2021年・第74回カンヌ国際映画祭のグランプリ作品『コンパートメントNo.6』を見ました。生きることのつらさをぶち破る映画でした。
おそらく30年ほど前という時代設定なのだと思われます。ウィンランドからの留学生ウララは恋人と一緒にムルマンスクのペトログリフを見に行く予定だったが、恋人が突然キャンセルして一人で旅することになる。おそらく恋人はほかのパートナーができ、二人の関係は終わったのです。ウララの旅は絶望の旅です。恋人と一緒に乗る筈だった寝台列車の部屋にロシア人の労働者リョーハが乗っています。彼は酒を飲み、ウララに粗暴で猥褻な態度で接してきます。最悪な旅になってしまいます。しかし、彼らは次第に打ち解けていきます。本音で迫るリョーハは実はまっすぐで嘘がない人間であり、人を大切にしてくれる優しい人間であることがわかってきます。
私たちは不器用です。だから人から誤解され、生きていくのは簡単ではありません。時には苦しくてしょうがない時期もあります。しかし前を向いて生きていくしかないのです。ウララの旅はそのことを確かめることができた旅になりました。
困難の中にこそ希望がある、そんな勇気をもらえる映画でした。