入場は最初の手が触れた時から静かに進行していった。かなりの時間を要したが、そこに集う全員が会場内に収まった。考えるとずいぶんと広いところだった。平場とはいえ、優に150人は超えていたと思う、それを収容してしまうのだから。微かなざわつきがあるものの、入場は整然と行われ、皆が緊張した面持ちで「儀式」の始まるのを待った。最後の一人が座ると衣装を着た選ばれた常任と常連が手を繋ぎながら開場の四隅から現れ、中央の丸いステージの周りに座った。丸いステージを中心に同心円ができるように人々は配置された。これだけの集団が静まり返って時を待つことができたのはマサミの音が影響しているのは間違いない。さらに付け加えるなら、ヒロムの指示でその日、誰かと同伴してきた人はその連れとは一緒に座ることはできなかった。手の温もりは1人1人別々の場所へ、1人が孤立した存在であることを意識させるがごとく誘った。座っているとピアノシモの重低音が静かな呼吸のように彼らの耳に届いた。脳の天辺が静かに開いていくのを深海のような青の照明の中で皆は感じていた。既に「儀式」は始まっていた。