masumiノート

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災害時燃料供給協定は地域のSSが存在してこそ成り立つ話

2019年01月09日 | ガソリンスタンド4

前記事の続きです。




最優先されるべきは、普段から取引をしてくださるお客様

奈良県と奈良県石商との間でも災害時協定は締結されている。
県の公用車では奈良県石油組合は随意契約を勝ち取り石油組合員を通じて燃料供給が行われているのだが、いわゆる県の「ハコモノ」はそうではなく競争入札手続きにより納入業者が選定されている。

災害時協定に基づき、有事の際、県から各市町村へ指示が出される。これを受けて各地域の石油組合員が燃料油供給を求められることになるのだが、この時、最優先されるべき対象は「普段からお取引をしてくださっている地域のお客様、そう考えるのが当然のことではないか」

緊急用発電機の重要性については昨年9月に発生した北海道地震に伴う長時間にわたる「全道停電」を背景に浮き彫りとなった。

入院患者全員が人工呼吸という病院で停電が起こる。

(中略)

このケースでは「当該病院のすぐ近くのSSが、病院からの緊急要請に速やかに応えたことから大事には至らなかった」そうだが、この事例を知り、「やはり考えさせられた」と中谷専務。


災害時協定の実行は地域のSSがこの先々も存在し続けてこそ成り立つ話

人命優先がとるべき行動。
有事の際、救援と復旧を急ぐのはSSの社会的使命である。
ーと理解していても、有事の際、SSがかかる期待にどこまで応えられるかは分からない。

人命優先はSSスタッフにも当てはまる。
いざその時、果たして現場(SS店頭)に人員は十分に揃うのか。
無理の利かない局面なら、おそらくSSスタッフたちが燃料供給をうんぬんするどころの話ではないだろう。

前述の生駒市内の市立病院が示した見解に当てはめたとしても同様のことが言える。

生駒支部と生駒市は災害時協定を結んでいる。
ただ、この協定の及ぶ範囲は無限ではない。

中谷石油・生駒中央SSは「中核SS」の位置付け。
緊急車両への優先給油を実施する役割を担う。
SS裏手で重油タンクを所有し、需要家へ重油を安定供給しているが、けれど、中核SSと重油の安定供給は直接的には関係のないもの。

その役割分担からすると、「小口配送拠点」が燃料の貯蔵(油槽所運営)から配送、給油業務(小口配送)まで一貫した体制を構築し、石油製品の供給体制の災害対応能力を強化するのが筋だ。

災害時協定を盾にして、有事の際、地域のSS業者がふだん取引のない先々(重要施設など)から重油の供給を
求められたとしても、
「後回しにせざるを得ない」現状がある。

仮に有事の際、普段の取引のない先々へ燃料油供給に応じた場合でも、それまで配送したことのない施設等だ。
緊急要請を受けて燃料油を配送したスタッフとて、どこへ持ち運べばよいかなど「勝手が分からない」からなおのこと負担は増すばかりだ。

さらにいえば、これらは「地場のSS業者」がこの先々も存在し続けてこそ成立する話だ。

地域のSSが今後さらに閉鎖・撤退を余儀なくされたら、有事の際、どこまで災害対応力を発揮できるか疑問。
まして、災害時協定を盾に、地域各所から緊急要請をされても「協力しろもヘチマもない」だろう。

(以下略)


*********

規制緩和以前の、販売価格差が殆どなかった時なら、このような問題は起きていなかった。
その地域への供給はその地域の地場業者が担っていた。
それぞれのバランスが取れていた。


「中核SS」や「住民拠点SS」が必要になったのは、

元売自身が説明できない卸格差、10円以上もの理不尽な卸格差のなかでの安値競争で、全体の販売数量の7割を(※)セルフ(安値店)が占めるようになり、地場業者(主に中小零細)が撤退・廃業した結果です。

(※)ガソリンスタンド数のセルフ比率は30%台

つまり、バランスが崩れた結果です。




中谷石油の専務さんのおっしゃっていることは至極当然だと思います。

私には、災害時の緊急事態時だけ地場業者を当てにしようとしているのが「災害時協定」のように思えてなりません。

バランスが崩れているのに、それは無理な話ではないでしょうか?



南海トラフもいつ来てもおかしくないといわれているなかで、これは本当に業界だけでなく皆で考えなくてはならないのではないでしょうか?




*****

全石連が全額補助で数を増やそうとしている「住民拠点SS」ですが、当店は「住民拠点SS」には手を挙げません。


24年前の阪神淡路大震災で元売のローリーが道路事情により来られないと聞き、「燃料油を切らすわけにはいかない」と当時の従業員たちと夜中に自社ローリーを走らせ燃料油を確保し供給責任を果たしました。

8年前の東日本大震災では、被災地のガソリンスタンドの姿に「普段高いのなんのと文句を言われていても、こういうときには自分も被災者でありながら動く。これがスタンドマンや」と目を赤くした。

24年前48歳だった店主は70歳を超え、5~6名いた従業員もいなくなりました。

今、もし阪神淡路大震災のような災害が起きたらー

もう24年前と同じことは出来ません。



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追記

「地場業者をこれ以上減らすわけにはいかない」と全石連が訴えている、その意味を理解できる消費者がどのくらいいらっしゃるでしょうか。

「別に地場業者でなくても構わないんじゃないの?」「地場業者でなくても近所にガソリンスタンドがあるから問題ないよ」
と言う方も多いのではないでしょうか。

全石連が「地場業者を」と言う理由は、競争入札で広域大手業者から供給を受けていた公的施設が、東日本大震災時にその供給業者と連絡すら取れないという事態が起きたため石油組合に供給を依頼し、組合の要請に応えて組合員(地場業者)が供給した事例があったからです。

他にも、就業規則の壁など...


2014年6月25日ぜんせきより
災害時の“最後の砦” 地場SSの重要性説明


全石連の河本副会長・専務理事は、東日本大震災直後から石油製品の安定供給に尽力したSS現場の従業員らの懸命の取り組みを説明した。

ある大手のSS企業では、就業規則で震度6以上の地震が発生した場合、出社してはならないといったことがあったと聞く。これでは地下タンクにいくら在庫があっても、供給してはならないということになってしまう」と概況説明したうえで、

「こうなると、就業規則がないような個人商店SSの人が供給せざるを得ない
上流のほうでいかに供給体制を整えても、SS現場での震災時における火事場の馬鹿力で供給してくれる方々がおられなければ、石油が欲しいという被災者のご要望に応えることができなくなってしまう」と安定供給を支える中小地場SSの重要性を訴えた。


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働き方改革以前に、労働者は労働基準法で守られており、雇用者は“労災”というリスクを回避せねばなりません。