なんだかね、
私の声に反応してくれるじじさま(失礼)がいるのです。
以前同じ病室だったけんぞ~さん。
私の父と同じ昭和5年生まれ。
毎日娘さんが付き添っているのですが、
どこをどれから治療すればいいのかというぐらい、
病気を山ほど抱えております。
私の父と同じく、
短腹、わがまま、「オレが天下だ」の人だったそうですが、
9年前に奥様が突然倒れ入院、
その日から徘徊が始まり、
あとはどどどっと崩れた…
今では歩くことは勿論、
自分では何一つ出来ません。
奥様の死も知らない…
娘さんや周りの人が声を、
そう、常に声をかけているのですが、
けんぞ~さん無反応…
たまに目を開け、
痛みに反応するくらい。
同じ病室の時はそんなかんじでした。
で、先日、
車椅子に乗せられ移動中のけんぞ~さんに久しぶりに会いまして。
最近熱がちょいと下がったそうで、
調子のいい日は出来るだけベッドから離れるようにしていると。
でね、私この時初めてけんぞ~さんに声をかけてみたんです。
するとね、
固くなってうなだれたままの首を動かし、
目を開け、私の顔を見、
くしゃっと、
なんだか泣き出しそうな表情になった。
これには娘さんも療法士さんも驚き、大喜び。
で、今日、療法室でまた会った。
でもなんだかあまり調子が良くないようで…
…どうしよう、声かけていいのかな、
でも前回みたいに反応してくれなかったら娘さんがっかりするかな…
う~ん、え~い、ミラクルよ、来いっ。
娘さんと療法士さんに許可?了解?
声をかけても何とも無いか確認をいたしまして、
どっかりけんぞ~さんの車椅子の前にしゃがみこみまして、
なんだか脳天気に、
『こんにちは~っ!!調子はどうですか~~っ??』と。
するとけんぞ~さん、首を動かそうとするっ。
来た、ミラクルが来たっ。
けんぞ~さんは目を開け何度も瞬きをして、
私の顔を見ようとしているっ。
周囲にざわめきが。
…注目されると私ダメなんですわ、
次に何て声をかけていいのかわからない。
で、困ってしまって、
私を見つめるけんぞ~さんに向かって、
『見えた~?なっかなか美しいでしょ~っ』(爆) あぁ…
北島康介似の若き療法士のお兄さんの『ぷっ』を聞き逃さなかった…
もちろん、爆言だけじゃなくちゃんと話しましたから。
なんででしょね??
突然正体不明の女の呼びかけに身の危険を察知して反応したのか、
毒婦みどりの色香に誘われたのか、←また言ってるわ
いえ、
たまたまなのか、
私の声や話し方が誰かに似ているのか…
私とけんぞ~さん、周波数がばっちこなのか、
なんだ、こいつ??だったのか。
まぁわかりませんけど、
嬉しいじゃありませんか。いいこともある。
娘さん、喜んでくれまして、
次回がプレッシャーだわ(笑)。
でもね、
理学療法室にあの時結構人がいまして、
その中で注目を浴びながら大きな声でアレしましたから、
私の起こしたミラクルよりも、
私の話した言葉のほうが記憶に残ってしまうのでは…
明日から療法室の皆さん、
私を見たら心の中で『ぷっ』するのでは…うぅ、もう遅いって…