ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

宇賀ダム

2017-07-27 16:56:21 | 広島県
2017年7月17日 宇賀ダム
 
宇賀ダムは広島市安佐北区安佐町久地の太田川支流高山川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化によって誕生した中国電力は、戦後の電力不足解消を目指し新たな電源開発を進めます。
太田川中流域では1925年(大正14年)に広島電気によって間野平発電所が建設され戦後中国電力が事業を引き継いでいましたが、太田川上流の王泊ダムの嵩上げ、樽床ダムの建設などにより間野平発電所地点での河川流量が安定し新たな電源開発の余地が生まれました。
そこで中国電力は1958年(昭和33年)から間野平発電所の再開発に着手、新たな水路を敷設しその途中の調整池として1959年(昭和34年)に竣工したのが宇賀ダムです。
上流の吉ヶ瀬発電所放水路および支流の水内川で取水された水を宇賀ダムにいったん貯め込み間野平発電所に送水することで、間野平発電所の発電能力は従来の最大9000キロワットから2万4000キロワットに大幅に増強されることになりました。
その後1986年(昭和61年)にも増強され現在の間野平発電所の発電能力は最大出力2万4500キロワットとなっています。
 
太田川右岸沿いの県道177号線を西進、宇賀集落で左折南下して集落を抜けると宇賀ダムに到着します。
この間、道路の大半は隘路となるので運転には気を使いました。
左岸から下流面
錆色のラインや苔がいい具合に時代感を醸し出しています。
 
 
天端は立ち入り禁止
堤体直下に1914年(大正13年)に建設された間野平発電所への水路橋があります。
 
水路橋をズームアップ Bランクの近代土木遺産に選定されています。
この水路も間野平発電所へと向かいますが、宇賀ダムとは直接の接続はありません。
 
天端と取水ゲート
ここで取水された水も間野平発電所へと向かいます。
 
ダム湖は総貯水容量90万3000立米
いわゆる調整池です。
 
下流から
アーチ越しにダムを撮りたかったのですが、ちょっと重なってしまいました。
 
アーチの橋脚を見上げると
煉瓦とコンクリートの違いはありますが、この眺めは紛いなく碓氷第3橋梁とそっくりです。
 
ダムの下流面
継ぎ目が明確でいかにも1950年代のダムといった風情。
 
ゲートピアや操作室は独特の構造。
 
夕暮れ時の見学となりましたが、逆に夕暮れの柔らかい日差しがこのダムの風情を一段と引き立ててくれたようです。
 
追記
宇賀ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに41万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1961 宇賀ダム(1084)
広島県広島市安佐北区安佐町久地
北緯34度32分25秒,東経132度23分16秒
太田川水系高山川
31.5メートル
108メートル
903千㎥/410千㎥
中国電力(株)
1959年
◎治水協定が締結されたダム

魚切ダム

2017-07-27 15:27:17 | 広島県
2017年7月17日 魚切ダム
 
魚切ダムは広島県広島市佐伯区の八幡川水系八幡川にある広島県営の多目的重力式コンクリートダムです。
広島県佐伯区北部の東郷山から阿弥陀山に至る山域に源を発し佐伯区南部(旧五日市町)を縦断して瀬戸内海に注ぐ2級河川の八幡川流域では豪雨のたびに洪水被害が発生し、1945年(昭和20年)の枕崎台風、1951年(昭和26年)のルース台風では河口部にあたる旧五日市町中心部がほぼ全域水没するという甚大な被害が発生し抜本的な洪水対策が求められていました。
一方、高度成長期以降旧五日市町や廿日市町は広島のベッドタウンとして人口が急増、さらに都市化の進展により都市用水の需要が急拡大し、新たな水源確保が喫緊の課題となってきました。
これらの課題に対処するために広島県は八幡川上流部に多目的ダムの建設を計画、1981年(昭和56年)に竣工したのが魚切ダムです。
魚切ダムは八幡川の洪水調節、既得取水権としての灌漑用水の供給・安定した河川流量の保持、上水道用水の供給を目的とするほか中国電力魚切発電所で最大700キロワットの発電を行っています。
 
魚切ダムは県道41号沿いにありアプローチは簡単です。
まずは堤体直下へ。
クレストには2門の赤いラジアルゲートがあるほか堤体下部にコンジットゲート、写真では見えませんが右岸に利水放流設備があります。
 
左岸のダム概要モニュメント
サイコロのようです。
 
竣工記念碑。
 
下流面。
 
魚切ダムの銘板と魚釣禁止の警告板
語呂が合うかと思ったけど今一つ。
 
ダム湖(窓竜湖)は総貯水容量846万立米。
 
導流面と減勢工。
 
天端は車両通行可。
 
右岸から下流面。
 
上流面をズームアップ
2門のラジアルゲートの間にコンジットの予備ゲートが見えます
右手は取水設備。
 
1987 魚切ダム(1083)
広島県広島市佐伯区五日市町上河内
北緯34度25分36秒,東経132度19分49秒
八幡川水系八幡川
FNWP
 
79.8メートル
255メートル
8460千㎥/7860千㎥
広島県土木建築局
1981年
◎治水協定が締結されたダム

梶毛ダム

2017-07-27 13:14:22 | 広島県
2017年7月17日 梶毛ダム
 
梶毛ダムは広島市佐伯区の八幡川水系石内川右支流の梶毛川源流部にある広島県営の多目的重力式コンクリートダムです。
石内川は八幡川の主要支流で広島市西部を縦断する流路延長8.7キロの河川ですが、高度成長期より流域での宅地開発が進む一方、豪雨のたびに洪水被害が発生し抜本的な洪水対策が求められていました。
一方1989年(平成2年)から佐伯区から安佐南区にかけての丘陵地帯で広大な宅地造成を主軸とした西風新都事業が着工され、造成に伴う流出量増加のための防災調整池の設置が必要となりました。
 
