アメリカを代表する世界的音楽家レナード・バーンスタインとその妻を描く映画『マエストロ: その音楽と愛と』を見ました。夫婦の愛を描く感動作でした。
レナード・バーンスタインはアメリカの有名な作曲家であり、指揮者です。特にミュージカル『ウェストサイドストーリー』の作曲で、音楽に特に詳しくない私のような人も知る存在となっています。この映画を見ると、そのバーンスタインが、ユダヤ系であり、同性愛者であり、超ヘビースモーカーであり、薬物にも依存していたことがわかります。同時に芸術家として妥協がなく、家族を大切にして、特に妻に対する愛は真実であったことが見えてきます。奔放で人間的に魅力のある人物として描かれています。
とは言え、この映画の主役はバーンスタインよりも妻のフェリシアに感じられます。バーンスタインの魅力にほれ込み結婚したのですが、その後は、自由なバーンスタインに翻弄されます。夫婦仲はだんだん醒めていき、一時は離別します。しかし彼女はバーンスタインを忘れることができません。よりを戻します。フェリシアの心の揺れが、表情や態度によって丁寧に描かれます。フェリシアは若くしてガンに侵されます。やつれていくフェリシアを演じるキャリーマリガンの演技は見事です。
長いスパンで描くことによって、夫婦の関係は単純なものでないことが伝わってきます。複雑に絡み合った感情が、夫婦を作り上げていくということが見えてきます。
最初はテンポが速く、何がなんだかわからないうちに進行していき、最後まで耐えられるか心配だったのですが、後半になり、落ち着いてきてから、前半部分も回収されていくという構成の映画です。映画界の財産を引き継ぎ、さらに発展させた名作です。