とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『コンパートメントNo.6』を見ました。

2023-03-26 14:36:17 | 映画
 2021年・第74回カンヌ国際映画祭のグランプリ作品『コンパートメントNo.6』を見ました。生きることのつらさをぶち破る映画でした。

 おそらく30年ほど前という時代設定なのだと思われます。ウィンランドからの留学生ウララは恋人と一緒にムルマンスクのペトログリフを見に行く予定だったが、恋人が突然キャンセルして一人で旅することになる。おそらく恋人はほかのパートナーができ、二人の関係は終わったのです。ウララの旅は絶望の旅です。恋人と一緒に乗る筈だった寝台列車の部屋にロシア人の労働者リョーハが乗っています。彼は酒を飲み、ウララに粗暴で猥褻な態度で接してきます。最悪な旅になってしまいます。しかし、彼らは次第に打ち解けていきます。本音で迫るリョーハは実はまっすぐで嘘がない人間であり、人を大切にしてくれる優しい人間であることがわかってきます。

 私たちは不器用です。だから人から誤解され、生きていくのは簡単ではありません。時には苦しくてしょうがない時期もあります。しかし前を向いて生きていくしかないのです。ウララの旅はそのことを確かめることができた旅になりました。

 困難の中にこそ希望がある、そんな勇気をもらえる映画でした。
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映画『いつかの君にもわかること』を見ました。

2023-03-25 07:35:02 | 映画
 『おみおくりの作法』の監督ウベルト・バゾリーニの作品、『いつかの君にもわかること』を見ました。淡々とした映像が感動を呼ぶ映画でした。

 不治の病を患っていて死期が迫っている父親と一人息子が二人で生活しています。父親は息子を養子縁組してくれる家族を探します。様々な家族がいて父親は悩みます。仲介役のソーシャルワーカーの献身的な努力にもかかわらず、父親の悩みは深まり、そしていよいよ体も思うようにいかなくなります。父親の苦しむ姿が胸を打ちます。

 いつか父親も息子も「死」を受け入れるようになります。息子は父の死後も父を忘れることなく、大人になっても父親とつながり続ける、そう見ている人は感じます。父親が選んだ受け入れ家族も、心の痛みがわかり、父親の気持ちがわかる人だったと思います。

 余計な説明はありません。説明は登場人物を描写する映像によってなされます。だからこそ見ている人の心に直接に響きます。

 とてもいい映画でした。

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『ヒトラーのための虐殺会議』を見ました。

2023-03-14 05:45:34 | 映画
 第2次世界大戦時、ナチス政権が1100万人のユダヤ人絶滅政策を決定した「バンゼー会議」の全貌を描く映画『ヒトラーのための虐殺会議』を見ました。権力の圧力は民主的な会議が「忖度」会議になってしまうことを分からせてくれます。今の日本の状況を考える上でも重要な映画です。

 ナチス政権はユダヤ人を絶滅させる計画をたてます。それを会議で決めていくのですが、一部ではその方針について異論を唱えるものもいます。法律の解釈を変更することへの反論を堂々と主張します。観客はこの男に期待します。しかしそれは人道的な意味でも正義のためでもなく、より効率のいい方法を提案しているにすぎなかったことに気付きます。結局はヒトラーに逆らう気持ちなどまるでありません。自分の存在意義を示しただけだったのです。

 おそらく現在の会議というものはそういうものなのでしょう。方向性がすでに決まっているからこそ会議は行われるのです。日本の会議をみていると、もはや会議は報告会でしかありません。もめることさえなくなりました。

 安倍政権以来、官僚もマスコミも権力におもねるようになりました。最近話題になっている、総務省の放送法の解釈変更のニュースもそれを裏打ちします。権力者に忖度する現在の姿はナチスに近づきつつあるのではないかと感じてしまいます。。

 私たちは言論の自由を守るために常に努力しなければいけないということを強く感じさせる映画でした。。
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映画『フェイブルマンズ』を見ました。

2023-03-06 07:39:49 | 映画
スティーヴン・スピルバーグの自伝的な作品だと言われている『フェイブルマンズ』を見ました。見事な作品でした。

映画の道を志す青年の成長を描きます。しかし彼の映像によって母親の秘密が暴かれる結果となり、家族関係が破綻してしまう結果になります。お互いに尊重しながら、離れ離れにならざるを得ない家族それぞれの心が、痛みとともに伝わってきます。決してセリフに頼ることなく、描写によって、心を描く監督の手腕が見事です。

主人公の高校時代の関係もうまく描けています。ユダヤ人であることによっていじめられるのですが、しかし映像の力で自信を回復していきます。そして映像の力で人の心を動かしていきます。努力は信念を生み、信念が道を開く。青春時代のがむしゃらに頑張ることの大切さを教えてくれます。

最期のジョンフォードと出会う場面もいい。こんな明るい希望のある終わりを加えることができるのは、さすがに経験のなせる業です。

アカデミー賞はこの作品が取ってほしいと思う作品でした。
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映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アト・ワンス』を見ました。

2023-03-05 08:26:58 | 映画
 アカデミー賞最有力候補と言われている『エブリシング・エブリウェア・オール・アト・ワンス』を見ました。残念ながら私には何がいいのかよくわからない映画でした。

 私が大学生のころ、小劇場ブームがありました。今から40年ほど前です。東京の小さな劇場で、若い人たちの劇団が公演を行っていました。難解でありながら、感動的な音楽と笑いがあり、そして若者の熱い思いを発信する演劇でした。熱い雰囲気が、役者だけでなく観客席にまで伝わり、劇場は異空間と化していました。私はそんな小劇場のブームの中にいました。

 この『エブリシング・エブリウェア・オール・アト・ワンス』はそんな小劇場演劇に似ています。話はよくわかりません。しかし、異空間に飛びながらカンフーの迫力と下品な笑い、
そして感動的な音楽が流れ、最後には「家族の再生」というテーマが浮かび上がってきます。そこに気が付いた時、ああなるほどな、という気持ちになりました。

 しかし、小劇場とこの映画の大きな違いは、映画には劇場という空間がないということです。劇場に閉じ込められているという感覚がありません。いつの間にか映像を客観視してしまい、そして遠くのものと感じてしまいます。カンフーや笑いの場面が、もっと伝わればもっとのめりこめたのかもしれませんが、残念ながらそこまでのレベルにはなっていないように私には思えました。わたしは何度かコックリと寝てしてしまいました。

 アカデミー賞を取ってしまうのかもしれませんが、そうなったらちょっと悔しいなあと思います。
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