チェンマイで発刊されている無料・日本語情報誌”CHAO"377号に寄稿した。12月25日の発刊で今年最後となり、個人的には印象に残りそうだ。今回で4回目の寄稿で『ランナー古陶磁の窯址を巡る・パヤオ窯址編』との特集である。
北タイ陶磁で中国・龍泉窯の青磁貼花双魚文盤の影響を受けたであろう陶磁を焼成したのは、パヤオとサンカンペーン及びナーンの各窯である。そのことは各地の東南アジア陶磁展や常設展で比較展示されており、理解しやすいと考えている。その一例であるバンコク大学東南アジア陶磁館の比較展示を紹介しておく。
左がサンカンペーン褐釉印花双魚文盤、右が龍泉窯青磁貼花双魚文盤である。成るほど類縁関係を感じさせる展示ではあるが個人的には、この比較展示には多少不満が在る。
龍泉窯の盤の影響を最初に受けたのはパヤオが先と考えていることによる。パヤオとサンカンペーンの操業開始は、C-14年代測定法により双方13世紀末とでているが、Data上ではパヤオが10-20年早い。かつパヤオの双魚文様は龍泉の文様に極似している。その写真がCHAO377号の表紙を飾る盤である。尾鰭が背側に反りあがる点、鱗が円形である点は双方共通している。しかし更に極似する陶片がパヤオには存在する。
この陶片はタイ語書籍に紹介されている凹版の印花文である。龍泉は貼花文で双魚は盛り上がっている。パヤオのそれは印花文ではあるが、凹版であるので貼花のように盛り上がって見える。鱗は三日月であるが、尾鰭は反りあがっている。以上2点の写真をみると龍泉の影響以外の何物でもなさそうである。
元朝の南下は怒涛の勢いで、多くの陶工が難を逃れて南下したことが考えられる。安南や雲南に逃れ、遂には八百息婦(ランナー王国:息は正式には女偏に息)に至ったと想定している。
<了>