鼻濁音が消滅しつつある。
鼻濁音というのは、主にガ行鼻濁音のことを言う。ガ行音のうち語中に来る音である。ガ行鼻濁音は日本語共通語の規範的・標準的な発音と見なされてきた。しかし近年ガ行鼻濁音は消滅しつつあり、とくに若い世代はほとんどガ行鼻濁音を発音していない。
たとえば、「学校」は[gakko]と発音する。それに対して「自我」は従来[jiŋa]と発音してきた。しかし今は少なくとも若者は[jiga]と発音している。このように鼻濁音は消滅しつつあるのだ。
わたしは、自然に鼻濁音を身に付けた人間である。だから当たり前のように鼻濁音を使用している。30~40年前、「鼻濁音を使えない人が増えてきた」ということが話題になった。鼻濁音を発音させるように指導したこともある。今日、少なくとも若い世代では鼻濁音は消滅した。だれも発音していない。発音もできない。(ただし英語に[ŋ]音があるので英語では使っている。だから訓練すればできるようになる。)
これだけならばまだ大きな問題ではなかった。問題は、わたしが自然に発音するガ行鼻濁音を、生徒が聴き取れなくなってきたと言うことである。ガ行音とガ行鼻濁音を聞き分けられなくなってきたのだ。極端に言えば「じが」が「じな」に聞こえてしまっているのだ。「あの先生、発音が悪くて聞きとれない。」という評価になっていまう。
さあ、困った。私の発音は正確に伝わっているのかわからなくなってしまった。もし伝わっていないとすれば、私が直さなければいけないのだろうか。そそれともしょうがないものとすべきなのか。
こんなことで悩まされることがなんとなく腹立たしい。