とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

井上ひさし作『父と暮らせば』を読みました。

2020-08-19 17:26:02 | 読書
 井上ひさしさんの二人芝居『父と暮らせば』の脚本が新潮文庫に入っています。それを読みました。原子爆弾の恐ろしさを実感できる内容でありながら、そこから再生する姿が描かれています。しかしその再生は忘れることではない。しっかりと原子爆弾のことを伝えていかなければいけないのだという強いメッセージがそこにはあります。感動します。その感動は我々に行動をよびかけています。すばらしい作品です。

 主人公の美津江は、原爆が爆発した時、偶然石燈籠の陰に隠れたために命を救われた。しかし家族はみな死んでしまっている。美津江は家族や友人、みんな死んでしまっている中で自分が生きていることに負い目を感じながら生きている。そこに父親の幽霊が登場する。最初は父親が幽霊であることが観客に隠されている。だから普通の親子の会話のように聞こえる。しかし、次第に父親が幽霊であることがわかってくる。なぜ父親は美津江のところにやってくるのか。

 最後にその謎が解ける時、この芝居が一気に広がります。同時に心にずしんと重いものが落ちてきます。そして大切なものが見えてきます。

 名作です。比較的短い芝居でもあるので、こういう芝居は多くの人に見てもらいたいと思います。


 
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渡哲也さんのこと。

2020-08-17 11:29:29 | 社会
 渡哲也さんが亡くなられた。好きな役者さんでした。とても残念です。

 私にとって渡さんはなんと言っても『大都会』です。その『大都会』でも最初のシリーズ。『大都会』の最初のシリーズでは渡さんは一刑事であり、妹を大切にする影のある「兄」を演じていました。脚本が倉本聰さんで、かなり屈折したドラマでした。渡さんだからこそ演じられる役だったのではないかと思います。

 『大都会』の最初のシリーズには、犯人役で松田優作さんが出た回がありました。松田さんの陰と渡さんの陰が重なった名作だったという記憶があります。理不尽な社会に必死に耐えながら生きている姿にあこがれをいだきました。

 面倒見のよかった方だと聞きます。人を大切にした人なんだろうなと感じます。それが演技にもよく表れていました。

 ご冥福をお祈りします。
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映画『パブリック 図書館の奇跡』を見ました。

2020-08-16 07:19:25 | 映画
 映画『パブリック 図書館の奇跡』を見ました。現代の負の減少を描き、そこからの救いを模索する映画でした。楽しめました。

監督・エミリオ・エステベス
出演・エミリオ・エステベス
アレック・ボールドウィン
クリスチャン・スレーター
ジェフリー・ライト
ジェナ・マローン
テイラー・シリング

 大寒波が襲来した日のシンシナティの市図書館を占拠した約70人のホームレスと、彼らに同情した図書館職員スチュアートが巻き起こす大騒動を描きます。

 貧富の差が広がり、貧しさに住む家も失い苦しんでいる人がいる。そんな人たちは、時として生きるために問題を起こさざるを得ません。一方ではしかもそれを政治やメディアは単なる自分たちの利益のために利用することしか考えていない。問題の本質はわかりきっているのに、私欲しか考えられない情報発信者が問題をこじらせている。最近の日本もまったく同じ状況です。よくできた映画です。

 ただし、アメリカと日本の違いなのかもしれませんが、あの状況で警察が図書館に突入するしかないというのが理解できません。一般住民がすでにホームレスに同情している状況では別の解決を図るのではないかと思われるからです。それでも引けないというのがアメリカなのでしょうか。

 と思った瞬間に、今の日本だって『GoToトラベル』とか、大学入試改革とか無理矢理推し進める政策ばかりだったなと気づきました。それを考えればリアルな映画なのかもしれません。


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映画『蜂蜜と遠雷』をテレビで見ました。

2020-08-14 10:47:08 | 映画
 『蜂蜜と遠雷』は原作を読んでいて、とても感動した本でした。その映画をWOWOWで放送していたので見ました。とてもいい映画になっていました。感動しました。

監督・脚本・編集石川慶
キャスト 松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士 平田満 アンジェイ・ヒラ 斉藤由貴 鹿賀丈史

 原作は長いのですが、映画では非常にうまく省略されていました。見ていて違和感がありません。

 役者の演技は抑え気味で、セリフも多くなく、表情と音楽で表現されていきます。役者の表情が本当に物語っています。その表情によって心が揺れていくさまが描かれていきます。


 松岡茉優が最後に雨の音から母親との思い出をよみがえらせ、それによって再生していく映像はとても泣けました。

 ただひとつ、本線の演奏中に斉藤由貴が話を始めるのはさすがにあり得ない。いくら映画だからと言ってやっていいことと悪いことがある。今からでも編集しなおしてもらいたいと思いました。
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映画『ラストワルツ』を見ました

2020-08-12 14:09:09 | 映画
 ザ・バンドの解散コンサートのドキュメンタリー『ラスト・ワルツ』を見ました。これは1978年に公開された映画です。その時も見ました。そして今回3度目です。本当にいい映画です。私にとって貴重な映画です。

監督    マーティン・スコセッシ
製作    ロビー・ロバートソン
出演者  
ザ・バンド
ボブ・ディラン
ニール・ヤング
エリック・クラプトン
マディ・ウォーターズ
ヴァン・モリソン
ドクター・ジョン
ジョニ・ミッチェル
ボビー・チャールズ
ロン・ウッド
リンゴ・スター
ロニー・ホーキンズ
ポール・バターフィールド
ニール・ダイアモンド

 私はこの映画を公開されたときに地元の古い映画館で一度、大学に入学してから東京の古い映画館で一度見ています。それはもう40年ほど昔になります。ザ・バンドの良さが出ていると同時に、ロックが、もう反抗の音楽ではなくなったんだという諦念と、だからこその次への前進への意欲を描いた映画だと思っています。

 コンサートは豪華なメンバーが登場します。ひとりひとりについて思い出を語りたくなりますが、それは一日では書ききれません。みんなが1曲ずつザ・バンドと共演し、その合間にザ・バンドのオリジナル曲が演奏されます。どの曲もいい。音楽のカッコよさがすべての曲から発揮されます。

 曲の合間にザ・バンドのメンバーのインタビューが挿入されます。その最後のロビーロバートソンのセリフがいい。

「素晴らしい奴らが音楽で死んでいった。ハンク、バディ、オーティス、ジャニス、ジミ、エルヴィス…皆、壮絶な人生だ。そんな人生は不可能だ。もう降りるよ。」

 今このセリフを見ると、できすぎた映画的なセリフのように感じられるかもしれません。しかし当時とすれば本当にぎりぎりの所で生まれた言葉なのだと思います。あの時代、みんながロックに幻想を抱いていました。その幻想を幻想だと認めることができたです。幻想をぶち壊すこともロックの精神です。

 そこにロビー・ロバートソンのすごさがあり、この映画の歴史的な意義もあります。

 
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