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今さら聞けない?広島型原爆と長崎型原爆との違い〜ウラン235とプルトニウム239

2019年04月14日 04時12分34秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 広島型原爆が濃縮ウランで、長崎型がプルトニウムというのは、多分殆どの人が知ってるとが思うが。悲しいかな私めは、濃縮ウランをそのまんま”濃縮したウラン”だと勘違いしてた(笑)。そして、プルトニウムを暴発し易い”人工ウラン”だと決め付けてた。
 それにウランには2種類ある事も知ってたが、(暴れ易い)オスと(大人しい)メスの違いに位しか思ってなかった。今から思うと全く恥ずかしい限りだが。勿論、満更外れてはいないが。
 でも、最低限の奇怪な下知識?があったので、サイトを色々と捲るうちに、あっという間にマスターできた。
 今更ですが、今日は原爆の仕組みについてです。


ウラン型とプルトニウム型

 一言で言えば、先に述べた様に濃縮ウラン型(広島)とプルトニウム型(長崎)の違いだけ。構造的な違いで言えば、砲身型(ガン•バレル)と爆縮型(インプロージョン)だが、濃縮ウランも爆縮型に転移出来るらしい。
 さてと、「チャーチルその8」でも述べたが、天然のウランの中で99.3%を占めるウラン238から僅か0.7%のウラン235を分離(抽出)するんですが。これが”濃縮ウラン”と呼ばれ、このウランの純度を上げる作業が非常に困難だとされます。但し、この純度100%のウラン235を抽出する過程で、偶然にも超危険な副産物である”プルトニウム”を産出したのも全くの皮肉ですね。

 しかし、ウラン238は核分裂し難く、一方でウラン235は核分裂し易い。ウランは天然の元素の中で最も重く、が故に非常に不安定な元素であるから、何らかの刺激を与えると核が容易に分裂し、蓄えていたエネルギーを一気に放出する。これを”核分裂”と言う。

 核分裂し易い条件として、前述した重たい不安定な元素である事と、陽子と中性子が”偶数”と”奇数”の組合せという2つの条件がある。つまり、ウラン235(陽子92+中性子143)もプルトニウム239(94+145)も偶数と奇数の組合せで、核分裂しやすい。


核爆発の仕組み

 そこで核爆発の仕組みですが。核めがけて一つの中性子を外からぶつけると、全く理論は単純です。
 例えば1kgのウラン235には1兆の1兆倍もの核があり、この核(ウラン)全てが一度に核分裂を起こせば、その総エネルギーは莫大なものになる。
 要は、如何にして核全てを瞬間的に分裂を起こさせるかが問題となる。核が分裂する時、ウラン235では平均2.5個の中性子が外に飛び出す。この飛び出した中性子が他の核に入込み、その核が分裂し、分裂した核からまた中性子が他の核に入りと、ネズミ算式に連鎖が起こり、核全部が分裂を起こす。
 これを”核連鎖分裂”と呼び、この核連鎖分裂を起こす状態を”臨界”と呼びます。

 この1kgのウラン235の核すべてが連鎖分裂を起こすのは、1億分の1秒という僅かな時間であり、”ピカドン”という一気の爆発が起こる。丁度、一兆個の一兆倍個もの火薬玉が一瞬にして爆発するイメージです。


広島型(リトルボーイ)の仕組み

 広島型ウラン原爆(リトルボーイ)の仕組みですが、比較的簡単な構造です。
 まず、左右の半球型の2つの容器に臨界未満のウラン235を詰め、各々を一定の距離を開けてセットします。勿論各々は臨界未満ですが、この2つの半球がぶつかれば、連鎖反応を継続できる量の”超臨界状態”になります。
 一方、ぶつけられる側の半球には”イニシェーター”(中性子放出装置)がセットされ、半球2つが合わされた時点でイニシェーターから中性子が放出されると、超臨界となったウラン235に中性子が飛び込み、一気に核分裂の連鎖反応が起こる。
 実際にはこの半球2つを合わせる為、爆薬が装填され、砲身型(ガン•バレル)の爆薬に発火し爆発が起こり、左半球は右半球に強い衝撃でぶつかる。そこでウラン235は”圧縮”され、一挙に超臨界に達すると。

