
とてもいい作品だと思った。そして、とても物足りない映画だと感じた。
”作家志望でバイト暮らしのジョンスは、偶然再会した幼なじみのヘミと肉体関係を持ち、彼女の旅行中に猫の世話を頼まれる。
やがてヘミは、謎の裕福な青年ベンを伴って帰国。ベンはジョンスにある“趣味"を打ち明ける。それは古いビニールハウスを燃やす事。そしてこの日を境に、ヘミの姿が消えた”
勿論こう来れば、この謎の男がビニールハウスじゃなく、女を燃やしたのは明らかだろう。
この男の”趣味”が女を燃やす事に、作品の焦点をシフトしても面白かった。いやそうすべきだった。
しかし、この映画の核心はミステリーではなく、”空白”なのだ。
映画「バーニング」(2018 韓国)は、村上春樹の短篇小説「納屋を焼く」を原作としてる。1982年に書かれたこの原作は, 5文庫本にして僅か30ページ程の素っ気ない小説だ。
故に映画化するには、ありとあらゆるアレンジが可能だった筈だ。そして私はそれらを期待して、2時間半のロングランをじっくりと堪能したかった。
結果は、曖昧で”空白”な時間がダラダラと過ぎただけであった。謎の男ベンの描写もそこそこミステリアスだったが、ただそれだけだった。
原作の「納屋を焼く」の登場人物は3人である。僕と彼女、そして彼。彼女が失踪した時点で原作は終わるが、映画「バーニング」では僕が彼を焼き殺す所で終わる。
勿論、納屋とビニールハウスの違いはあろうが、”燃やす”事には変わりはない。
彼が、”2ヶ月に1つくらい焼いている”と漏らすビニールハウスは「納屋」同様に、1つも焼かれない。つまり、男が燃やしてたのは女という事になる。
多くの評論家はこの映画を、"最後まで”明らかにされない謎”と高く評価してるようだ。
主人公の”僕”は、典型の”空白の男”である。小説家志望ながら、これといったモノ書きをする訳でもない。彼(謎の男ベン)と彼女(淫乱な女ヘミ)の関係を謎解きする訳でもない。
パントマイムが得意な彼女の方は、人前で裸になり、出会った男に裸体を委ねる事が平気な尻軽の淫乱女である。
そして、虚無な印象を与える謎の男は金持ちのボンボンで、何を生き甲斐に人生を送ってるのか検討もつかない。それかと言って興味を引く存在ですらない。
3人に共通するのは、”謎”と言うよりも空虚で軽い”空白”なのだ。その”空白”という描写に関してなら、この映画は評価のし甲斐もある。
しかし、謎の男を”空白”ではなく、獰猛で奇怪な殺人鬼として捉えるなら、”2ヶ月に1人の女を焼く”男の狂気のシナリオとなる。
”謎の男”ベンが(”僕”が愛読する)フォークナーを読むシーンがある。つまり、この瞬間にフォークナーが描きそうな”恐怖のシナリオ”を呼び覚ますチャンスがあった筈だ。
故に、村上春樹の大人し目の「納屋を焼く」ではなく、フォークナーの「Barn Burning」(1939)の視点で捉えると、犯罪と謎とミステリアスな雰囲気が極端に強くなる筈だった。
作品の自由度と残忍性は大きく広がり、赤裸々な可能性を孕む”炎のシナリオ”に昇華する筈だったのだ。
個人的には、まず”謎の男”が女を大金をチラつかせ次々と獲物にし、焼き殺してしまう。
偶々、”僕”の彼女がその犠牲になり、復讐として”僕”は男の家族を”1人ずつ”燃やしていく。男は逆上し、”僕”の家に火をつける。
しかし、フォークナーを愛読する作家志望の”僕”には、男の残虐非法な行動は全て丸裸にされていた。
最後に”僕”は、フォークナーの「サンクチュアリ」を男に読み聞かせ、男に火をつける。
”お前は手でしか女を犯せないインポ野郎だ!お前の隠れ家(サンクチュアリ)は炎の中がお似合いさ。そうアンタには、燃え盛る様な真っ赤な欲情が最初から必要だったのさ。
しかし、アンタはそれを避けた。淫乱女を燃やす事で満たされない欲情に変えたのさ。全く哀れな男さ”
得体の知れない狂気を前面に押し出すべきよ
でも結局は村上ワールドに没した気がする。
主役のユ・アインがよく頑張ってただけに残念でした💧💧
読んだ事あるけど
あんまり印象に残ってない
もっと監督の色を全面に
押し出した方がいいって事か
でもこの監督、凄い巨匠なんだよな
転んだサンが物足りないと思うのも
判るような気がする
私も一目見てファンになりました。
フォークナーを出すんだったら
奇怪な殺害しかないでしょうに
Hoo嬢の口惜しい気持ちよく解ります👋
あんまり偉そうな事は言えないんですが。
監督が大の村上春樹ファンという事だったんでしょうか?
拘るならフォークナーに重きをおいた方が良かったですね。
秀逸で意味深だ
彼は狂ったアメリカの中で
常軌を逸する事無く老境を迎え
祖国に対し映画を通し
駄目ダシし続けているネ~
勿論、実際の監督は別にいて単なる”名前貸し”でしょうが(^^♪
”白象さん”のブログでもイーストウッド監督の作品は詳しく紹介されてます。HP貼っときますね。https://hakuzou.at.webry.info/