あなた方の存在はご両親の上にあり、ご両親が出会わなければあなた方は存在しなかった。存在そのものが偶然に支配されていると言ってもいいでしょう。あなた方の存在はあなた方の意思によってもたらされたのでしょうか。いいえ、それも偶然のなせる業でしょうか。我々はそのすべてを受け入れることができるのでしょうか。我々は何に支配されているのでしょうか。我々はこの地にあることの意味さえ教えられずに唯生きていかなければならないのでしょうか。
もし、疑問を持ったなら、その時からこの呪縛の中から抜けられなくなるのです。そして、すべての想像は死によって停滞し、その限界によって我々は虚無に取り込まれるのです。すべては闇に・・
ヒロムがそういうと会場全体が照明が消え闇に包まれた。ヒロムの声が静かに始まると静かに明りが戻ってきた。マサミの音もヒロムの言葉とともに止まり、そしてゆっくりと始まっていった。ヒロムの言葉はそこにいる常任や常連には繰り返し耳にしたものだったがその日の演出によってより近いものになった。言葉は存在の無意味さを語り、ここにいることの特異性を説いた。そして最後に生きる基本が呼吸にあり、呼吸を知ってこそ存在の無から開放されると締めくくった。それと同時に正面に明りが移動し、そこに座る仁を照らし出した。
仁は静かに吸い込んでゆっくりと吐いた。マサミの音が止まった。
「許し」の時が来た。ヒロムはゆっくりと仁の隣に座り、言葉を続けた。唯一の感覚、存在を確かにする感覚は触感であることを言葉にして伝えた。魂の孤独から逃れるために、今あることを実感するために、その存在を許すために、開放に向かうために。ヒロムの言葉は機関銃のようにそこに集う人々に向けられた。そして、行為の形を円形の中心に近い常任、常連が始めた。マサミの音がまた、動き出した。一番外側に位置している初見の人々は、中央で行われている行為を見つめた。すると初見の中に忍ばせた常連、普通の服装でそこにいた常連が中央の行為に同調し、その隣にいる人に行為を始めた。その空気が伝染した。ハンドタッチからボディタッチへ。この空気の中では全ての人がこの行為の中に取り込まれ、拒否をするものはいなかった。
正面のステージには仁を右側にヒロムが座っていた。そこにアキコが、そして左側にヒトミ、ヒデオが座った。仁のゆっくりとした呼吸に壇上の皆が同調を始めた。マサミの音はその呼吸の音を邪魔しないように底辺を這うように流れた。この呼吸の中で、予期せぬことが起こった。仁の形を模して皆、座禅のような座り方をしていたのだが、ヒトミの体の中で何かがはじけた。演出的には呼吸の中でマサミがセンターの円形のステージに移動するはずだった。ところがヒトミが仁の呼吸と同調していく中でフーっと立ち上がり、仁の前に跪いた。仁の目が開いた。その視線に操られるようにヒトミはまた、フーっと立ち上がり、中央のステージへ後ろ向きのまま進んだ。
もし、疑問を持ったなら、その時からこの呪縛の中から抜けられなくなるのです。そして、すべての想像は死によって停滞し、その限界によって我々は虚無に取り込まれるのです。すべては闇に・・
ヒロムがそういうと会場全体が照明が消え闇に包まれた。ヒロムの声が静かに始まると静かに明りが戻ってきた。マサミの音もヒロムの言葉とともに止まり、そしてゆっくりと始まっていった。ヒロムの言葉はそこにいる常任や常連には繰り返し耳にしたものだったがその日の演出によってより近いものになった。言葉は存在の無意味さを語り、ここにいることの特異性を説いた。そして最後に生きる基本が呼吸にあり、呼吸を知ってこそ存在の無から開放されると締めくくった。それと同時に正面に明りが移動し、そこに座る仁を照らし出した。
仁は静かに吸い込んでゆっくりと吐いた。マサミの音が止まった。
「許し」の時が来た。ヒロムはゆっくりと仁の隣に座り、言葉を続けた。唯一の感覚、存在を確かにする感覚は触感であることを言葉にして伝えた。魂の孤独から逃れるために、今あることを実感するために、その存在を許すために、開放に向かうために。ヒロムの言葉は機関銃のようにそこに集う人々に向けられた。そして、行為の形を円形の中心に近い常任、常連が始めた。マサミの音がまた、動き出した。一番外側に位置している初見の人々は、中央で行われている行為を見つめた。すると初見の中に忍ばせた常連、普通の服装でそこにいた常連が中央の行為に同調し、その隣にいる人に行為を始めた。その空気が伝染した。ハンドタッチからボディタッチへ。この空気の中では全ての人がこの行為の中に取り込まれ、拒否をするものはいなかった。
正面のステージには仁を右側にヒロムが座っていた。そこにアキコが、そして左側にヒトミ、ヒデオが座った。仁のゆっくりとした呼吸に壇上の皆が同調を始めた。マサミの音はその呼吸の音を邪魔しないように底辺を這うように流れた。この呼吸の中で、予期せぬことが起こった。仁の形を模して皆、座禅のような座り方をしていたのだが、ヒトミの体の中で何かがはじけた。演出的には呼吸の中でマサミがセンターの円形のステージに移動するはずだった。ところがヒトミが仁の呼吸と同調していく中でフーっと立ち上がり、仁の前に跪いた。仁の目が開いた。その視線に操られるようにヒトミはまた、フーっと立ち上がり、中央のステージへ後ろ向きのまま進んだ。