北野武が本領を発揮した映画『アウトレイジ』(2010)に、こんなシーンがある。
警察署の前で、警戒杖を持って立つ「立ち番」と呼ばれる警察官―彼に目がけて、ヤクザの椎名桔平が煙草の吸殻を放る。
すると、通りかかったイカツイ刑事が「なにしてる、煙草を拾え!!」と怒鳴る。
椎名ヤクザは、不機嫌に吸殻を拾った・・・。
このイカツイ刑事は、たぶんマルボウ(=警視庁捜査四課、対ヤクザのための刑事たち)なのだろう。
観客が驚くような描写ではない。
ないが、たぶんほかの監督はやらない。
そのことに感心し、ハッとする。
これが、この監督なりのリアリティなんだなぁって。
自分は、そういう描写が多い作品を「優れた映画」だと解釈している。
今宵はそんな、ハッとしてグーな作品を集めてみた。
※自分の好みを最優先したら、かなり物騒な描写ばかりになっちゃった
(1)『キッズ・リターン』(96)
ヤクザの石橋凌が殺されるシーン。
殺し屋は、ママチャリに乗ってやってくる。
つまり北野映画は、ハッとするシーンの宝庫なんだ。
(2)『羅生門』(50)
多襄丸(三船)と金沢(森雅之)の対決。
それぞれの回想では「色がついて」勇ましい感じだが、ほんとうは杣売り(志村喬)が回想した「ぜんぜん勇ましくない」戦いだったと思われる。
次点の映画にも通ずるが、ひとを殺すさまは、じつは、ちっとも格好よくないのである。
(3)『許されざる者』(92)
相手がたとえ丸腰だったとしても、なかなか仕留め切れない。
黒澤とイーストウッドは、ひとを殺すことの難儀さを描いている。
(4)『フルメタル・ジャケット』(87)
教官ハートマンは射撃の講義において、チャールズ・ホイットマンの話をする。
「彼の能力は素晴らしい」と。
ホイットマンとは、テキサスタワーから乱射して10人以上を殺した実在する犯罪者。
犯罪者を「教材」とするところに、戦争の狂気が見て取れよう。
(5)『風と共に去りぬ』(39)
スカーレットの愛娘が落馬して死ぬシーン。
最初に観たとき、まだガキだった自分は落馬で死ぬという展開に慄いたものだった。
(6)『ゆきゆきて、神軍』(87)
喧嘩を吹っかけたら、逆に羽交い絞めにされてしまった奥崎さん。
「(カメラを)止めろって。俺がやられているじゃないか!!」
ドキュメンタリーだからこそ起きた、映像的ハプニング。
そして奥崎さんが「格好よく撮られたがっていた」ことを知ると、余計に面白い。
(7)『ピアノ・レッスン』(94)
エイダの娘が母親の浮気現場を目撃、別の男に捧げる「魂の恋文」を、エイダの夫に届けてしまうくだり。
残酷だけれど、あり得ると思った。
(8)『アマデウス』(83)
ハッとするシーンが沢山。
ひとつ選ぶとするならば・・・
暖炉に放った十字架―それが掛けられていた壁には、十字架のところだけ「跡」がついている。
この「跡」だけで、サリエリの信心深さが表現されていて見事。
(9)『十九歳の地図』(79)
♪ ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらん ♪
これはハッとするというより、「業界的あるある!!」かもしれない。
雨の日―これから新聞配達をしなければならない配達員たちが、『あめふり』を大合唱するシーン。
(10)『グッドフェローズ』(90)
ヘンリーが逮捕されるまでの1日を描いた、クライマックスのシークエンスすべて。
彼にとっては、料理することも麻薬の売買をすることも、同価値なのである。
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『my favourite 自販機』
警察署の前で、警戒杖を持って立つ「立ち番」と呼ばれる警察官―彼に目がけて、ヤクザの椎名桔平が煙草の吸殻を放る。
すると、通りかかったイカツイ刑事が「なにしてる、煙草を拾え!!」と怒鳴る。
椎名ヤクザは、不機嫌に吸殻を拾った・・・。
このイカツイ刑事は、たぶんマルボウ(=警視庁捜査四課、対ヤクザのための刑事たち)なのだろう。
観客が驚くような描写ではない。
ないが、たぶんほかの監督はやらない。
そのことに感心し、ハッとする。
これが、この監督なりのリアリティなんだなぁって。
自分は、そういう描写が多い作品を「優れた映画」だと解釈している。
今宵はそんな、ハッとしてグーな作品を集めてみた。
※自分の好みを最優先したら、かなり物騒な描写ばかりになっちゃった
(1)『キッズ・リターン』(96)
ヤクザの石橋凌が殺されるシーン。
殺し屋は、ママチャリに乗ってやってくる。
つまり北野映画は、ハッとするシーンの宝庫なんだ。
(2)『羅生門』(50)
多襄丸(三船)と金沢(森雅之)の対決。
それぞれの回想では「色がついて」勇ましい感じだが、ほんとうは杣売り(志村喬)が回想した「ぜんぜん勇ましくない」戦いだったと思われる。
次点の映画にも通ずるが、ひとを殺すさまは、じつは、ちっとも格好よくないのである。
(3)『許されざる者』(92)
相手がたとえ丸腰だったとしても、なかなか仕留め切れない。
黒澤とイーストウッドは、ひとを殺すことの難儀さを描いている。
(4)『フルメタル・ジャケット』(87)
教官ハートマンは射撃の講義において、チャールズ・ホイットマンの話をする。
「彼の能力は素晴らしい」と。
ホイットマンとは、テキサスタワーから乱射して10人以上を殺した実在する犯罪者。
犯罪者を「教材」とするところに、戦争の狂気が見て取れよう。
(5)『風と共に去りぬ』(39)
スカーレットの愛娘が落馬して死ぬシーン。
最初に観たとき、まだガキだった自分は落馬で死ぬという展開に慄いたものだった。
(6)『ゆきゆきて、神軍』(87)
喧嘩を吹っかけたら、逆に羽交い絞めにされてしまった奥崎さん。
「(カメラを)止めろって。俺がやられているじゃないか!!」
ドキュメンタリーだからこそ起きた、映像的ハプニング。
そして奥崎さんが「格好よく撮られたがっていた」ことを知ると、余計に面白い。
(7)『ピアノ・レッスン』(94)
エイダの娘が母親の浮気現場を目撃、別の男に捧げる「魂の恋文」を、エイダの夫に届けてしまうくだり。
残酷だけれど、あり得ると思った。
(8)『アマデウス』(83)
ハッとするシーンが沢山。
ひとつ選ぶとするならば・・・
暖炉に放った十字架―それが掛けられていた壁には、十字架のところだけ「跡」がついている。
この「跡」だけで、サリエリの信心深さが表現されていて見事。
(9)『十九歳の地図』(79)
♪ ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらん ♪
これはハッとするというより、「業界的あるある!!」かもしれない。
雨の日―これから新聞配達をしなければならない配達員たちが、『あめふり』を大合唱するシーン。
(10)『グッドフェローズ』(90)
ヘンリーが逮捕されるまでの1日を描いた、クライマックスのシークエンスすべて。
彼にとっては、料理することも麻薬の売買をすることも、同価値なのである。
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