ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

研究・技術計画学会主催「日本産業再興のための戦略的な技術経営」を拝聴しました

2011年07月23日 | イノベーション
 研究・技術計画学会が開催したシンポジウム「日本産業再興のための戦略的な技術経営」を拝聴しました。7月23日午後に東京都港区の政策研究大学院大学で開催されました。

 特別講演として東北イノベーションキャピタル(仙台市)の熊谷巧代表取締役社長が「東日本大震災からの復興と新産業創造」を講演しました。同社は仮称「東北リバイバルファンド」という投資ファンドを用意しているとのことでした。

 特別講演は合計4件です。その中で、東京工業大学大学院経営工学専攻の圓川隆夫教授が講演した「日本産業復興のための戦略的な技術経営」で展開されたサプライチェーン・マネジメント(SCM)強化のお話が印象に残りました。3月11日の東日本大震災によって、日本の製造業は必要な材料や部品をしっかり入手するサプライチェーン・マネジメントの混乱が話題になったが、「実は元々、日本の企業はサプライチェーン・マネジメントに弱みを持っており、その克服ができていなかった」と指摘されました。



 サプライチェーン・マネジメントは「キャッシュフロー最大化のためのリスクマネジメントであるのに、日本企業の多くがその構築に成功していないために、事業収益を上げられない状況に陥っていた」と解説されます。日本企業のサプライチェーン・マネジメント構築の不十分さが弱点になっていたそうです。

 日本企業はこれまではたゆまぬカイゼン活動などによって、「故障ゼロ、不良ゼロを達成してきた」と指摘されます。 日本のモノづくりは「故障ゼロ、不良ゼロという変動を認めないという理想的な態勢を目指してきた そうです。これが事実上は品質過剰になっていると解説されます。これに対して、欧米などの企業は「変動を認めた上で、バッファリングを図る態勢を取り、成功している」と説明されます。

 その態勢づくりには、Factory Physics(生産科学) に基づく理論を採用し、科学的なアプローチを採用したそうです。これによって、バーチャルリソースの活用という解決策を導入したと指摘されます。この中身はかなり難しいので省略します。



 日本企業の多くは東日本大震災以降は「大震災のような大危機に備えて、材料や部品、製品などの在庫を過剰に持つという短絡的な解決法を検討しているが、これは経営を悪化させる単純な対処法」と指摘します。

 「日本企業の多くはサプライチェーン・マネジメント全体の見える化ができていなかった」と指摘され、「大震災の被災にかかわらず、この日本企業の弱点克服が重要」と説明します。日本企業の多くは現場の対応能力が高いために、現場部門だよりのIT(情報技術)を活用したサプライチェーン・マネジメントは構築できたが、物流の効率化に留まっていて、経営の高度化にはなっていなかったと分析されます。

 情報技術活用力はあっても、企業全体のサプライチェーン・マネジメント組織力は高くないという日本企業独特の問題が表面化しているそうです。実際には、情報技術活用の投資は、経営成果に結びつくサプライチェーン・マネジメント組織力ができてはじめて有効になると説明されます。つまり、日本企業は製品だけではなく経済文化も“ガラパゴス化”し、過剰品質と高コスト体制に陥っていると指摘されます。このサプライチェーン・マネジメント組織力の有無は、「サプライチェーン・マネジメントの最適化を実行できる責任権限を持つ組織をつくれるかどうかにある」と解説されます。

 東日本大震災をきっかけにしたサプライチェーン・マネジメントの再構築が、日本企業の弱点克服の契機になれば、不幸中の幸いになるようです。アジア市場などを見据えたグローバルなサプライチェーン・マネジメントは科学的なサプライチェーン・マネジメント理論を学ぶことが重要になるそうです。