僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

あな…③

2014年11月11日 | ケータイ小説「パトスと…」









「穴を掘るのが特技なのか」
ヒゲだるまが馬鹿にして笑っている





小池君はさっきからずっと下を向いたまま両手を静かに動かしている




辰雄は藤田みちこをみた
視線の先で小さくうなずくと藤田みちこは
どこにそんな勇気を秘めていたのかと驚くほどの声で
みんなに問いかけた


「知ってる人、いるでしょう?」


ざわついた教室のあちこちで
「おれ、見たことある」
「そういえばそうよね」と
ささやく声がする



「静かにしろ!」

ヒゲだるまが怒鳴った時
どかんっと大きな音がして、
一瞬の後、ヒゲだるまが消えた





小池君は両手をひろげ前に突き出していた




ざわついていた教室が静まりかえり
何が起こったのか判断できないみんなの目がヒゲだるまの姿を探した



辰雄には分かっていた
小池君はさっきから穴を掘っていたのだ

藤田みちこにも分かっていた
小池君は上手に穴を掘っていたのだ


それはそれは素敵で完璧な穴だ。























コメント
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