Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(414)

2022-04-30 00:10:00 | コラム
うーばーいー「つ」→「つ」やまさんじゅうにんごろし(津山三十人殺し)

津山事件、あるいは都井睦雄事件ともいわれる大量殺人事件(120分で30人が犠牲に)は、38年(昭和13年)5月に、岡山は現・津山市加茂町で発生した。

自分が生まれる前の出来事、、、というのもあり、好奇心のほうが上回って(ことばは適切とは思えないが)文献などを楽しく?読めたりもするのだが、当事者にとっては「当然」理不尽極まりない事件であったろう。

動機は怨恨―うらみつらみそねみ―だったとされる。
結核による徴兵検査の不合格から生じた劣等感や、差別されているという被害者意識。

5月20日夕刻、都井は電柱によじ登り送電線を切断し、集落一体「のみ」を停電させて戦闘の準備を開始。
現代ではないので「即」復旧の流れにはならず、そのまま夜を迎える。

翌日深夜、自宅就寝中の祖母を殺害。
学生服に地下足袋、はちまきをしめてそこに懐中電灯を巻きつけ、日本刀と散弾銃を持ち大殺戮を始めた・・・。

事件後、都井は遺書を記し猟銃で自害。
「(略)まことにすみません、涙、涙、ただすまぬ涙がでるばかり、姉さんにもすまぬ、はなはだすみません、ゆるしてください、つまらぬ弟でした、この様なことをしたから決してはかをして下されなくてもよろしい、野にくされれば本望である、病気四年間の社会の冷胆、圧迫にはまことに泣いた、親族が少く愛と言うものの僕の身にとって少いにも泣いた、社会もすこしみよりのないもの結核患者に同情すべきだ、実際弱いのにはこりた、今度は強い強い人に生まれてこよう、実際僕も不幸な人生だった、今度は幸福に生まれてこよう」

せ、せつない。
せつない・・・のだけれど、
その異様ないでたち・奇怪な行動は、はっきりいえば「いかにも三面記事的・小説的・映画的」であり、

横溝正史が創作小説『八つ墓村』を、
西村望がノンフィクション『丑三つの村』を発表、

前者は51年(主演・片岡千恵蔵)、77年、96年(監督・市川崑、主演・豊川悦司)に映画化され、とくに監督・野村芳太郎&主演・萩原健一の77年版(たたりじゃー!!)が有名。






後者は83年、古尾谷雅人の主演で映画化。
監督がポルノで鍛えた田中登なので殺戮描写だけでなく、いやそれ以上に「からみ」の数々が問題視され成人映画「指定」となったが、個人的には『八つ墓村』より好きなのよね。

このポスターだけで、監督の意図するところが分かるというものでしょう。



ただ、いち早くこの事件を描いた映画は若松孝二の『新日本暴行暗黒史 復讐鬼』(69)で、


やっぱりこの、ビジュアルイメージだよね。
この事件は、もちろん内容も凄まじいものがあるのだけれど、結局は都井のいでたちに尽きる―そう思うのだが、どうなのでしょうね。


次回のしりとりは・・・
つやまさんじゅうにんごろ「し」→「し」もん。

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明日のコラムは・・・

『完結は、7年後?? + 04月コラムの目次』
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シネマしりとり「薀蓄篇」(413)

2022-04-29 00:10:00 | コラム
しと「う」→「う」ーばーいーつ

「たまたま」観たドキュメンタリー映画、『東京自転車節』が面白かった。


平成の時代までは・・・
「よほどのことがないかぎり不採用にはならない」交通誘導員がセーフティネット的な役割を果たしていた気がするのだけれど、
令和といえばこれだろうね、ウーバーイーツに代表されるフードデリバリーのサービス。

という自分は、ウーバーはユーザーとして登録はしているけれどいちども利用せず、専ら「出前館」を利用。
はっきりいってしまえば「どっちもどっち」な気がする、
「ちゃんとしている配達員」と「いいかげんな配達員」、どっちにも居る可能性はあるでしょう、、、というね。

ただ自分のなかのイメージが「より、よいほう」を選択しているに過ぎない。


現在公開中のルーマニア産『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』は、コロナ以後の世界を描いていて、登場人物のほとんどがマスクをしている。
「マスク着用の俳優演技」が増えていくであろうことが予想されるのと同じ意味で、フードデリバリーで生計を立てる映画キャラクターは、このあと数年で一気に増えていくような気がする。

現時点では、まだ・・・
『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89)のピザ配達員とか、


「メッセンジャー」という職業を軽快に描いたツヨぽん主演作『メッセンジャー』(99)、


ジョセフ・ゴードン=レビットが好演、チャリダーを自称するひとには必ず薦めている佳作『プレミアム・ラッシュ』(2012)


などなど、「ウーバーっぽさ」を感じさせないデリバリーマン/ウーマンがメインですから。

「ウーバーっぽさ」とは、なにかね?

