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サンカンペーン陶磁の蛍光X線分析・(5:最終回)

2017-02-27 09:14:50 | 北タイ陶磁
<続き>

先の2月24日に、蛍光X線分析した資料1~5の生データと比較グラフを元素番号の順に掲載した。資料間を比較すると何やら類似性がありそうだが、それらのデータでもって類似性があると云えるのかどーか、多少なりとも疑問である。
そこでインターネットで種々検索していると、奈良文化財研究所の「広島城跡国保会館地点」なる資料が掲載されており、広島城跡から出土した砥部焼の染付陶磁と砥部・上原窯址出土の染付磁の蛍光X線分析データが掲載されていた。そのデータを編集して掲載する。
上原窯で3ないし4番目の主要成分であるカルシウムには差があり、それは1.74倍となっている。同一窯の焼物でも成分に差があることを示している。それは時間差かもしれない。
そこでサンカンペーンの鉄絵部分のデータを下に再掲する。
資料1VS5であるが珪素(Si)、カルシウム(Ca)、アルミ(Al)は大きな差がないようだが、マンガン(Mn)と鉄(Fe)には差があるようにみえる。その差はマンガンで1.55倍、鉄で1.67倍である。これは先の上原窯の染付部の成分であるカルシウムの1.74倍を下回っている。上原窯のデータは疑いようもないとすれば、この程度の差は同一窯でも起こりうることを示している。
そこでサンカンペーンの素地成分の比較表を再掲すると・・・。
素地の資料1と5を比較すると、資料1のカルシウムが資料5では検出されておらず、双方に類似性があるとは云えないが、何となくにているとも考えられる。
鉄絵成分につていて検討してきたように、資料1と5の類似性が考えられ、素地も何となく似ており、この資料1と5は兄弟関係である可能性が考えられる。
分析前には資料1と3の類似性を想定していたが結果は異なり、資料5となんとなく似ている。資料5はそれ以外の盤と全く別の成分がでるとも想定していた。それは低火度顔料のPbが検出されれば、後絵の可能性が高くなるが、それは全く検出されなかった。
よって、資料5は鉄絵描線の濃淡、所によってダミをみせたり滲んでおり、外見上も後絵の可能性は低いと思っていたが、今回の分析でその考え方を補強するデータを得られた意義は大きい。
幸いにもサンカンペーン・ワット・チェーンセーン窯址で表採した、鉄絵の陶片をそれなりの数量保存しているので、その鉄絵部分を分析にかけ、それぞれの成分がどの程度バラツキをもつのか確認したいと考えている。
この種のデーター数が増加すると、パヤオ間と混同の多い印花双魚文盤の産地同定の重要資料になると考える。その印花双魚文盤は5点ほどコレクションしており、将来分析にかけたいと考えている。

                                   <了>