仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

そんなところで

2008年04月10日 13時22分12秒 | Weblog
 闇の中を小さな明りを頼りに控え室に戻った。ヒデオがヒトミを抱え、仁はヒロムとアキコが担ぐようにして、布の割れ目から控え室のドアにたどり着いた。やはり汗でびしょ濡れの演劇部がドアを開け、皆を迎え入れた。演劇部の目は涙で濡れていた。2人の技師とともに布を操作していた常任たちも控え室に戻ってきた。彼らも目に涙をため、その感動を言葉にしたそうだった。ヒトミは失神していた。仁も意識があるのか、ないのかフラフラしていた。いつも薄目を開けているのにその時は完全に目を閉じていた。折りたたまれたパイプ椅子や机、ヒデオの作った厚ベニヤの簡易ロッカー、人のいるスペースは非常に限られていた。しかも全裸でひしめき合うように、それでもその時スタッフとして動いた人間全員が控え室に集まった。
 まずヒトミを余った布を敷き、そこに寝かせた。フラフラの仁をその横に寝かせた。仁は勃起したままだった。もう1人、フラフラのマサミが這うようにして仁の横にたどり着いた。3人を取りかこんでヒデオとヒロム、アキコが座り、マサルがすぐ脇に座り込んだ。六人組が全員、儀式に参加する中でその進行がスムーズに行ったのはマサルが全体をまとめていたからだ。マサルは汗だくの衣装を脱ぎ捨てた。それにならって裏方の全員が衣装を捨てた。それは会場で行われた儀式のように皆が六人組に寄り添うように座り込んだ。ヒデオはマサルの肩を抱いた。マサルが愛おしかった。ヒトミと二人で大量の布を手に入れるためにホテルのリネンを扱う会社に行き、廃棄処分になるシーツを格安で手に入れる交渉をしたのもマサルだった。