井上ひさしさんの二人芝居『父と暮らせば』の脚本が新潮文庫に入っています。それを読みました。原子爆弾の恐ろしさを実感できる内容でありながら、そこから再生する姿が描かれています。しかしその再生は忘れることではない。しっかりと原子爆弾のことを伝えていかなければいけないのだという強いメッセージがそこにはあります。感動します。その感動は我々に行動をよびかけています。すばらしい作品です。
主人公の美津江は、原爆が爆発した時、偶然石燈籠の陰に隠れたために命を救われた。しかし家族はみな死んでしまっている。美津江は家族や友人、みんな死んでしまっている中で自分が生きていることに負い目を感じながら生きている。そこに父親の幽霊が登場する。最初は父親が幽霊であることが観客に隠されている。だから普通の親子の会話のように聞こえる。しかし、次第に父親が幽霊であることがわかってくる。なぜ父親は美津江のところにやってくるのか。
最後にその謎が解ける時、この芝居が一気に広がります。同時に心にずしんと重いものが落ちてきます。そして大切なものが見えてきます。
名作です。比較的短い芝居でもあるので、こういう芝居は多くの人に見てもらいたいと思います。