Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(23)

2012-11-26 00:15:00 | コラム
らーす・ふぉん・とり「あー」→「あー」としあたーぎるど(アート・シアター・ギルド、ATG)

バイブルである『タクシードライバー』(76)を、封切り時に触れられなかったこと。
アメリカン・ニューシネマの波を、肌で感じられなかったこと。
そしてATG隆盛の熱狂というものを、当時の資料でしか知ることが出来ないこと。

そんなこといってもしょうがない―ということを敢えていっていいのであれば、年齢の「限界」からくる悔しさを挙げると、トップ3はこうなる。

つまり、もうちょい早く生まれたかったものだ、、、と。
現代の消費主義・快楽主義にどっぷり浸かっているクセしてね、よくいうよって話である。


ATGの正式名称は、日本アート・シアター・ギルド。
61年から、とくに70年代まで、非商業性が際立つ小規模な映画を配給・制作した映画会社。

ATGが機能していたから「映画監督になれた」というひとも多く、そんな先輩たちの背中を見た映画小僧の闘争によって、90年代以降の「ミニシアターブーム」が訪れる。

魂の継承がつづく、映画史―じつに、じつに素晴らしい、、、などといっていられない状況こそ「ミニシアターブーム、終焉」の「いま」なのだが、
映画小僧たちは復活を信じ、ミニシアターに通い続けるほかないだろう。

それにしても急速な冷えっぷりといったら、ない。
きのうまでミニシアターのファンだったひとが「きょうから」ファンでなくなるということは考えられず、まぁ「飽きた」ということはあるかもしれないが、これはなんなのか。

なんでもかんでもシネコンの所為にするつもりはないが、井筒和幸の「映画館はコンビニの棚になってしまった。並んでいる10個の商品から、お探しのものを選んでくださいと。でもそれだけでは満足できないひともいる。11個目はどこいったんだ。12個目は無いのかよっていいたい」という発言に激しく同意する自分は、この状況が寂しくってたまらないのである。


話を戻して。
ATGの仕事で特筆すべきは・・・
『尼僧ヨアンナ』(61)、『去年マリエンバートで』(60)、『かくも長き不在』(60)などの外国映画の配給、
『とべない沈黙』(66)、『人間蒸発』(67)、『絞死刑』(68)、『肉弾』(68)、『心中天網島』(69)、『少年』(69)、『エロス+虐殺』(66)、『書を捨てよ町へ出よう』(71)、『天使の恍惚』(71)、『祭りの準備』(75)などの映画制作である。

そのなかの横綱は、やっぱり篠田正浩の『心中天網島』(トップ画像)とオオシマの『絞死刑』(文末動画)か。

おさん・小春の二役を演じた岩下志麻が恐ろしいほど美しい『心中天網島』は、篠田正浩の映画で最も野心的であり、個人的には篠田映画の最高傑作だと思っている。
人形浄瑠璃の表現形式をそのまま持ち込んだ独特な演出スタイルは、表現に理解を示すATGの協力なしでは、発表出来なかったかもしれない。

『絞死刑』は、自分の生涯の10本に必ず入る作品。
死刑制度の是非についてはいろんな意見があるだろうが、オオシマは「それを執行するのが、なぜ国家なんだ」という「一点の怒り」だけで、この物語を創り上げた。

生き返った? 死刑囚Rに、自身の犯罪を思い出させる中盤までは笑って観ていられるが、Rの精神世界を描く後半は、もうワケが分からない。分からないが、なぜかスクリーンから目が離せない。

反体制・・・しかも、難解であっても基本的には表現者に寄り添うという監督至上主義を貫いてくれるATGの存在は、彼らにとってどれだけ救い・励みになったろうか。





あすのしりとりは・・・
あーとしあたーぎる「ど」→「ど」なるど・さざーらんど。

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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

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3 コメント

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岩下志麻さん (夢見)
2012-11-26 13:44:15
肌の下の女の情念
流れる血さえ感じさせる演技

現在も崩れず美しくいるー

対談などでは「自転車で その辺走ってますよ」明るく笑い 意外なまでに ざっくばらん

着物姿はたとえようもなく優美

ため息ついて眺めております
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夏の妹 (oyajisann)
2012-11-26 16:34:40
作品初めて観たのは友人が栗田ひろみのファンで観に行った「夏の妹」
その後、股旅やキャロル観たような記憶あります。
当時はガキでしたので、別にATGって意識はしてませんでした。
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なんか怖い (sigsig)
2012-11-26 20:06:13
死刑ものって触れられない思いがあって。
そこにある現実なのに。
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