な感動でした。この感動を絵で表すのは並大抵のことでは表現出来ないだろうと思えましたが、多分この2年間の体質改造で、感受性そのものが新たな世界に入り始めたかもしれません。この世に生まれて生きている、この生命(いのち)という不思議な現象がとてつもなく尊く、そして更に何かを創造する(生みだす)という芸術の世界は、またとてつもなく不可思議ですね。 永遠の波動エネルギーを発し続けられるような絵を創造したいと強く思います。

長くなりましたが、ブログに紹介していただき感謝!

早川俊二 2019年9月2日 気持ちの良いパリの夜に

パリ在住画家早川俊二氏近況〜酒田市美術館が作品3点所蔵、『月刊美術』7月号作品掲載

2019-09-01 | アート
皆さま、大変ご無沙汰しております。少しずつ暑さが和らいでいく中、いかがお過ごしですか?こちらは夏休み3週間ほどアメリカへ行ってまいりました。またこの旅行については詳しくご報告できればと思っています。さて、久しぶりにパリ在住画家早川俊二氏の最近の動向をご報告いたします。このブログが早川さんの広報活動の一環ということで、ご本人からも了承を得て書いています。

まず、早川さんのお母様が亡くなられたため今年の3月日本に帰国されたおりに、奥様の結子さんとともに早川さんにお会いしたときのことです。 早川さんとは、2015〜16年の日本国内での巡回展以来なので、3年ぶりでした。びっくりしたのは、食事療法のため体重がかなり落ちて、顔も体もほっそり若々しくなられたことです。日本で普段会えない人々に出来るだけ多く会うため、相変らず精力的に動いていらっしゃるようでしたが、疲れを見せず、生き生きとされていました。体調が良いせいか、今後の作品への創作意欲に溢れているようでした。


銀座でのショットで『月刊美術』7月号にも掲載された。3年前の展覧会の時の重圧に満ちた暗い表情と打って変わって、明るく軽やかな表情。

2つ目の報告は早川関係者、ファンにとって嬉しいビッグニュースです。2016年の巡回展の最後の舞台となった酒田市美術館が早川作品を3点所蔵しました。結子さんが自身所蔵の3点を美術館に寄贈されたそうです。石川好館長のお話では、おりをみて展示できるようにしてくださるとのこと。2015年6月の長野展を皮切りに札幌、新潟、そして酒田へと回った「早川俊二 遥かな風景への旅」展での代表作、「まどろむAméry-2」(2008年)と早川夫妻の愛ネコを描いた「眠るtoto-2 」(2006年)と「錆びた機械油差しと貝、砂糖壷」(2008年)です。展覧会カタログの表紙にも「まどろむAméry-2」は使われています。今までは早川さんの数年おきの個展でしか作品を観れなかったのが、東北の美術館に行けば毎年あの神々しいAméryに会えるかと思うと、心踊りますね。








3つ目の報告は『月刊美術』7月号の巻頭特集「ベテラン・個性派洋画との再会 心で集める絵」で早川作品が紹介されています。代表作の「まどろむAméry-1」(2008年)が1ページにわたって大きく出ていて、最初の各作品の紹介ページには、「風景へ(コーヒー挽き、砂糖壷)」(2004年)が掲載されています。個人的に「まどろむAméry-1」は、2009年の個展でのデビューの時からお気に入りだったので、正直「やっとか!」という感じです。『月刊美術』の2011年12月号、2013年7月号、2015年6月号と、酒田市美術館所蔵の「まどろむAméry-2」が繰り返し掲載されていました。





「まどろむAméry」シリーズのこの2作はタッチが違います。「Améry-1」の方は何層にも塗り込められて生み出された独特のマチエール画面からAméryがすくっと浮かび上がってきます。Améryの顔の向かって左側の影から頭にかけて放たれる幻想的な淡いパープルの光の中で、強烈な存在感と生のエネルギーを感じます。一方「Améry-2」は、Améryがあたかも朝もやの自然の中で横たわっているかのような印象・・・・・・Améryの体全体の内から放たれる心地いい柔らかな光からゆらゆらとしたまどろみが伝わってきます。こちらはバックと同化している感じを受けます。過去あちこちで専門家によって評論・紹介されている作品二つですが、ここであえて自分の印象を再び書いてみました。   

この7月号の特集の最後の早川さんの手記には、「ヨーロッパ絵画(油彩)の膨大な量と高い質を観て、東洋人である自分に何ができるかという問題と平面絵画における時間と空間性を問い続け現在に至ります」と書かれています。

3月末の帰国の際に少しお話を伺ったので、その時の心境も報告いたします。
まず、「共生共存の豊かな意識を持つ縄文時代の心を持つ日本人として、その心をヨーロッパ的な手法の上に絵画を通して伝えたい」と強調されていました。
そして、今年1月末にルーブル美術館で見た古代ギリシャの小さな壺にも同じような共存共栄のような暖かさを感じられたそうです。「ミケランジェロもセザンヌもレンブラントもそれは時代を超えて、非常にすごいエネルギーを持っているもんです。湧き上がってくるように。それこそ僕の先生ジリが言ったように、芸術というのは太陽のように常にエネルギーを発散するものでなければいけない」と力を込めて言われました。
「時代の流れの中でモードに流れるんじゃなくて、時代を作っていくという意識でもってやっていく」ときっぱりと誇り高く言われました。
2016年の展覧会後、前立腺癌を患い、2年間絵を描くことを意識的に辞めたそうです。日々の食事療法で体調を少しずつ少しずつ時間をかけて整えていかれたそうです。「絵を描きながら病気を治すことができないことがわかっていて、体に力が入らない。前立腺癌で意識的に2年間筆を止めてた。(しかし)この2年間僕の次のステップに行くためのエネルギーを貯める時間でちょうどいい。非常にいい感じで溜まってきた。だから体の方は俄然パワーアップしてきたしね。一応70才で再出発ぐらいでいいんじゃないですかね」と楽観的に言われました。今までここまで長い間絵を描かなかったのは初めてだそうです。

3年前の日本での大きな展覧会で得た早川ファンの大きな支援を心の糧に、今後早川絵画がどのように変化して、ますます大きく開花していくのか楽しみです。