僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 その男に

2009年05月07日 | ケータイ小説「パトスと…」
長池は真っ赤な顔でマッコリを追加した。
辰雄もついでにチューハイのお代わりを頼んだ。

焼き鳥の串はもう30本を超えている。


「わかった!金はやるから、お客さんと女にはかまわないでください!って言ったんだよ。イラン人に通じたかどうか分かんないけどな。札を出すと奪い取ってさ、引き出しの中確かめて、それ以上金が無いと思ってか黙って出て行った。金は30万くらいあったかな?でもそいつ、受付の男だよ、本当に偉い!」


たっぷりと辛子味噌を塗った焼き鳥をなおも食べ続けながら、油だらけの口で話し続ける。


「それから俺にさ、『お客さんスミマセン今日はすぐにお帰りになってください、関わらない方がいいですから』って言うんだよ。警察呼ぶのか店のオーナーに知らせるのか分からないけどな。すごいだろ?俺ホントはちょっとびびってたんだけどさ、その一言、感心したね。風俗の受付ってアホみたいな奴が多いけど、あいつはプロだね。筋が通ってる。そう思うだろ?辰雄」


「はーいお代わり、お待ちどおさまでーす」
2つのジョッキは向きを整えカウンターに丁寧に置かれた。

事件を思い出したのか、一人でうなずき最後の一口を飲み干す長池。

辰雄は2つきちんと並んだジョッキの一方にに手を伸ばし待った。

いつまでもジョッキを置かない長池を、はっぴの女の子がちょっと困った顔で見つめている。

辰雄は置かれたままのマッコリに、炭酸の弾けるジョッキを軽く当てた。


「うん、その男に乾杯!」










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