まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

選定業務執行取締役になぜ対外的権限が無いの

2008-03-01 00:26:46 | 商事法務

       会社法にはおかしな・ちぐはぐな規定がありますが、法36312号に定める、業務担当取締役(代表取締役以外の業務執行取締役を言います。選定業務執行取締役と呼ぶ人もいますので、以下ではその名称を使います)の規定などもその一つですね。業務執行とは何か、なぜおかしいかについては先のBlog業務執行取締役の規定は意味不明?」↓をご参照下さい。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070525

業務執行とは、一方で社内事務であり他方で社外事務ですね。対内的な業務執行のみというのは一部の管理部門を除きありません。業務執行は通常全て、対内的な執行と対外的な執行が一体として行われます。つまりコインの表裏なのです。例えば、①人事担当役員が、採用計画を社内で詰めて、対外的に採用を行い、採用通知を出す。②調達担当役員が、社内で調達品の集計を行って調達を実施し、調達担当役員の名前で発注する。③営業担当役員が、販売・マーケティング計画を社内で詰めて、マーケティングを実施、販売を行い、営業担当役員の名前で売買契約を締結するなどですね。

       学者は、選定業務執行取締役は、対内的な権限だけを持つものであり、対外的に会社を代表する機関はあくまで代表取締役(一切の行為を行う権限有り)であるとしています。委員会設置会社の場合は、執行役ですね。取締役会設置会社で言えば平取締役みたいなものですね。一応、会社との関係は委任で、取締役会決議により委任された業務執行を決定し、実行します。但し、対外的には代表権は代表執行役だけが有する。―とされています。

       では、選定業務執行取締役や執行役では無く、例えば、ただの営業部長(=使用人)の場合はどのようになるのでしょう。会社法13-14には、表見支配人等の規定があります。しかし、選定業務執行取締役や、委員会設置会社の執行役には会社の代表権はありません。

― 13条(表見支配人)

 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

 

― 14条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)

 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。(2項は省略)

 尚、15条では、物品の販売等を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなすと定めています。

       349条4項では、代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有すると定めています。しかし、選定業務執行取締役や執行役は、担当業務を対外的に執行する権限は無いと学者は言っています。14条を見て下さい。例えば営業部長は、営業行為について一切の裁判外の行為をする権限を有するとしています。取締役営業部長なら、使用人兼務という言い方もできますね。取締役の資格では無く、使用人の資格で権限がありますが、営業という業務を任された選定業務執行取締役としては、対内的な権限しかないとなります。これっておかしいと思いませんか??また、例えば常務取締役営業本部長は、(表見代表取締役の規定は適用される可能性はありますが、それは別問題)対外的な権限は無いのでしょうか?そんな馬鹿なこと無いですよね。

― あるいは、平の取締役営業本部長の下に、営業部長を置けば、14条により営業部長は営業に関する一切の(裁判外の)行為をする権限を有します。しかし、その上司の取締役営業本部長は、対内的な権限しか無いというのは如何にもおかしいですね。本来なら、代表取締役の対内的&対外的な業務執行権限の内、営業に関する権限を取締役営業本部長に授権し、更にその権限内で営業部長に授権すべきですよね。あるいは、授権された営業の業務執行権限を取締役営業本部長が、営業部長を補助者として使用し、自ら権限をもって対外的&対内的な行為をすべきですよね。

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