 この時放出されるエネルギーの総和は膨大なもので、瞬間的には摂氏1千万度の熱を放出する。この1千万度になった爆弾は全てが一気に気体となり、周囲の大気も1千万度の熱を受けて一挙に膨張し、これが大きな爆発になるわけです。当然、強烈な衝撃波が生じ、この衝撃波が周囲の建物や家屋などをなぎ倒し、3千度以上の超高温によって焼き尽くすのです。
 因みに、ヒロシマに投下された原爆で燃焼したウランの量は僅か800gであったろうと言われています。
 但し、構造が比較的簡単であるものの、小型化が難しく、純度の高いウラン235を抽出する、濃縮技術の獲得が困難言われる。


長崎型(ファットマン)の仕組み

 次に、長崎型プルトニウム原爆(ファットマン)ですが。これも「チャーチルその8」でも述べましたが。原子炉の中で、ウラン235を原材料にウラン238を燃料にして、人工的に”プルトニウム239”を作ります。
 その仕組みは、原子炉での原爆と同様に、中性子をウラン235の核にぶち当てます。この中性子の大部分は、核燃料の95%を占めるウラン238に吸収されます。
 一方、核分裂を起こしたウラン235からも、平均2.5個の中性子が飛び出し、他のウラン235がその中性子を吸収して核連鎖が起こるんですが。この飛び出した中性子の大部分もウラン238が吸収します。こうして中性子を吸収したウラン238は中性子が1個だけ多くなり”ウラン239”なります。

 ウラン238は中性子を吸収しても核分裂は起こさないが、中性子が1個だけ多くなったウラン239は不安定な元素となり、中性子1個が陽子1個に変わる”ベータ崩壊”を起こす。
 陽子92のウラン239はまたもベータ崩壊により、1個の中性子が1個の陽子に変化し、陽子が93個となり、ネプツニウム239という元素に変わります。
 更にネプツニウム239は、中性子を1個吸収して再々度ベータ崩壊を起こし、1個の中性子が陽子に変わり、陽子が94個のプルトニウム239に変化。このようにしてできたのがプルトニウム元素です。

 この様にプルトニウム原爆(長崎型)の仕組みは、ウラン原爆(広島型)に比べてかなり複雑です。プルトニウム原爆の場合は、ウラン原爆のように2つの臨界未満のプルトニウム塊を爆薬によってぶつけ合わせ、一挙に超臨界に達する仕組みはとれません。2つの塊がぶつかる前に、爆薬の爆発により、プルトニウムの一部が核分裂を起こし、超臨界に達する前に連鎖が終焉してしまう。
 ではどうやって爆発させるのか?


爆縮型プルトニウムの複雑な仕組み

 ”プルトニウム原爆”の場合は、ウラン238でできた完全球型の器(ダンパー=中性子反射体)の外側にTNT爆薬(2.5t)を仕掛け、32面体に分割された爆薬に同時に点火。
 この時、爆薬の衝撃方向は球の中心に向う様に、衝撃波をレンズによって中心に向う構造になってる。このレンズは爆薬によるもので”爆縮レンズ”とも呼ばれる。”悪魔の頭脳”と称されたフォン•ノイマンの貢献が有名ですね。

 外側のTNT爆薬に寸分の狂いもなく同時に点火すると、爆薬の衝撃は同時に球の中心方向に向い、その衝撃と圧力によりプルトニウムは一気に圧縮され(爆縮)、超臨界に達します。
 この時、中心にあるイニシェーターから中性子が一挙に放出され、密度が濃くなった(超臨界の)プルトニウムに吸収され、核分裂の連鎖反応が生じます。この様な”爆縮式”の仕組みでプルトニウム原爆は爆発すると。
 但し、小型化に向いてるが、核分裂物質を周辺から均等に圧縮する”爆縮レンズ”の、言わば”トマトを壊さずに潰す”技術の獲得が困難だとされる。

 また、純度の高い”武器グレード”のプルトニウムは普通の原発である軽水炉では産出できず、高速増殖炉が必要ですが。
 かつて”夢の原子炉”とまで称された”もんじゅ”の廃炉により核燃料リサイクルが破綻したのは記憶に新しい。これはエネルギーの強い高速の中性子を使う為、コントロールしにくく、暴走を招きやすい事が原因とされる。
 この技術の困難さが故に、欧米を中心に世界各国が高速増殖炉から撤退し初めています。


