仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

そんなところでⅡ

2008年04月14日 16時34分02秒 | Weblog
マサルはヒデオに何か言い出そうとしていた。その瞳がそう訴えているのがわかった。ヒデオはもう一度グッとマサルの肩を抱いた。ヒロムが立ち上がり、皆を見渡した。ヒデオはヒロムが何か言葉を使うのかと思った。ヒロムは全員の顔を確かめるとゆっくりと座った。すると誰かが誰かにもたれかかるようにして全員の体がつながった。体温が静かに伝わった。呼吸が静かに流れ出した。それはスペイン坂の空き地で肩を触れ合うことから始まった「べース」そのものだった。その心地よい疲労感はそこにいるすべての人間に優しい眠りを与えてくれた。マサルがその肩の中で寝息を立てているのに気づいたヒデオは自分もその眠りの中にいたことを感じながら、ふと目を覚ました。それを感じたのか、アキコも目を覚ました。ふたりは厚ベニヤのロッカーから残りの布をすべて引っ張り出して皆の上にかけた。そして最後の一枚に二人で包まり控え室の一番隅で再び眠りについた。すぐ近くに朝はきていた。第一回「神聖な儀式」がすべての意味で幕を閉じた。