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『コールガール〜私は大学教師、そして・・・』その4(20/7/3更新)〜ソフィーとの別れと失望

2018年02月10日 08時22分41秒 | コールガール系

 さて、著者であるジャネットの最大の親友である、ソフィー嬢の真相に迫ります。
 私もこの本の中の彼女に、一番惹かれました。どんな女性か会ってみたい程です。野郎は歳を重ねると、こういう女性に惹かれるんですな。
 バルザックやゾラの作品にも、数多くの魅力ある女性が登場しますが、所詮フィクションです。でもこれは、実在する知的で聡明で心優き、狂気に塗れた女性の物語なのです。


ソフィーの哀しい物語

 ソフィーは明らかに変わっていった。クラックの量も格段に増えた。
 彼女は父親のツテで北京大学に進学が決まっていた。それ以降の出世の青写真も綺麗に描かれていた。たが、当然の如く彼女はそれを拒絶した。 
 勿論、父親のコネがなくても、彼女の才能と卓越した知能があれば、広大な中国でも、かなりの地位まで登り詰めてたであろう。
 父親が思春期の娘をレイプした事で、彼女の純真無垢な心を裏切った様に、その仕返しとして、彼女も父親を家族の期待を裏切った。その罪悪感に彼女も、ずっとずっと押し潰されていたのだ。

 地獄の様な子供時代に耐えながら、抜きん出て優秀な生徒であり続けた彼女も、流石に中国社会の閉された伝統には勝てなかった。
 アメリカ的に見れば、彼女は全くの犠牲者だ。が、中国では家族への忠誠こそが最も尊重されるべき美徳であったのだ。アメリカヘ逃げても、身も心も頭も中国人そのものなのだ。

 彼女は悪夢の中を逃げ回った。"命を掛けた必死の逃走"が、ここアメリカでも続いた。私が彼女を救おうとした時、彼女は全てを失っていた。彼女は私を利用し、死への道連れを求めていたのだ。
 彼女は執拗に金を借りたがり、掠め取る様になった。末期のシャブ中患者は皆弁が立つし、常に言う事に説得力がある。私はソフィーに敢えて、騙され続けた。彼女を愛し、そして憎んでいたからだ。

 彼女にも、立ち直るチャンスは幾らでもあった。しかし、薬物は人間を麻痺させ、頭も心も変えてしまった。そして、何の感情も湧かなくなるのだ。
 私が彼女よりも強かった訳でも、優れてた訳でも、賢い訳でもない。背負ってる荷物が軽かっただけなのだ。でも、ソフィー以上に辛い経験をした女もいるが、その女は辛い経験を生き延びた。破滅の道を辿るか否かは、荷の重さではなく、勇気の総量の問題か、単なる運か。今でもよくわからない。


性と薬物は脳を腐らす?

 その後、私は経験ではなくセミナーで、コカインが脳に与える影響を正確に知った。コカインがもたらす多幸症状態に、脳がドーパミン(快楽ホルモン)を不必要と判断するのだ。
 故に、ドラッグを続ける内に、幸福感が減っていき、コカインによる高揚感すら弱まっていく。
 化学物質の作用と容赦なき現実との戦いに、生身の人間が勝てる筈もない。この世の何もソフィーを癒せなかった。コカインもアルコールもSEXも、友情も愛さえもだ。

 さて、私が受け持った"売春"に関する講義は、かつて担当したどの講義より、充実したものになっていた。"経験は学ぶより強し"だ。
 職業として、隷属として、風俗としての売春をテーマにし、生徒に語らせた。専門分野とかどうでもよかった。教える事自体が好きだった。そこに高揚を見出したから、ドラッグに溺れる事もなかったのだろうか。
 確かに、クラックで得られる高揚感は薄っぺらで不確かで悪寒をもたらす事もある。しかし、教える事の高揚感は、何かを生み出そうとする予感を創造を掻き立てる確かな快感と言うべきか。

 私の客の多くはボストン郊外の上品な白人街に住んでた。彼らは郊外の成功物語の主人公でありながら、心に空洞を抱え、その内なる不幸に、手をこまねいてた。しかし、哀しいかな、コールガールを呼ぶ勇気だけは持ってるのだ。

 カールは、私が大学の教師である事を知ってる、数少ない客の一人だ。当時、私にとって、毎日が綱渡りでアドレナリンに漲ってた。タブー程人生に活力を与えるものはない。
 それに、夜の仕事で一度も堪能に掻き立てられた事はない。タブーを犯す事の方がずっと官能的なのだ。
 理論が知識が理解が輝かしい光を放つのは、それを展開する私達の身が安全で、かつ距離を置いて見れるからだ。故に、私は研究者でありながら、この研究対象のコールガールに強い共感を覚えるのだろう
 でもやっぱり、SEXと薬物でジャネットの脳は明らかに腐ってますね。


夜の仕事は憂さ晴らしになる?

 毎年秋になると、夥しい程の新入生がボストンにやってくる。勿論、生意気なガキもだ。
 田舎ではトップの成績だったろうが、田舎のルールがそのままボストンでも通用すると思ってる。”フロイトを学ばずしてフロイトは批判できない”
 昨今の教育は、学ばせる事を放棄し、優秀な生徒を生み出す事を破棄する傾向にある。早速、生意気な二人の生徒を零点にした。生意気なガキは潰す為にある。

 お陰で、夜の仕事が私の気晴らしになる。女経営者のピーチのアパートメントで行われるサロンは、ストレス発散にもってこいだった。彼女に遭う人達は、皆彼女に惚れ込んだ。私も彼女の人柄や考え方や発するエネルギーに、魅了された一人だ。
 彼女が、コールガールの派遣組織という厳しい世界で女将として知られた存在であるのは、彼女の内面の瑞々しく儚げで、子供のような幼気のなさが人を惹き付けるのだ。
 それに、ここに集う人たちは、皆聡明で博識で機知に富んだ会話を楽しんだ。
 そして哀しいかな、知らぬ間に売春業へコカインへと、どっぷりと漬かっていくのだ。



4 コメント

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ソフィーって (tokotokoto)
2018-02-12 09:15:28
ソフィーって、可哀そうな女性ですね。父親にレイプされなかったら、政界や経済界でも十分に活躍できそうな高質で可憐で才気の女性だった筈なのに。

中国でもアメリカみたいな幼児虐待みたいな事が起きてるのですね。広い国だから何が起きても不思議はないですが。
時代や歴史と共に、性犯罪や風俗も進化?または変質していくのでしょうか。悲しい限りです。
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Re:ソフィーって (lemonwater2017)
2018-02-12 14:22:00
 ホント、親父って一皮剥けば、獣よりずっとずっとタチが悪いですね。一番可愛い盛りを犯したんですから。中国のエリート社会の闇を見た様な気がします
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ソフィーの哀しい物語 (HooRoo)
2019-01-29 01:31:07
何だか悲しいね。美人でチャーミングで頭も良くて、それでいて、最愛の父親から全てを奪われたの。

共産党独裁の弊害が親子の関係をも歪めるのね。

政治の事はよくわからないけど、中国は表面が豊かになった分、内面はボロボロになるのね。

何だか哀しくなるね。
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Re:ソフィーの哀しい物語 (lemonwater2017)
2019-01-29 05:01:35
ジャネットが所属してたエージェンシーの女経営者も小さい頃に父親の暴行を受けてんですね。

美人でチャーミングで頭も良くてと、周りから羨ましがられる女性ほど、哀しい過去を抱え込んで生きてんです。

Hoo嬢にも、人には言えない様な悲しい過去ってあるのかな?ある訳ないよね。
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