大都会で格差の中で生きる弱者の不条理を描く映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』を見ました。厳しい現実を描きながらも、したたかに生きていくおおらかさも感じられる映画でした。
ニューヨークで不法移民として暮らす母と二人の息子。貧乏な生活をしながらもなんとか生きています。母はウェイトレスの仕事をしながら2人の息子を1人で育て、息子たちも配達員として家計を支えている。息子たちは自分を“透明人間”だと言います。居ても居なくとも同じような存在だと考えてしまうのです。その2人が、英会話スクールでクリスティンという美女と出会い、恋に落ちます。一方、母親は胡散臭い男性の誘いに乗ってブリトーのデリバリーを開業します。その家族が事件に巻き込まれてしまいます。
ニューヨークにはさまざまな人種の移民が集まってきます。英語もしゃべれないような人も多くいるそうです。不法移民も多く、経済的な格差が歴然として存在します。保守層は移民を異質なものとして排除しようとします。経済的な格差だけでなく、差別が歴然と存在するような状況となっています。近年の保守化の強まりは、グローバリズムの発展と密接な関連があるのです。この保守層にトランプが人気があるわけです。世界中で愛国主義が台頭しているのは、新自由主義のグローバリズムの発展の反動なのです。
この世界的な傾向の中で弱者はさらに弱者となっていきます。しかし弱者はしたたかです。ちょっとやそっとでは負けません。本当の人生を楽しんでいるのは実は弱者のほうかもしれません。
安心安全の中で、既得権のぬるま湯の中で死ぬまで生きていられます。しかしそれが何なのでしょうか。そんな気にさせられる映画でした。