舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

不毛地帯

2009-10-17 00:52:05 | 徒然話
鳴り物入りで始まったフジテレビ開局50周年(だと思う)特別ドラマ『不毛地帯』を見ました

不毛地帯というのは、第二次大戦後に日本人捕虜が大勢送られたシベリアのことです。
このドラマの主人公・壱岐正さんも、日本軍の優秀なブレインであったがゆえに捕虜として捕えられ、11年をこの極寒の地で過ごしました。

実を言うと、我が祖父・良美さんも捕虜としてシベリアで過ごした経験があります。
もちろん壱岐さんみたいに軍の中枢にいた訳ではありませんし、一説にはヴァイオリンという芸が身を助けたりもし、壱岐さんよりはだいぶ早く帰館することが出来たようです。
とはいえ、祖父もそうとう過酷な目に遭ったであろうことは、想像に難くありません。

しかし、そこは強者祖父・良美さんです。
私が彼を尊敬し誇りに思っているところは沢山ありますが、その最たるものは、決して不平不満や弱音を吐いたりしないことです。
それも、ひたすら耐え忍んでいる訳ではなく、万事を前向きに捉え、専ら明るい面を見ようとする人なのです。
私が祖父から聞かされたシベリアでのエピソードには一切苦労の気配がなく、それどころかすべてが笑い話になっていて、戦争のセの字も知らなかった私など、ユニークな海外滞在経験のひとつだと思い込んでいたほどです。

だから、『不毛地帯』で描かれたシベリアの光景は衝撃のひと言に尽きました。
祖父もこれとさほど変らない経験をしていたのでしょうか。だとしたら彼は私が思っていたよりももっと「強者」です。

ともあれ、このドラマにおいてシベリアのシーンは導入でしかありません。
壱岐さんは無事生還し、妻子と再会した後、社長の熱心な誘いを受けて、今までの経歴とはかけ離れた商社に就職します。

それまで軍一筋で来た人ですので、繊維業のことなど皆目分りません。
なぜ社長はそんな彼を抜擢したのでしょうか? そこには、社長の壮大な目論見があった訳で...。

つーか、この社長、めっちゃ好きです。

う~ん。戦後の高度成長を担ったのは、こういうカリスマ経営者たちだったんだろうなぁ。
まず人の口説き方が恐ろしく巧い。相手のひと言を聞いただけで、彼を落とすために最適な言葉を瞬時でひねり出す。
それでもダメなら、更に壮大な用意周到さでもって、一気に陥落に持ち込みます。

そして発想の仕方が素晴らしいです。やはり、世の中を動かすためには創造性が無くちゃダメです。
社長が壱岐さんに放った決定的な殺し文句、「日本がアメリカに負けたのは、軍部がアメリカって国を正確に把握してなかったからだ」というのは象徴的でしたねぇ。
その発想を本当に戦時中からしている人がいたとしたら、驚嘆すべき頭脳の持ち主です。

それに比べると、流石軍で鍛えただけあって、壱岐さんの考え方はちょっとカタいですね。融通が利かないというか。
もちろん、それはあくまでも開始時の話であり、今後ビジネスの世界で揉まれていくうちに、本来の優秀な頭脳をいかん無く発揮できるようになっていくと期待します。

とにかくもう、社長以下壱岐さんの周りの人間がデキる男ばかりです。それを見ているだけで痛快なのなんのって。
特に光るものを感じたのは、軍の後輩だという同じ商社の人間です。成功に重要な柔軟な発想力を持ち、しかも野心に満ちているところが素敵です。
こういう「プロジェクトX」な男たちにとって、この時代はさぞかし刺激的でやりがいのある時代だったことでしょう。

では一方で、女性たちはどうなのか。
良奈ちゃん、これはちょっと不満だよ。
まぁ時代がそうだったのだろうけど、こんなのイヤ。ヤダダメムリ。

まず第一に、奥さんが旦那に対して敬語なのが、夫婦間の上下関係を象徴していてイヤです。
小生は完全な女系家族なので(曾祖父は曾祖母に決して頭が上がらない間柄で、強者祖父の良美さんさえ、一歩さがって祖母を立てていたフシがあります。そして祖父以降、我が家系図に男性の姿は皆無です)、一家の大黒柱とか家父長制とか、そういうのは生理的に受け付けません。
まして、父と娘ならまだしも、夫婦ですよ。上下関係があるなんて、お天道様が許しても、私が許しません。

会話の端々から、「家庭を支えるのはあくまでもお父さん」なニュアンスが漂い、お母さんの働きが評価されない点も致命的です。
なんせ、どう見ても家事の切り盛りは100%女性の仕事です(その時点でどうかと思うけど)。
特に壱岐さんの奥さんなど、壱岐さんがシベリアに抑留されているあいだも、帰国後身体を壊して働けなかったときも、仕事と子育てを完全に一人で担っていました。
そんな奥さん自身さえ、壱岐さんを立てるようなことばかり言っていて、自分の苦労を過小評価しているきらいがあります。

ああ、なんて女性にとって生きづらい世の中だったのでしょう。
こんな時代に生まれていたら、私は喜んで海外へ出奔するか、過激な政治活動かなんかに身を投じていたに違いありません。
プロジェクトXな男たちが刺激的な生活をしている代償がこれだというなら、決して認める訳には行きません。

幸い、21世紀の今となっては、「草食系男子」なんて言葉まで出来て男女の力関係は完全に覆され(あるいは力関係自体が消失し)、女もだいぶプロジェクトXな生き方が可能になりました。
このドラマを見ていると、その辺の有難みをひしひしと感じますね。

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