停電への恐怖のせいで、町の夜は闇が深くなっています。
明りが少ないだけで、とても静かな感じがします。
昔から夜は闇だったのです。電気の普及でいつの間にか忘れてしまった「闇」への畏怖の気持ち。
停電が起きて急に思い出しました。
現代の夜は、異様に明るすぎたんです。
今日は、十三夜でした。
待宵月 だそうです。月の満ち欠けにも、それぞれ美しい名前があるのですね。
とても明るく輝く月でした。
町の闇が、忘れがちだった月の明るさを増したのですね。
か弱い光を見出すために、あえて自分自身の明るさを下げる。そういう光の見出し方があるんだ。
光は強いだけがいわけではないはず。
やわらかな光、か細い光、遠くからやっと届く光。
そういう光が、ちゃんと見える人類でいたい。民族でいたい。人でいたい。
今夜の月の光は、まるでこの街が今まさにうち震えている恐怖感を、大きく包むかのように思えた。