僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 長池の話し…①

2009年05月01日 | ケータイ小説「パトスと…」
黒ホッピーからグレープ生搾りへそして青汁サワーになった頃、長池が真面目な顔で話し始めた。

「崖下のおやじが死んじまってさ」
「崖下って長池がバイトしてた問屋の?」

「うん、中学の時からな。高校の時もずっと。会社も世話してくれた」
「俺も一回会ったことあるけど、あの社長だろ?」

「そうそう、あのおやじが言ってたことが何だか今頃になってありがたくてさ」
「今どきない人だったよな」

「おやじはさ、いいかお前、俺の話聞いてっかって言いながら話すんだけどさ…」


長池は皿に置かれた、まだ煙の出ている串焼きに味噌を塗りながら話しを続けた。

肉が食いたい時には金が無いんだ。
だけどよ好きな時に食えるほどの経済力が備わった時にはもうそんなに肉を食いたいと思わなねぇんだな。

俺はまだ駆け出しの頃親方がよく飯をおごってくれてな。
お前は若いんだから肉を食え、って言ってステーキやらトンカツなんか注文する。自分はこっちの方がいいと言って、天ぷら蕎麦とかサバ味噌だ。

「お兄ちゃんの飯、大盛りでな」と勝手に決める。

俺はよ、大盛り食べるほどお腹が空いていない時もあったけど、無理やり食べた。一粒でも残したら申し訳ないような気がしてな、一生懸命食べたんだ。添えてあるキャベツもパセリも、かかっていたタレもポテトの切れ端で拭うようにして最後はきれいなお皿にした。

そんでな、
最後に「あーうまかった!」と言った。

それが親方へのお礼の言葉なんだよ。「ご馳走様でした」何となく恥ずかしくて小さな声だったけどな「あーうまかった!」はいつもでかい声で言ったもんだ。

親方は満足げだったさ。











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