吉田山の頂上に着いたのは、送り火の2時間前、6時頃だった。
ここからは、大文字と妙法が一度に見える。
頂上のちいさな広場にはもう人が十数人立って待っていた。
持ってきたCDウォークマンで「トゥランガリラ交響曲」を聞く。
不協和音と変拍子が渦巻き、時々メロディアスな音楽が
幻想的な気分をさらに盛りあげる。
私はその時、とても辛い気持、煩悩そのもののような自分の揺れる心を持て余して
五山の送り火を無性に一人で見たかった。
大事にしてきたものを捨てようとして捨てられない
人に対する執着と妄執の混濁したこんがらがった自分のこころ
どの糸がどのように絡んで解けなくなっているのか、
心の奥底までたどって、ひたすら中へ入って行く。
送り火を待ち、一人一所にじっと立ったまま音楽を聴き
段々辺りが暗くなって行く2時間のあいだ
私は自分の魂の奥へ向って彷徨っていた。
立ったまま、足も疲れ、心も疲労を感じる頃
やっと送り火がはじまってざわめきが起こった。
もう周りはぎっしり人が立ったり座ったりして混雑していた。
大文字にだんだんに火が点灯していくさまを、音楽をかけたまま何も考えずにじっと見た。
聞こえるはずは無いが、薪の燃え盛りはじけるパチパチという音が
聞こえる気がした。
真っ暗な空に、すこしづつ大の字が浮かび上がり、徐々に激しく燃えていく。
この行き場の無い思いも、私の魂から抜け出して一緒に燃え尽くしてしまえばいいのに。
そう願いをのせて、炎を見送った。
大文字も妙法も燃えきって、炎もうつろに小さくなるさまを
横目で見つつ、山を下りた。
幻想の山を下りて下界を歩きながら、
妄執に燃える私の魂を炎もいっしょに送り火にのせて
空に放ったような気持になった。
薪が燃えたあとの炭が心に残ってしまったように
無常な寂しさが私を襲ったのだった。
ここからは、大文字と妙法が一度に見える。
頂上のちいさな広場にはもう人が十数人立って待っていた。
持ってきたCDウォークマンで「トゥランガリラ交響曲」を聞く。
不協和音と変拍子が渦巻き、時々メロディアスな音楽が
幻想的な気分をさらに盛りあげる。
私はその時、とても辛い気持、煩悩そのもののような自分の揺れる心を持て余して
五山の送り火を無性に一人で見たかった。
大事にしてきたものを捨てようとして捨てられない
人に対する執着と妄執の混濁したこんがらがった自分のこころ
どの糸がどのように絡んで解けなくなっているのか、
心の奥底までたどって、ひたすら中へ入って行く。
送り火を待ち、一人一所にじっと立ったまま音楽を聴き
段々辺りが暗くなって行く2時間のあいだ
私は自分の魂の奥へ向って彷徨っていた。
立ったまま、足も疲れ、心も疲労を感じる頃
やっと送り火がはじまってざわめきが起こった。
もう周りはぎっしり人が立ったり座ったりして混雑していた。
大文字にだんだんに火が点灯していくさまを、音楽をかけたまま何も考えずにじっと見た。
聞こえるはずは無いが、薪の燃え盛りはじけるパチパチという音が
聞こえる気がした。
真っ暗な空に、すこしづつ大の字が浮かび上がり、徐々に激しく燃えていく。
この行き場の無い思いも、私の魂から抜け出して一緒に燃え尽くしてしまえばいいのに。
そう願いをのせて、炎を見送った。
大文字も妙法も燃えきって、炎もうつろに小さくなるさまを
横目で見つつ、山を下りた。
幻想の山を下りて下界を歩きながら、
妄執に燃える私の魂を炎もいっしょに送り火にのせて
空に放ったような気持になった。
薪が燃えたあとの炭が心に残ってしまったように
無常な寂しさが私を襲ったのだった。