○ 神田教授の会社法(7版P244)では、「いくらまでの剰余金を配当として株主に分配することを認めるかという配当規制の問題は、会社債権者と株主の利害調整の問題として、会社法の会計規整のなかでのもっとも中心的な規整である。」と述べられています。
・ この考え方に従って剰余金分配規制がされていますし、違法な剰余金分配(=分配可能額を超えた場合)の返還を、債権者が株主に求める規定があります。即ち、463条2項では、「株式会社の債権者は、同項(=前項)の規定により(返還)義務を負う株主に対し、その交付を受けた金銭等の帳簿価額(当該額が当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。」と規定しています。
○ 確かに、株主への配当も債権者への支払いも、原則的にはキャッシュアウトですから、対立する面があることは否定しません。しかし、この対立するものとしての捉え方は会社を経営した事の無い人の発想と考え方で、ピントがぼけた考え方だと思います。
(1) 株主資本は、計算上の金額であり、配当の効力発生日・現実の支払日及び債権者への返済日に、現預金があるかどうかがポイントです。支払うお金が現実になければ、株主と債権者の利害調整等と言っても意味がありません。
(2) 債権者への支払いは会社存続の基本条件です。支払いをしない債務者と取引を継続する企業がどこにありますか。普通の経営者(取り込み詐欺をして逃げる前提で悪さをする経営者は別問題、これは犯罪ですからね)なら、債権者への支払いを優先します。不渡り手形等出せば終わりです。支払いのために、困って高利のビジネスローンから資金手当をして債権者に払う経営者もいます。
(3) 債権者への支払いは契約を守ると言うことです。通常は、継続的に発生します。支払い期日は守らなければなりません。即ち支払いは義務であり、この義務を果たさないと会社の存続が危険に晒されます。一方剰余金の配当は、半期毎とか1年に一回に、株主総会の承認機関の承認を取得して行います。その議案を起案するのは経営者です。経営者が起案しなければ、株主が議案提案権を行使して無理矢理行わない限り配当金の支払いは起こりません。つまり、配当の支払いは、支払わない事もできます。
(4) 株主も普通は毎期とか半期毎に、きちんと配当が支払われる事を期待します。即ち、会社の企業存続・事業継続を望んでいます。株主が、債権者への支払い等せずに自分に配当をよこせとは、常識的な株主だと言いません。
学者先生の、空理空論の議論はピントがぼけていると思います。