敢えてこういう表現をすると、それは「シロートっぽさ」でしょう。
それが、必ずしも「否定的な意味合いではない」ところ、それがつまり令和という時代なのだと思います^^


あすのしりとりは・・・
うーばーいー「つ」→「つ」やまさんじゅうにんごろし。

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黄金週間のおもひで

2022-04-28 00:10:00 | コラム
厳密には「過ぎてから」ではあるものの、黄金週間の目玉映画といえば、今年はやっぱり『シン・ウルトラマン』でしょう。

5.13公開、
「今年は、これだけは劇場に行く」という友人も多い。

その友人の多くが家庭持ちで、お子さんが小さければ小さいほど「一緒に観に行っていいものか、悩みどころなんだよ」と不安を漏らす。

これは頷ける。

「通常の」「ウルトラマン」であれば遠慮などする必要もない、
しかしこの映画は「アンノ」案件であり、
熱心ではあるものの、ちょいと「メンドー」なマニアなひとたち、、、がついていると。

神経質ゆえ、子どもが騒いだ場合、トラブルに発展するのではないか―という不安。

気の毒だなぁ!!
それこそシネコンの特色を活かし、字幕/吹き替えで分けるように、単身/家族で分けられないものでしょうかね。

※いっちゃん新しい予告



さて、自分がガキだったころの黄金週間のおもひで―。

生まれて初めて「東京」で「映画」を観たのは、中学1年の黄金週間。

父・姉と松竹セントラル(銀座)で『プラトーン』(86)鑑賞。





父だって東京に慣れているわけではないので時間どおりには到着せず、ただ時代的に入れ替え制ではなく、途中入場し次の上映の途中で退場した。

翌年は、『レインマン』(88)と『カクテル』(88)のはしご鑑賞で、トム・クルーズ祭り。



2年あいて、高校2年時に渋谷のル・シネマでドパルデュー主演の『シラノ・ド・ベルジュラック』(90)。






上京後は「黄金週間に関係なく」映画を浴びることが出来る環境にある―が、ガキのころの「頑張って東京にまで出てきて映画を観る」体験の強さというものは、成人後のあらゆる映画体験より勝っているんだよね。
はっきりいって『カクテル』や『シラノ』は、映画史的に捉えれば「けっして重要ではない」作品だけれども、強烈な思い出として残っているのだもの。

これいうと父や姉に驚かれるのだが、その日、なにを食べたか・電車に乗って立っていたのか・どこから座れたのか、さらにいえば、電車で隣りに座っていたひとまで「なんとなく」覚えているんですよ。
自分にとって、映画を鑑賞する日そのものがビッグイベントだったのだろうなと。

あのころの、ちょっと眩しいほどの情熱は、いまは残念ながら、ない・・・のだろうね(^^;)

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にっぽん女優列伝:特別篇

2022-04-27 00:10:00 | コラム
女優列伝の完結を記念し、取り上げた「326人のなかのベスト10人」を展開してみます^^

(1)斉藤由貴…演技力はもちろんのこと、有名人での「初恋のひと」なので



(2)原田美枝子…現在もよいが、とくに若いころの、ちょっと生意気な感じが



(3)香川京子…『近松物語』を支えたのは、このひとの凛とした佇まいでしょう



(4)左幸子…情念の演技、グッとくる



(5)杉村春子…巧過ぎて溜息しか出ない



(6)広瀬すず…現代日本映画の先頭を走る、この子は「眼力」だと思う



(7)樹木希林…亡くなって痛感するのは、じつに得難い存在だったよねと



(8)久我美子…クラシックに触れるようになって、初めて憧れたひと



(9)二階堂ふみ…「ド」メジャーとインディーズ、どっちも行けるのがこのひとの強みでしょう



(10)松岡茉優…コメディエンヌとしては、すずちゃんより伊藤沙莉ちゃんより優れていると思う



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にっぽん女優列伝(326・最終回)渡辺典子

2022-04-26 00:10:00 | コラム
65年7月22日生まれ・56歳。
大分出身。

2017年2月の第1回目「相武紗季」から始まって5年と2ヵ月、やっとのことで列伝の完結です。

326人、、、ふぅ達成感^^
そんな長寿シリーズの締めくくりとして登場するのは、渡辺典子(わたなべ・のりこ)さん。

けっこう好きだったんですよ、



しかし角川三人娘としては・・・
たのきんにおけるヨッチャン、シブがきにおけるフックン、少年隊におけるカッチャン、、、といったらいいのか、
薬師丸・原田に比べると、いまひとつ跳ねなかったのですよね。

時代の所為もあったのでしょうか、角川からの独立もうまくいかなかったような気がしますしね~。




<経歴>

第6回ホリプロタレントスカウトキャラバン・審査員奨励賞受賞。
「角川映画大型新人女優募集」オーディション・グランプリ受賞。

この時期、『週刊朝日』の表紙を飾る。
カメラマンは篠山紀信で、渡辺さんは高校生でした。

おとなっぽい!^^



映画俳優デビュー作は、82年の『伊賀忍法帖』。
堂々の三役をこなしたのち、
ニャンニャン事件でスキャンダルにまみれた高部知子の代役として、『積木くずし』(83)に主演する。

タイトルも配役も主題歌もよかった、いちばんの驚きはこれが「井筒和幸」演出であるという『晴れ、ときどき殺人』(84)。

これ以降、映画でもドラマでも「兼主題歌」が多かったのは、いかにも時代というか角川的というか。


『いつか誰かが殺される』(84)、


『結婚案内ミステリー』(85)、『彼のオートバイ、彼女の島』(86)、『キャバレー』(86)。

この年、映画『恋人たちの時刻』(86・脚本は荒井晴彦)の主演が決定していましたが、ヌードシーンに抵抗感を覚え辞退。と同時に、角川春樹事務所から独立。
以降、あきらかにメディア露出が(薬師丸・原田に比べ)激減したので、やはり独立は難しかったのかなぁ、、、と。

ほかの出演作に・・・
『恐怖のヤッちゃん』(87)、『トットチャンネル』(87)、
『人間の砂漠』(90)、『わが愛の譜 滝廉太郎物語』(93)、『億万長者になった男。』(94)、
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003)、『海猿 ウミザル』(2004)、『椿山課長の七日間』(2006)、『赤い糸』(2008)、
最新作は、2020年の『みをつくし料理帖』。

相変わらず派手な露出はありませんが、コツコツとキャリアを築きつづけているのはうれしいです。


※あすは、列伝に登場した326人のなかで、好きなひとを10人並べます^^

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