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”ドレフュス事件”の真実、そして正義のあり方〜安倍銃撃事件とゾラの告発

2022年07月13日 12時51分23秒 | 腐った政治

 人類の歴史上稀有の冤罪事件と言えば、ドレフュス事件(1894)が有名だ。
 一方で、安倍銃撃事件も(掩蔽や改ざんという点では)このドレフュス事件と何か接点がある様にも思える。
 山上容疑者の真実の叫びは自民党の分厚い壁に屈するのか?それともメディアに掻き消されるのか?
 一方で、ドレフュス事件でゾラが告発した訴えは、ドレフェスを終身刑から救い出し、仏軍幹部の悪事を糾弾したが、ゾラ自身は虚しくも不可解な死という結末で幕を閉じた。
 今回の安倍氏への最高位とされる勲章(大勲位菊花章頸飾)の授与という不可解な事実を目の当たりにした今、ドレフュス事件と繋がる何かが埋もれてる様な気がする。
 そこで今日は、ドレフュス事件と安倍銃撃事件の接点について書きたいと思います。

 1902年に不慮の死を遂げたゾラの信念は、多くの人に受け継がれた。死の5年前に彼は、読者の学生へ向けて次の言葉を送っている。
 ”人間らしく正義を貫くこと、それはいつの時代にあってもあらゆる人々の責務なのだ”
 つまり、ドレフュス事件を考え、語り継ぐ事の意味は、まさにこの言葉の中にある。
 このゾラの言葉は、今の日本人にそのまま当てはまる。つまり、正義を貫く為には、たとえ国家の首相であろうが、テロリストに銃殺されようが、最高位の勲章を与えられ、神格化されようが、必ず罰せられるべきである。


ドレフュス事件とゾラの叫び

 ドレフュス事件とは、1894年にフランスで起きた、当時フランス陸軍参謀本部の大尉であったユダヤ人のアルフレド・ドレフュスがスパイ容疑で逮捕された冤罪事件である。因みに冤罪とは、無実の罪(濡れ衣)の事である。
 1894年夏、フランス陸軍省は機密文書の名が列挙された手紙を入手。手紙はドイツ陸軍武官宛てで、フランス陸軍内部に情報漏洩者がいるのではないかと懸念された。筆跡が似ていた事から、ユダヤ人砲兵大尉のドレフュスが逮捕された。
 しかし、具体的な証拠どころか状況証拠すら欠いていた為、スパイ事件及びドレフュス逮捕の事実はすぐには公表されなかった。が、この件が反ユダヤ主義の新聞に暴露され、対処を余儀なくされたフランス軍は、ドレフュスに終身禁固刑を言い渡す。
 しかしフランス陸軍情報部は、情報漏洩者(つまりドレフュス事件の真犯人)がフランス陸軍少佐のフェルディナン・エステルアジである事を突き止めた。軍上層部はそれ以上の調査を禁じたが、この事がドレフュスの兄の耳に入り、兄はエステルアジを告発する手紙を陸軍大臣宛てに書く。だが、フランス陸軍大臣シャルル・シャノワーヌは再審に反対していた。国家主義や反ユダヤ主義の世論にも影響され、エステルアジは軍法会議にかけられるも無罪となる。

 無罪決定の2日後、1898年1月13日付の新聞に、作家エミール・ゾラは”私は告発する”との公開状を発表する。フェリックス・フォール大統領に宛てたこの公開状で、ゾラは軍の不正を糾弾した。発表後はユダヤ人迫害事件の一方で、ドレフュスの再審を求める動きも活発になっていく。
 再審派と反対派の議論はもつれたが、1899年大統領が反対派のフォールからエミール・ルーベに交代した事から進展を見せた。ルーベは特赦を出してドレフュスを釈放し、彼はその後も無罪を主張し、1906年に無罪判決を受ける。

 ドレフュスが無罪となり、有罪の根拠とされた証拠の信頼性についての疑問が浮上。一方で軍部は、”国家の安危に関わる軍事機密情報が含まれる”として、ドレフュス有罪の根拠とされる証拠類の開示を拒む。
 しかし、ブリッソン元首相により、”当時は、軍部の主張する様な機密情報は含まれてなかった”との声明が出され、軍部の主張は根拠薄弱なものとなる。つまり、元首相に開示された証拠には、ドレフュス有罪の根拠となり得るものは一切含まれていなかったのだ。
 結果、軍事機密との主張が実際には真実を隠蔽する口実に過ぎない事が明らかとなった。そればかりか、証拠の改ざんや偽造まで行い、軍部が冤罪を作り出していた疑いが発覚する。
 つまり、自ら作り出した冤罪の不利な証拠を隠蔽する為に、軍事機密との主張を濫用し権威の維持を画策した軍部は、その権威を大いに失墜させた。
 以上、ウィキを参考でした。


