計量器には「地下タンク老朽化の為ガソリンの販売を終了しました」との貼り紙が・・・
窮地に追い詰められる販売店
月間ガソリン・スタンド 8月号より
業転の捨て場とも揶揄され、激しい安売り合戦が繰り広げられる熊本県市場でまた1ヶ所の販売店が姿を消した。
昭和38年に創業した県央部の販売業者は6月下旬、
埋設から48年になる老朽化したガソリンタンクの在庫が尽きた時点で、ガソリンの販売を終了。
埋設40年以上の地下タンクにFRP工事などの対策が義務化される2年間の猶予を待たずして廃業を決意した。
「油の漏えいが不安で不安でたまらなかった」
と答える店主は、先代の父親が立ち上げたSSの2代目として、これまで妻と長男の3人による家族型の経営を続けてきた。
しかし、近隣では燃料油仕切りと同値で販売するPB量販店が市場を圧巻。
6月下旬、ガソリン全国平均価格が149円のときに、すぐ隣で135円で販売されるような厳しい販売環境にさらされていた。
「いくら売っても利益は出ない。そんな中で借金してまで再投資はできない」
3代目として店主の後を継ぐはずだった長男の就職が決まったタイミングで廃業を決断。
地元客からは
「どこで給油すればいいのか」
「カーケアだけでもしてくれないか」と惜しむ声が相次ぎ、
「当面は灯油と軽油の配達や油外販売を行うつもり」という。
業界の歪(いびつ)な構造と地下タンク規制強化により、
地域密着型の販売店が窮地に追い詰められている。
7/28 燃料油脂新聞より
安値販売した者勝ちか 有名無実化の不当廉売
◎・・・小売業者の価格(売価)設定は仕入れ価格をベースに
販売経費や管理費、利益を乗せて決定するが、会社(形態など)によって(乗せる)経費や利益には幅があり、
仕入れ価格が同値だからといって売価が同値になるとは限らない。
ただ会社規模や市場環境が違っても(その会社の)仕入れ価格を下回る売価設定はあり得ないし、
「不当廉売」として訴えられ、罰則を受けるべき行為にあたるのはいうまでもない。
◎・・・ところがSS業界では必要経費や利益を乗せるどころか「仕入れ価格割れ」と思われる売価を目にすることが少なくない。
たとえば今月中旬のガソリン価格。
当時、系列仕切価格は2週連続値上げによって「133-134円(税込みで140円前後)に達していたが、
市況陥没地区では140円を割り込み130円半ばで販売されるなど、明らかに仕入れ価格を割っていた。
◎・・・ここにきて多少価格は上昇したが、それでも実質市況140円前後の市場(店)は存在している。
現時点で「140円前後」という売価は「不当廉売」に値する価格レベルだが、
SS業界では「訴え(申告)てもせいぜい“注意”で終わっている」現実から申告をちゅうちょする向きは多い。
事実、最近数年「注意」事案は7-900件に達しているが安値販売は後を絶たないどころかますます激化の様相を呈している。
◎・・・これも完全に「クロ」、つまり排除命令までに至ったケースはわずか2件しかなく、警告さえ6-7件しかないことが原因だろう。
業界特有の仕入れ価格の多様性や業転価格の存在などで立件が難しいことはわかるが、
それにしても何ら拘束力がなく何度受けても罰則もない「注意」ばかりでは無力感だけが募っていく。
このままでは安値販売した者勝ちになる。
「業界に不当廉売と言う言葉はない」という業者の声が聞こえてきそうだ。
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行政は何をやっているのか?
全国石油協会の実態調査でも過半数のSSが営業赤字で、販売店数も減少の一途。
ガソリンスタンド過疎地問題が浮上し、東日本大震災では地域エネルギーの拠点としてSSの存在意義が認識された。
にもかかわらず、未だ業転との仕切り格差や、不当廉売など、解消される気配すらない。
この調子ではさらにSSは減り続けるだろう。
けれどもそれも仕方のないことなのだ。
時を経て、結果が如実に現れない限り、皆、気がつかないのだから。
8月上旬にエネ庁による元売ヒアリングが実施される。
それが為されたからといって状況が改善されるのか・・・
半ば諦めてはいるけれども
それでも望みを繋ぎたい。
心ある上層部の方々よ
どうか、この理不尽な状況を終わらせてください。
地域エネルギー拠点として、今あるSSの健全な存続が望まれています。