○ 会社法447条には資本金の額の減少、448条には準備金の額の減少の規定があり、449条には債権者の異議の規定がありますね。447条には以下の様に定めていますね。尚、括弧内は448条の準備金の規定です。
1項 株式会社は、資本金(準備金)の額を減少することができる。この場合は、株主総会の決議によって、①減少する資本金(準備金)の額、②減少する資本金(準備金)の額の全部又は一部を準備金(資本金)とするときは、その旨及び準備金(資本金)とする額、及び③資本金(準備金)の額の減少の効力発生日を定める。 (2項は省略)
3項 株式会社が株式の発行と同時に資本金(準備金)の額を減少する場合において、当該資本金(準備金)の額の減少の効力が生ずる日後の資本金(準備金)の額が当該日前の資本金(準備金)の額を下回らないときにおける第一項の規定の適用については、同項中「株主総会の決議」とあるのは、「取締役の決定(取締役会設置会社は、取締役会決議)」とする。
これに続いて、449条では、例外的な場合を除き、債権者保護手続きを求めています。
○ 具体例:まさる商事でも良いのですが、一応「まぬけ商事(株)」=取締役会設置会社の例を挙げましょう。公開会社の場合ですね。公開会社でない全株式譲渡制限会社は、第三者割当増資は、総会特別決議ですからね。取締役会決議で第三者割当が実施できる例です。(単位:百万円)
①H19.4.1 ②H20.3.31 ③減少・増資
資本金 300 300 150+200=350
資本準備金 200 200 50+200=250
その他利益剰余金 0 △300 0
純資産 500 200 200 + 400=600
発行済株数 500株 500株 500+1000=1500株
第三者割当増資 40万円x1000株
1株純資産 100万円 40万円 40万円
株主A 250株 250株 250株(16.7%)
株主B 250株 250株 250株(16.7%)
新株主C 1000株(66.7%)
① の時:まぬけ商事の社長・経営陣が、新規有望プロジェクトに乗り出し、大儲けしますと大言壮語を吹きます。
② の時:がばっと勝負したプロジェクトで大ちょんぼ(よくある例ですね)で3億円赤字を出しました。
③ の時:まぬけ商事の社長・経営陣は、取締役会決議で第三者割当増資を行い友人のまさる=新株主Cが、第三者割増資を引受、この会社を乗っ取り、既存株主A&Bをないがしろにする。(上の例では2/3取得ですので完全な経営支配権を確立)
○ 447条3項、448条3項により株主総会ではなく取締役会決議でできます。以下のように株主の意思を問うチャンスが無くなり、株主利益に影響を及ぼします。またこの減増資のときの債権者保護手続きは、あまり意味がないのではと思います。
1 経営者が、多額の損失を計上しました。企業価値・株主価値・1株当たり純資産あるいは株価等を大きく毀損しました。それにも拘わらず、既存株主が、経営者の経営責任を問う機会である株主総会が開催されないというのはおかしい。
2 既存株主は、第三者割当増資をされれば、持株比率が希薄化します(本件の様に減増資のみならず普通の第三者割当でも当てはまりますが)。上の様な例では経営支配権も、新規株主に奪われます。既存株主の利益に大きな影響を与えます。
3 上記②の時点では債権者保護手続きは求められません。③の時点です。純資産は、基本的には、絶えず変動する資産マイナス負債の現在額を示す計算上の金額であり、資本金・準備金に見合う現預金を会社が持っている訳ではありません。債権者にとり重要なことは、会社が支払い期日に支払う現預金があるかです。上の例では、③の時点で、②の時より資本の充実が計られ現金が入金します(現物出資の場合を除く)。にも拘わらず債権者保護手続きが求められます。この会社は、赤字を出しているから注意して取引しなさいよという警告機能にはなりますが、上のような例の時にまで、債権者にプラスになる事が行われているのに、保護手続きが必要か疑問です。
447条3項等の規定は、株主をないがしろにする規定です。数字(金額)が元に戻ればよいだろう等という発想かどうか知りませんが、ちょっと既存株主への配慮が無いのではないでしょうか。