東野圭吾さんの最新刊「ラプラスの魔女」を一気に読み終えました

　人気ミステリー作家の東野圭吾さんの最新刊「ラプラスの魔女」を一気に読みました。そして、すぐに再読しました。

　この単行本は、2015年5月15日に角川書店から発行され、その直後から、東京都内の大手書店の目立つ場所では、この単行本は平積みで展示され、販売されていました。東野さんの最新刊は「初刷りはいくらか」がいつも気になります。



　この単行本の中身を、実は、ここではあまり明らかにできません。このミステリー小説は、SF（空想科学）小説要素が強いものです。そして、そのSF的な要素が小説の骨格構造を決めています。このSF的な要素は、今回の最新刊に対する、東野圭吾さんのファンの賛否が分かれる理由です。東野圭吾さんがこれまでに書いた多彩なミステリー小説のどんなものが好ききかによって意見が分かれそうです。例えば、東野さんの作品の「パラドックス13」が好きなファンは、大歓迎しそうな話です。

　いくらか中身に触れます。元警官で、元警備会社社員だった武尾徹（たけおとおる）は、以前に警備会社から特殊な仕事で派遣された時に会った開明大学（かいめいだいがく）の女性から奇妙な仕事を頼まれます。当時、無職だった武尾にとっては、渡りに船の話でした。

　その仕事とは、独立行政法人数理研究所の関係者である羽原円華（うはらまどか）という若い女性の警備でした。この少女の気まぐれな行動に柔軟に対応して、警備することでした。
　
　警備の武尾は物語の進行役の一人です。そして円華は、この小説の準主役です。実は、真の主役は若い男性です。この人物は時々、姿を見せますが、物語の後半ぐらいから、主に登場します。
　
　このSF小説要素が強いミステリー小説の前半部は、地方の鄙（ひな）びた温泉地での、硫化水素ガスによる“死亡事故”が2件続く話として進行します。感心するのは、この先どうなるのかが読めない話を、面白くぐいぐいと読ませるという東野さんの筆力です。あるいは、その内に、人気ミステリー作家の東野さんが面白いどんでん返しの話を展開するだろうという期待感で、読み続けます。
　
　たぶん半分を過ぎても、全体像は分かりません。その内に、真の悪人が登場するシーンが増え、その真の悪人への復讐劇だと、後半部分で分かります。
　
　この単行本の表題の「ラプラスの魔女」とは、“ラプラスの悪魔”という言葉から派生したものです。ラプラスの悪魔とは、 未来の決定性を論じる時に仮想された超越的存在の概念のことです。ラプラスの悪魔を具現化した人間が登場したらという仮定が、本書の肝の部分です。好みがかなり分かれるところです。
　
　一度読んだ後は、この全体像の構造を知ったうえで、読み返すことが大きな楽しみの一つです。再読途中で、ここに布石が置かれていたという解明を楽しみます。以上が、この単行本についての公表できるぎりぎりの感想です。