真実と正義の闘い

 このドレフュス事件の仏軍部を、当時の安倍政権に置き換えると見通しが明るくなる。
 自らが犯した巨悪を改ざん&隠蔽し、ユダヤ人のドレフュスに多い被せる。つまり、安倍を銃撃した山上容疑者の叫びの本質をもみ消し、”民主主義への冒涜”と見なし、彼に全ての罪を被せる。
 今の自民党もメディアもやってる事は、このドレフュス事件で起きた悲劇と同じである。
 自分たちに都合の悪い事は、立場の弱い庶民のせいにし、テロリズムの蛮行だけを大げさに報道する。

 一方で、自らが犯した蛮行と巨悪が故に、自業自得の惨劇と言えなくもない安倍元首相には最高位の勲章を与え、神格化する。
 安倍の幻想の中で(A級戦犯である)叔父の岸信介が神格化されていったのと似通っている。
 ゾラが生きてたら、どんなコメントを残すだろうか。少なくとも”アベちゃんがカワイそ〜”なんて事はないだろう。
 ”人間らしく正義を貫く”というゾラの言葉が事前に山上容疑者の耳に届いてたら、今回の銃撃事件はどう転んだだろうか?
 以下、「ドレフュス事件、真実と正義の闘い」から一部抜粋です。

 ナショナリズムと反ユダヤ主義が高まる第三共和政下のフランスで起きたドレフュス事件は、社会の諸争点を噴出させ、国内を二分した歴史的大事件であった。
 映画「オフィサー・アンド・スカイ」は、1895年1月5日のドレフュスの軍籍剥奪式で幕を開ける。
 ”私は無実だ!”という叫びは、どこにも届かない。ドイツへ軍事機密を流したスパイ容疑で逮捕され、94年のパリ軍法会議で有罪判決を受けたドレフュスは、95年4月に仏領ギアナの悪魔島へ移送される。
 その数カ月後、将来を嘱望される41歳のジョルジュ・ピカールが軍の情報局局長に就任し、ドイツ大使館から発信されたエステルアジ少佐宛の(気送)速達”プティブルー”を差し押さえた。
 この事件の真犯人(エステルアジ)を告げる証拠を上司に報告するが、隠蔽を目論む上層部に情報局局長を解任され、監獄に13カ月間拘留される。
 ドレフュス事件で特徴的なのは、数々の書類が――実体のない書類さえ――強い力を備え、人々の運命を翻弄する点である。
 殆どの報告書は、こうした偽造や改ざん&捏造されたものだった。

 逆境にたえるピカールは、97年に旧友の弁護士ルブロワへ真実を伝えていた。その真実はルブロワから上院副議長ケストネールへ託され、ドレフュス裁判の再審へ向けた動きが生まれる。
 更に、98年の軍法会議がエステラジーに無罪を言い渡すと、ドレフュスの無実を確信するエミール・ゾラが、同年1月に共和国大統領フェリックス・フォールへ宛てた”私は告発する!”を発表。この告発は誤審ではなく、真実を隠蔽して体制を守ろうとした軍の幹部、筆跡鑑定家やナショナリストの新聞へ向けられた。
 結果、この発表で有罪判決を受け、英国へ亡命したゾラは知識人の社会参加を促し、ドレフュス派の闘いに新たな次元をもたらしたのだ。
 

ジャーナリズムは誰が為にある

 ドレフュス事件における若き正義の騎士となったピカールが山上容疑者と同じ41歳というのは、偶然にしては出来過ぎの様な気もするが、真実を叫び続けたピカールの勇気は最後にはゾラの告発という決定打を引き出すきっかけを作ったとも言える。
 この1984年のドレフュス事件はエミール・ゾラの勇気ある”告発”により、(軍部の罠にハメられた)ドレフュスを終身刑から救い、フランス陸軍幹部の汚職と法(裁判)の腐敗を命を犠牲にして訴えた。
 更にゾラは、かつてはバルザックが指摘してた様に、(当時は権力に押し潰され、腐敗しつつあった)ジャーナリズムのあるべき姿を示し、新たなジャーナリズムの次元を切り開いた。