最後に

 因みに、ウラン型原爆に必要な”ウラン235”は、自然界にはごく微量しか存在しない。一方で”プルトニウム239”は、核分裂を持続させる装置の原子炉さえあれば、生産&リサイクルできる事が分かった。
 結果、アメリカは45年7月までにプルトニウム型2つとウラン型1つの計3個の原爆を完成させた。このプルトニウム型の2つに1つは、人類初の原爆実験(トリニティー)に使われた。
 故に、”実験の為に原爆を落とした”ってのは全くのデタラメで、全世界にアメリカファストを誇示する為だけの目的だったんですね。

 最初はウラン型を開発してたのに、プルトニウム型が追い越したというオマケ付きでした。
 但し、原爆のコンセプトは比較的単純で、事実、ゾラの「パリ」(1898)で、主人公の兄が高性能の火薬を一気に爆発させる、最終兵器の研究をするんですが。火薬がウランに変わっただけで、コンセプト自体は非常によく似てます。 
  その上、運良く純度の高い核兵器用のプルトニウムを抽出できたとしても、ミサイルに積み替えたり、移動させたりする費用が大半を占めるというから、結局は核兵器を所有してるとても、超危険物を保有してる事になり、維持コストばかりが嵩む、旨味のない悪魔の最終兵器なんです。
 故に、北朝鮮に資金を捻出して核廃棄を促すより、経済封鎖をより強化し、核の維持を無効化した方が手っ取り早い気もする。
 それに広島長崎の原爆記念館も被害だけを展示するではなく、私の戦争ブログもぜひ展示して欲しいですね。

 結局、人類が驚異と見てた核戦争は、オッペンハイマーが夢見た、この”悪魔の兵器”は”絵に描いた餅”で終わるのかもしれない。
 因みに、悪魔の兵器に関しては”その1””その4”も宜しくです。



4 コメント

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勉強になりました (びこ)
2019-04-14 18:23:06
完全に理解できたかどうかは自信がないのですが、しかし、主なところはわかりました。

結局、広島も長崎も原爆の実験場にされたのですね。

このことは、いくら戦争に負けた国といっても、もっと抗議をしていいような気がします。

この記事を読ませてもらう前に録画してあったNHK「新日本風土記」で「広島」を見たところだったので、よけい興味を持って読ませていただけました。
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ゾラと原爆 (lemonwater2017)
2019-04-15 02:29:21
ホントはもっと複雑かもですが。爆発の店だけで見れば、1兆個の1兆個倍の火薬玉を一気に爆発させるイメージですかね。

事実、ゾラの『パリ』で、主人公のお兄さんが高性能の火薬を一気に爆発させる、最終兵器の研究をするんですが。火薬がウランに変わっただけで、コンセプトは非常によく似てます。

ただ、実験の為に落としたってのは全くの嘘で、既にトリニティーで実験済ですから。全世界にアメリカファストを誇示する為だけの目的だったようなです。

それに広島長崎の原爆記念館も被害だけを展示するではなく、私めの戦争ブログもぜひ展示して欲しいですな。イヤそうでもないか。

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原爆は誰が為に落ちた (tokotokoto)
2020-03-10 20:42:50
落とさなくてもいい筈の原爆をアメリカは敢えて日本に落としました。

アメリカのエゴが生んだ身勝手な大量破壊兵器です。これこそが人類歴史上最大で最悪のテロ攻撃です。
読む程に憤りを感じます。
被害だけを展示しても悲しさしか伝わりません。でもアメリカの策謀を知る事で原爆の真相を知る事で悲しさの次元も違ってきます。

何度読んでも素晴らしい戦争ドキュメントです。
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tokoさんへ (象が転んだ)
2020-03-11 04:37:05
お褒め頂いて恐縮です。
”被害だけを展示しても悲しさしか残らない”
これまた名言ですね。
”アメリカのエゴが生んだ人類史上最悪の大量破壊兵器”
これまた名言です。

コメント有難うございます。
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