ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

朝日新聞紙のコラムのオピニオンに載った「攻めの農業でいいのか」を拝読しました

2013年05月20日 | 日記
 2013年5月16日に発行された朝日新聞紙朝刊の中面に掲載されたオピニオンというコラムに載った「攻めの農業でいいのか」という意見記事を読んで考えました。

 このオピニオンというコラムは2013年の参議院選挙向けに、“識者”の意見を載せるもののようです。今回は、農民作家の山下惣一(そういち)さんがTPP(環太平洋経済連携協定)に対して反対する農業従事者としての立場から意見を述べています。



 佐賀県唐津市郊外の棚田などで農業に従事する山下さんは、「自分たちのような小規模農家は農業生産を楽しんでいる」といいます。市場原理とは違う土俵で、農家としての生産を続け、自分なりの“相撲”をとるように仕事をしたいと主張します。

 小規模農家は1年間を通して、無収入の期間ができるだけ無いように、多品目(多品種)の農作物を低コストでつくり、農業生産者と消費者をつなぐ、小さなコミュニティーを築くことに智恵を絞ってきたとの工夫を語ります。「地産地消」という小さなコミュニティーによって、農業による収益を成り立たせてきたと主張します。

 安倍晋三内閣が進めるTPPによって、これまで政府のいうことを聞いて、太規模農業を実践してきた米(こめ)農家や酪農家の方が、米国などの巨大穀物農家や豪州(オーストラリア)の大農場との激しい競争にさらされ、厳しい経営状態になるだろうと予想しています。

 TPPに後から参入する日本は、農産物を関税撤廃の例外品目にしようと必死ですが、これがどうなるのかはなかなか微妙です。原則上は、日本の大規模な農業組織は市場原理にさらされます。

 山下さんは農業“製品”は工業製品と異なり、市場原理には単純にはのらない存在だといいます。「自然を相手にする農業は(事業規模などを)成長させてはいけない」とまでいい、毎年同じように収穫できる、自然と一体になった仕事の仕方に喜びを感じる農業を続けたいといいます。

 以上の山下さんのような小規模農家の主張を、現政権はどう考えているのか興味は尽きません。

 TPPに参加し原則、関税を撤廃する市場原理を基本とするだけに、日本の農業は農業法人などの企業経営による大規模農業を取り入れる一方、山下さんたちのような小規模農家が地元で好きなように「地産地消」で生きていく道も残すやり方があるのではと感じます。

 企業経営による大規模農業はトマトやリンゴ、ミカンなどの単一農作物を“工場”のように大規模に高品質でつくって、国内市場と海外市場に向けて販売することになります。あるいは、その加工品を海外で販売します。オランダのように、トマトや花を海外市場向けの商品作物に仕上げて生産することになります。安倍首相は輸出することで、規模を拡大し、利益を上げるという構図を主張しています。

 その一方で、企業経営による大規模農業は、従来のように日本各地での季節ごとの野菜や果物などを小規模でつくる訳ではありません。この仕事は従来通りに日本の小規模農家群が受け持つことになります。各地にできた道の駅などで、農家が採り立ての季節の野菜や果物などを直接、消費者に販売するやり方です。

 今回、小規模農家の代表としての山下さんは、地域に農家と消費者が混在する「地産地消」の強さを伝え、日本の農業の将来像を探ります。小規模農家の後継者問題をどうするかが一番の課題のようです。

 また、都市近郊では年金生活者である都市住民の多くが週末農業を楽しむことで、普通の人がプライベート農業に従事する未来像も提示しています。この週末農業も、その巨大な集積度によっては新しい可能性を示しそうです。