話題の映画『存在のない子供たち』を見ました。貧しさは人を苦しめ、その中でけなげに生きていた人たちも最後には理不尽な犯罪においこまれてしまう。やるせない映画です。少年の純粋な瞳が見るものにせまってきます。
レバノンの映画ですが、レバノンがどういう国かわかりません。そこで少し調べてみました。ウィキペディアで見る限り、それほど貧しい国ではありません。ただしシリアからの難民が多いようです。つまりわりと裕福な国であり、そこにシリアからの難民が流れてきたがために貧民街が生まれてしまったということのようです。レバノンはシリア難民だけで約100万人を受け入れており、これは同国の人口の4分の1にあたるのだそうです。レバノンは寛大な国なのです。しかしそれにともなう困難も受け入れているのです。
貧民街には貧民街のルールがあり、それは弱肉強食によって成り立っています。だから弱者はがんばっても無駄です。それでも少年は必死にがんばります。
とあることから、貧しい母子と生活することになります。母は生きるために必死に方策を考えるのですが、逆に無理をしてしまい不法移民として逮捕されてしまいます。少年は残された乳児と生きていくしかありません。少年は必死に乳児の面倒を見ます。乳児の食べ物を手に入れるために行動するには乳児がじゃまです。しかし乳児を置きっぱなしにすると乳児は追いかけてきてどこに行くかわかりません。少年はどうしていいかわかりません。カメラは少年と乳児をじっと追い続けます。この場面はこころに残ります。
少年の純粋なまなざしは胸に迫ります。少年時代の純粋な心は見るものに純粋な正義感を刺激します。だからこそ生き抜くためにが犯罪に追い込まれたときに、悲しさと悔しさを感じずにいられません。
本当にやるせない映画です。そしてすばらしい映画でした。