 1960年の浅沼稲次郎暗殺事件では、沢木耕太郎氏が壮大なノンフォクションである「テロルの決算」(1968)を著す事で、”(命を犠牲にし)正義を下した若きテロリズムの報告書(決算)”という漠然とした形ではあったが、一応の解決を見た。
 そこには今とは違い、権力や巨悪に立ち向かうジャーナリズムの真摯な姿があった。少なくと彼らが握るペンには、権力とメディアに対抗できる叡智が備えられていた。
 勿論、それに見合う凄腕の作家たちに日本は恵まれていた。私たち庶民はそんなジャーナリズムに触発され、正義と真実を堂々と語り合う事が出来た。
 一方で、政治家も政党もジャーナリズムという正義の壁がある限り、多少の汚職や疑惑は慢性的に噴出してはいたものの、大きく逸れるような事は少なかった。あったとしても天罰や刑罰を受けるのが常であった。

 しかし今では、安倍みたいな巨悪と汚職と蛮行に塗れたモンスターが国民の半分の支持を集め、銃撃され死亡した今でも、その影響力は計り知れないものがある。
 故安倍氏の告別式には(一般人も含め)多くの参拝者が集まったらしいが、かつての軍国主義に突き進む全体主義の日本を再現してる様で、背筋に冷たいものを感じた。
 因みに、銃撃となるか?銃殺となるか?は、今後暴かれるであろう安倍元首相の巨悪の次元と程度によると思われる。少なくとも、最高位の勲章を授与されたからとて、全ての巨悪が帳消しになる筈もないし、それを許す国民であってはならない。


最後に

 今回、令和版のドレフュス事件となる可能性を秘めている安倍銃撃事件であるが、エミール・ゾラや沢木耕太郎に代わる”真実と正義のジャーナリズト”は登場するのだろうか?
 ゾラが切り開き(沢木が継承した)権力と巨悪に立ち向かうべきジャーナリズムの存在が今の日本には必要とされる。
 もし、バルザックが嘆いてた様な旧来の腐敗したジャーナリズムであるなら、安倍は神格化され、山上容疑者は野蛮なテロリストとして(誰にも知られる事なく)終身刑を受けるだろう。やがて憲法は改正され、軍国主義と化した日本は再び破滅の道へと向かう。

 私たちに出来る事は、真実に裏付けされた正義の行使であり、それをやり遂げようとする新進気鋭のジャーナリストを援護する事だけである。
 少なくとも、山上容疑者だけに全ての罪を擦り付け、(安倍が遺した数々の巨悪と共に)この世から葬り去る事は、それこそが悪質な蛮行であり、民主主義に対するいや国民に対する冒涜である。

 ゾラが天国にいるのなら、天国と地獄を彷徨ってる筈の安倍に、何と”告発”するであろうか?
 いやピカールが天国にいるのなら、どんな重要な証拠を差し押さえてるのであろうか?



13 コメント

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ピカールからゾラへ (paulkuroneko)
2022-07-13 14:42:17
そしてルーベ大統領に至る
ドレフュス事件への反撃の狼煙の流れはとても興味深いです。
全てには順序があって、巨悪を解明する為にはある種の秩序と段階が必要なんですよ。

ピカールにゾラにルーベ
誰一人欠いてもドレフュス事件の疑惑を暴くことは出来なかったでしょう。
映画「オフィサー・アンド・スカイ」も「ドレフュス事件、真実と伝説」も興味ある作品ですね。 
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告別式 (#114)
2022-07-13 16:34:46
安倍の告別式には
統一教会の信者も結構いただろう
宗教繋がりで銃殺される所なんか
ドレフュス事件とは
微妙に異なる展開だけど

これはこれで巨悪の解明には
大きなきっかけになるかもしれない
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paulさん (象が転んだ)
2022-07-13 19:15:37
安倍の巨悪の解明も、ドレフュス事件の様なこうした連携と手順が必要でしょうね。
それに、今は国民の半分は喪に伏してるでしょうから、自民党にも油断があると思います。
でも、安倍の死は自民党内の分断という点では有効に働くかもですが、巨悪の解明には単独ではなく、連携と段階で慎重に推し進めるべきです。

安倍政権の巨悪の解明のカギになるかと思い、ドレフュス事件を紹介しましたが、思った以上に共通点がある様に思います。
コメント勉強になります。
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#114さん (象が転んだ)
2022-07-13 19:17:01
一般者も含め、結構な行列になってましたね。
メディアが煽ったのか?安倍派の派閥が煽ったのか?それとも彼らに関係する団体の派生員で占められたのか?
癒着のある統一教会の構成員の殆どが参列してたでしょうか。