このような環境の下、2008年(平成20年)に梶毛川源流部に竣工したのが梶毛ダムです。
梶毛ダムは梶毛川および石内川の洪水調節、既得取水権としての灌漑用水への補給と適正な河川流量の保持を目的とするほか、梶毛川ダムの貯水容量には『西風新都』のうち梶毛川の流域内に当たる162ヘクタール分の災害調整容量も含まれています。
つまり梶毛ダムは河川の治水と、都市開発に伴う防災調整機能を併せ持つ『地域整備ダム』となっているのです。
 
県道71号五月が丘交差点から石内バイパスに入り西進するとすぐに梶毛ダムの標識が現れます。
これに従い右折して梶毛川沿いを北上すると梶毛ダムに到着します。
右岸の管理事務所でダムカードをもらったのちダムを見学します。
上流から
取水設備は堤体にビルトインされています。
 
天端は対岸で行きどまり
親柱には枝垂れ桜の装飾。
 
ダムの説明板。
 
下流面。
 
もう少し下流から これが限界
残念ながら下流からダムを正対することはできません。
クレストには非常用洪水吐として自由越流式ゲートが並び、左岸寄りにオリフィスゲートがあります。
ダム湖対岸には西風新都のうち『セントラルシティこころ』と呼ばれる住宅街が広がっており公園も設置されています。
ただし天端越しに対岸に行くことはできません。
 
ダム湖(神原湖)は総貯水容量106万立米ですが実際はもっと小さく見えます。
湖岸に住宅やマンションが立ち並ぶ風景は余所ではあまり見られないものです。
 
減勢工
右手は利水放流設備。
 
左岸から天端
右の青い屋根が管理事務所です。
 
セントラルシティ側から俯瞰
こちらサイドにも立派な公園がありますが、これはあくまでも宅地開発による公園でダムとは接続されていません。
 
ダムをズームアップ。
 
河川の治水と防災調整池を兼ねたダムとしては今回訪問した兵庫県の長谷ダムや千葉県の矢那川ダムなどがあげられます。
 
3561 梶毛ダム(1081)
広島県広島市佐伯区石内
北緯34度26分06秒,東経132度22分37秒
八幡川水系石内川
FN
 
49メートル
170メートル
1060千㎥/930千㎥
広島県土木建築局
2008年
◎治水協定が締結されたダム

荒谷池

2017-07-27 11:34:02 | 広島県
2017年7月17日 荒谷池
 
荒谷池は広島市安佐南区上安町の太田川水系荒谷川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1917年(大正6年)竣工と記されていますが事業者についての記載はありません。
またダム便覧への写真投稿もなかったため池の実態は不明で、今回のダム訪問に当たっては国土地理院地形図でおよびグーグルの空撮写真を参考にしました。
 
県道268号線で安佐動物公園を過ぎるとすぐに右手の旧道に入ります。
小さな河川(これが荒谷川)を渡る手前(川の北側)の分岐を右手に取り、分岐した旧坂を上り詰めると荒谷池に到着します。
今回は最初に荒谷川の先(川の南側)の分岐に入ってしまい距離にして往復約3キロ、標高差約200メートルの山道を無駄に歩くことになってしまいました。
 
池の堤体はフェンスが張られ立ち入りできません。
上流面はコンクリートで補強されているので竣工以降大きな改修があったと思われますが、記念碑等が全く見当たらないため詳細は不明です。
 
 
天端
フェンスによじ登って撮影しましたが天端も立ち入り禁止。
 
左岸の洪水吐。
 
アングルを変えて。
 
この先が導流部となります。
 
総貯水容量3万立米と小さな溜池です。
 
各種警告板。
 
周辺は花崗岩で形成され、標高の割に谷は深く傾斜もきつくなっています。
なによりも荒谷という名前がこの小さな谷川の性格を表しているのでしょう。
溜池は形式上は灌漑目的の貯水池ですが現実には洪水調節の役割も併せ持っています。荒谷池も貴重な水源であるとともに荒谷の洪水を防ぐという重要な役割を持った溜池です。
 
3561 荒谷池(1081)
ため池コード
広島県広島市安佐南区上安町
太田川水系荒谷川
17.5メートル
63メートル
30千㎥/30千㎥
管理者未確認
1917年

明神ダム

2017-07-27 01:17:32 | 広島県
2017年7月17日 明神ダム
 
明神ダムは広島県広島市安佐北区可部町南原にある中国電力の発電用ロックフィルダムで、揚水式発電の南原発電所の上部調整池として1976年(昭和51年)に竣工しました。
明神ダムは下部ダムの南原ダムとの落差294メートルを利用して南原発電所で最大出力62万キロワットの揚水式発電を行っています。
 
南原ダムから県道253号線をさらに北上、県道とは名ばかりの南原渓谷の谷合の隘路を進むとやがて立ち入り禁止のゲートが・・・・
 
残念ながら明神ダムは間近でその姿を見ることは叶いません。
ただ落葉期などは周辺の登山道などからその姿を俯瞰することはできるようです。
首都圏近郊ならばそういうチャレンジもしてみるのですがさすがに広島では遠すぎる。
 
追記
明神ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに140万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1984 明神ダム
広島県広島市安佐北区南原
北緯34度35分08秒,東経132度30分18秒
太田川水系南原川
88.5メートル
402メートル
6145千㎥/5220千㎥
中国電力(株)
1976年
◎治水協定が締結されたダム