ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

上野尻ダム

2017-07-05 22:13:29 | 福島県
2016年6月19日 上野尻ダム
2017年6月24日
 
上野尻ダムは福島県耶麻郡西会津町上野尻の阿賀野川(福島県内では阿賀川)本流にある東北電力の発電用重力式コンクリートダムで、1958年(昭和33年)に東北電力によって建設されました。
運用当初は上野尻発電所で最大5万2000キロワットの発電を行っていましたが、2002年(平成14年)には最大出力1万3500キロワットの第二上野尻発電所が増設され、併せて6万5500キロワットの発電を行っています。
増設された第二発電所では水力発電としては世界で初めて立軸バブル水車が採用されています。
 
ダムの天端が県道338号線の柴崎橋となっているので、県道338号線を辿れば黙っていてもダムに到着します。
ダムの下流から
実はダムの下流側の撮影ポイントは限られています。この写真を撮った場所も関係者以外立ち入り禁止エリアでしたが、たまたま草刈りをされていた職員の方の許可を得て撮影しました。
 
右岸上流側から
こちらは公園になっていて春には桜が咲き誇るそうです。
左岸側2門だけが自由越流式でゲートがありません。
 
発電所の上のガントリークレーン。
 
取水口の手前に網場を兼ねた桟橋があります。
インクラインの代わりに桟橋を使うのは阿賀野川流域の東北電力のダムではよくみられる光景です。
 
天端は県道338号線の柴崎橋となっており、そこそこ交通量があります。
ゲート部分は歩車分離になっています。
鉄骨トラスのゲートピアに被覆された管理橋が設置されるのは東北電力はおなじみのスタイル。
 
減勢工と発電所。
減勢工のコンクリートが下流側に押し流されていますが、2011年(平成23年)7月豪雨の傷跡です。
発電所の壁面の汚れでわかるように下側の窓直下まで水が上がったそうで、あわや発電所水没の一歩手前だったそうです。
 
左岸下流側から
手前2門だけ自由越流頂になっていますが、たぶん左岸側の護岸目的でしょう。
 
よく見ると天端の下にも鉄骨トラスが見えます。
 
対岸には二つの発電所の取水口が見えます。
左は上野尻発電所、正面が第二上野尻発電所です。
 
左岸に蔦が絡まったプラント跡が残っています。
中にはベンチが置かれ良い日除けとなっていました。
 
ダムの上流には半分落橋した、旧柴崎橋の遺構が残っています。
橋への入り口は草に覆われていたので立ち寄りませんでしたが、廃墟マニアの間では有名な橋だそうです。
 
0495 上野尻ダム(0470)
福島県耶麻郡西会津町大字上野尻
北緯37度37分55秒,東経139度37分53秒
阿賀野川水系阿賀野川
30メートル
190メートル
12370千㎥/2802千㎥
東北電力(株)
1958年
◎治水協定が締結されたダム

鹿瀬ダム

2017-07-05 12:26:00 | 新潟県
2016年6月11日 鹿瀬ダム
2017年6月24日
 
鹿瀬ダムは新潟県東蒲原郡阿賀町鹿瀬の阿賀野川本流にある東北電力の発電用重力式コンクリートダムです。
長野県の千曲川や高瀬川で水力発電を行い、化学工業にも参入していた東信電気は豊富な水量と急流が続く阿賀野川に着目、専務の森矗昶の指揮の下、1928年(昭和3年)に竣工したのが鹿瀬ダムです。
鹿瀬ダムは阿賀野川本流に最初に建設されたコンクリートダムで、1924年(大正13年)に大同電力が木曾川に建設した大井ダムを参考に半川締切工法を採用、着工からわずか1年余りで竣工しました。
運用開始当初は鹿瀬発電所で最大4万8000キロワットの発電を行っていました。
その後日本発送電により接収され戦後の電力分割民営化で東北電力が事業継承しました。
鹿瀬発電所は最大出力4万9500キロワットに増強される一方、1973年(昭和48年)にダム左岸に最大出力5万5000キロワットの鹿瀬第二発電所が新設され、併せて10万4500キロワットの発電を行っています。
鹿瀬ダムの堤高は大井ダムに及ばないものの、20門のラジアルゲートを要する堤頂長304.2メートルは大井ダムを凌駕し、大井ダムとともに日本のダム式水力発電のパイオニア的存在となっており、その歴史的・技術的価値から近代土木遺産に選定されています。
 
津川で国道49号から離れ、阿賀野川沿いの国道459号を進むと、角神温泉の手前の高台で右手眼下にダムが見えてきます。
堤高こそ50メートルの大井ダムには及びませんが、川幅300メートルの阿賀野川を締め切る20門のラジアルゲートはまさに壮観の一言です。
コンクリート製のゲートピアと被覆された管理橋、扶壁前面に架けられた歩廊というスタイルが、こののち阿賀野川・只見川に建設される発電用ダムの標準的スタイルとなります。(2017年6月24日)
 
ズームアップ。(2017年6月24日)
 
旧道に下りると水面レベルからダムを見ることができます。
左手は第二鹿瀬発電所。

堤体をズームアップ
一門だけの放流は河川維持放流でしょうか?