ある種の全体主義的な危険思想を思い浮かべました。改めて、安倍一族の権力の底力を思い知らされた気もします。
が故に、巨悪の真相を解明するには段階を踏んで慎重にやるべき必要がありますね。
その為には(内部告発)ではないですが、自民党内が分断し、その流れを作ってほしいです。
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アウシュビッツの惨劇再び (腹打て)
2022-07-13 21:49:28
ゾラは陸軍幹部の改ざんや隠蔽だけでなく、彼ら権力の奴隷になリつつある新聞を含むメディアや法の番人である裁判官や検察官や書記官をも糾弾したんよな。

今の日本にゾラが生きてたら、安倍は殺されずに地獄島行きか終身刑だったろうね。
ピカールやルーベ大統領も含め、当時は正義という思想に真実が明確に結びついていたんだろう。
安倍一族の横暴も勿論悪いが、それを見て見ぬふりをする我ら国民も同罪なんだよ。
丁度、アウシュビッツの惨劇を見て見ぬふりをするナチス時代のドイツ国民のように・・ 
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ジャーナリストの矜恃 (平成エンタメ研究所)
2022-07-14 09:14:44
「ロッキード事件」では故・立花隆氏が糾弾したんですよね。
今回の件では果たして誰が?

僕はジャーナリズムや司法が矜恃をもって自分の仕事をしていれば、世の中はそんなに悪くならないと考えているのですが、今は「忖度」あるいは「権力への提灯持ち」が多い。
困った時代になったものです……。

今回の件は「統一教会信者の政界への侵入」「政界汚染」に発展しそうですね。
政治家はカルト宗教と関わってはいけませんよね。
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腹打てサン (象が転んだ)
2022-07-14 12:20:19
疑惑塗れの安倍を支持する国民と
テロリズムを助長する傲慢な権力。
どっちもどっちですが、両方ともとても危険で怖い存在です。
大体において、安倍一族の様に権力が集中すると、腐ってしまうんですが、巨悪をもみ消すくらいの力とお金があるみたいですね。

一方で、安倍と統一教会との繋がり、つまり政治と宗教の癒着が指摘されてますが、政教分離というパンドラの箱を開けてしまった結果がどう転ぶのか?
言われる通り、我ら国民も政府の傲慢と巨悪に対し、その本質を深く切り込んで考えるべきでしょうね。
少なくとも、見て見ぬふりをするをするのは、それ自体が民主主義に対する冒涜だと思います。
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エンタメさん (象が転んだ)
2022-07-14 12:31:40
そうそう、ロッキードってありましたね。
すっかり忘れてました。
立花氏は温厚に見えても、非常に気骨のある正義を地で行く小説家だったんですね。

言われる通り、昨今のジャーナリズムはSNS被れして読むにも耐えないし、仕事をしてるとはとても思えない。
司法も世論の動向ばかり気にして、本来あるべき正義の判決がなされない。

”統一教会の政界への侵入”という新たな疑惑が浮上し、巨悪も多様化してる証拠ですが、誰か何とか突破口を開けてほしいですよね。
我々国民も微力ながら、権力を糾弾してるつもりですが、ジャーナリストや司法が束になって動いてくれないと、先へは進まないでしょうか。

コメントにいつもヒントを頂き、感謝してましす。
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国葬が決定 (tomas)
2022-07-15 05:26:45
らしいです。
<暴力に屈しない世界を>って岸田首相は言うけど
そういう自民党はずっとアメリカ(いやCIA)の脅しに屈してるくせに
血税を使って余計な事するよね。
今秋というけどコロナの第7波はどうなるんだろ? 
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Unknown (1948219suisen)
2022-07-15 11:47:24
今ネットは安倍さんを悼む人と安倍さんのやってきたことを告発する人とで二分されていますね。以前転象さんが書いてくれた阿部一族とパチンコ業界のつながりは衝撃的でした。こういうことを知らなければ、安倍さんの見た目ソフトな印象に幻惑されるんでしょうね。私は、現在は、両者の言い分を聞かせていただいている状態です。

立花隆氏は気骨のあるジャーナリストでしたね。最近お名前を聞かないから亡くなられたのかと思っていたら、まだご存命てすね。氏も80歳らしいから、かつてのような元気はもうないでしょう。安倍さんのことについて意見を聞かせていただきたいところですが…。
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