○ 企業価値とは何かについて、経済産業省の企業価値研究会は、定義をすることを放棄しました。各人の考え方や哲学的要素もあるからということの様です。私は、「企業の存在根拠は社会への貢献であり、価値とは現在のその貢献であり、価値の大きさとは、現在のその企業の貢献度の大きさである」と考えています。これが現在その企業の有する価値です。米国のコーポレートファイナンスで、将来のFCF(Free Cash Flow)を加重平均資本コスト(WACC)等で割り引くDCF(Discounted Cash Flow)等で言う現在価値ではありません。
○ では、私のこの貢献度という考えを基に企業価値を定量化するにはどうすれば良いのでしょうか。その算式の一例は以下です。これを付加価値倍率法と呼びたいと思います。付加価値額の計算式は、現在統一されていませんが、大体は以下ですね。
・ 「付加価値額=人件費+賃借料+ロイヤルティ+租税公課+減価償却費+営業利益等」
・ 企業価値=付加価値額x Multiple or 付加価値額の前後5年間分(過去2年、当年度及び予想可能な今後2年の金額)-5年分は一例です。力関係、世間相場で7になったりしても良いわけですね。
この付加価値額に、例えば企業の寄付金やその他、従業員関連の費用等も含めても良いかと思います。租税公課も社会貢献ですね。このへんの考え方は、私のBlog↓「企業価値とは何か?」で述べています。
http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070131
○ 企業価値あるいは買収価格としての企業のお値段という視点からの企業価値あるいは株主価値の算出には、いろんな方式がありますね。まず、「企業価値=ネットの有利子負債(有利子負債-現預金)+株式時価総額」と考える人も多くいますし、結局株式の100%である時価総額が企業の価値だという人もいますね。ともあれ、主な算出方法を上げてみると以下ぐらいでしょうか。
1) 企業の現在の財産=ストックをベースとする考え方
・ 純資産価額方式-資源会社や不動産会社などでは、これを基に考えるのも一つの考え方ですが、ソフトウェアの会社、即ち、人の知恵等を基に収益を生む会社では不適切な方式ですね。
・ 純資産+営業権方式-純資産に、例えば経常利益・純利益の3年・5年分というフローの要素を加えた、昔ながらの分かりやすい方式です。
2) 企業の収益力=キャッシュフローをベースとする考え方
・ DCF等-計算遊びの世界ですね。
・ EBITDAのmultiple方式=わかりやすい単純な方式です。
3) 上場企業の財務データと比準して算出する方式
・ 類似業種比準方式-相続税財産評価基本通達に定める方式や、それの変形方式ですね。
一株当たり配当・純資産・利益を基に算出しますね。
・ 類似会社比準方式-上記の業種を、特定の2-3の上場企業の財務データと比べて算定する方式ですね。
4) その他
・例えば、株価収益率や株価純資産倍率なども使えますし、相続税財産評価基本通達等にもありますが配当還元方式等もありますね。
○ 企業価値を考える場合、GoogleやJohnson & Johnson(J&J)等が非常に参考になります。例えばGoogleを見てみましょう。Googleは、毎年利益の1%は社会貢献活動に寄付しています。社内には無料の食べ物・飲み物が用意され、カフェ・レストランは無料、ジム設備・洗濯設備も完備、クリーニング・洗車・オイル交換(車社会の米国だから)、ヘアカット、検診等も無料との事です。従業員は、世間一般の会社と比べるととても厚遇されていますね。
・ 普通の会社なら、これらの費用を使わずに利益を増やせばそれだけ、利益やFCFを増やし企業価値が上昇すると考えます。しかし、日本の典型的な大企業、特にメーカ等については、十分ではないにしても社宅・運動施設・保養所・企業病院等も完備している等、それなりの従業員への福利厚生も行っていますし、必ずしも短期的利益至上主義だとは思いません。また逆にファンド資本主義が進んだ場合、会社の所有者が株主だとしても、株主はファンド、そのファンドは従業員の年金基金が元手ということになれば、従業員に厚遇をしても会社の所有者である株主は、結局循環的に社員が企業を所有ということになれば、それなりに納得してもらえると思います。
・ 従業員の給与レベルが業界一番とか、福利厚生等が十二分に整った会社と、そういった費用は最小限しか使わないけち会社とを比べた場合、利益だけで企業価値を算出すると、利益至上主義の会社の方が、企業価値が高くなります。これは明らかにおかしいのではないでしょうか。守銭奴の私利私欲で資金を運用している投資家の視点なら別かもしれませんが、私は、利益が多少落ち込んでも、Googleのような会社の方が企業価値は高いと思います。即ち、企業価値の増進に汗水をたらして働いている従業員に優しい企業は、そうでない会社よりも企業価値が高いと考えています。そういった企業の価値は、きちんと測定するべきだと思います。
・ 従来の企業価値の算出方法には、私の言う企業価値を織り込む発想自体が無いのではないでしょうか。これは如何なものでしょうか? 付加価値倍率法は、こういった価値を織り込むことができる算定方式だと考えます。
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