下流に移動してみます。
右岸4門の下に水叩きがあります。

右端は鹿瀬発電所の余水吐のようです。
左岸の水叩きもずいぶん段差がついています。

左岸上流のダムサイトには小さな公園があり、ダム湖に沿って遊歩道が伸びています。
このカスケードはイベントの際にはライトアップされるそうです。

上流から
目の錯覚で三角の支柱が点で支えているように見えます。
 
赤崎荘から。(2017年6月24日)

実は鹿瀬ダムには知る人ぞ知る素晴らしい展望スポットがあります。
ダムの南側に赤崎山という山があり自然公園として整備されています。そしてちょうどダムを俯瞰できるポイントに東屋が作られており、『天女の川筏』と呼ばれる展望台となっています。
東屋から下を見下ろすと!!まるでジオラマのような景色が広がります。
大きく蛇行する阿賀野川とダム、そして発電所・・・
まるで空撮のようなアングルでダムを見ることができます。
 
1年後に同じ場所から
昨年は改修中だった発電所建屋が真っ白に新調されています。(2017年6月24日)

ダムと発電所をズームアップ
発電所は改修中です。
 
こちらも1年後。(2017年6月24日)
 
今や阿賀野川および支流の只見川は木曽川や大井川と並ぶ日本有数の水力発電所集積地となっていますが、その走りとなったのが鹿瀬ダムです。その威容は阿賀野川の王者といっても過言ではないでしょう。

(追記)
鹿瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0724 鹿瀬ダム(0453)
新潟県東蒲原郡阿賀町鹿瀬
阿賀野川水系阿賀野川
32.6メートル
304.2メートル
16525千㎥/2270千㎥
東北電力(株)
1928年
◎治水協定が締結されたダム

豊実ダム

2017-07-05 06:00:00 | 新潟県
2016年6月11日 豊実ダム
2017年6月24日
 
豊実ダムは新潟県東蒲原郡阿賀町豊美の阿賀野川本流にある東北電力の発電用重力式コンクリートダムです。
阿賀野川の水利権を獲得した東信電気が鹿瀬ダムの竣工翌年、1929年(昭和4年)に建設し、運用当初は最大出力4万4800キロワットの発電を行っていました。
その後日本発送電に接収されたののち、戦後の電力分割民営化により東北電力が事業継承しました。
1975年(昭和50年)に最大出力5万7100キロワットの豊美第二発電所が増設、さらに2013年(平成25年)には豊美発電所の最大出力を6万1800キロワットに増強、併せて11万8900キロワットの最大出力を誇っています。
ダムは堤体を中心に竣工当時の姿をとどめその歴史的・技術的価値から近代土木遺産に選定されています。
 
鹿瀬ダムから国道459号線を上流に10キロ弱進むと、右手に豊実ダムが見えてきます。
ダム敷地への道は関係者以外通行止めのため、国道から見学するのみです。
手前の取水ゲートは豊実第二発電所のものです。
 
取水ゲートをズームアップ。
 
奥は豊実発電所
手前は第二発電所の導水路。
ゆるやかに湾曲した導水路ですが、草が邪魔で全景を撮影できません。(2017年6月24日)
 
豊実発電所をズームアップ、2013年(平成25年)に増強された建屋は真っ白に新調されています。
発電所の左側は余水吐でしょうか?
発電所を回り込むように魚道がつくられています。


下流にある変電所脇から
左岸の水叩きはずいぶん高い段差がついています。
 
 
 
九十九折れになった魚道。
ここから発電所の脇を回り込んでダム湖へと続いています。

近代土木遺産に選定された歴史のあるダムですが、国道から見学するのみでやや消化不良。
2017年4月からダムカードの配布もスタートしたので、できれば見学会などの開催があればと思うのですが・・・。

(追記)
豊実ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0725 豊実ダム(0454)
新潟県東蒲原郡阿賀町大字豊実
阿賀野川水系阿賀野川
34.2メートル
223.2メートル
18667千㎥/3100千㎥
東北電力(株)
1929年
◎治水協定が締結されたダム