ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

The Threesom Live at 芦屋LEFT ALONE

2017年07月02日 | ライブ
【Live Information】


 芦屋を歩くのは20数年ぶり。
  
 
 市の南北を流れる宮川沿いに、美術館方面~芦屋駅~山手方面を歩いてみました。
 さすがに山手あたりに来ると、雑草までが高級!
 行きかう老若男女、みなファッション誌に載っていても不思議のない雰囲気。品があってオシャレです。
 どの家にも外車と執事とグランドピアノと大広間がありそうな(あくまで勝手な推測ですwww)、閑静な街並み。
 たまたま生まれたつきの品の良さを持ち合わせていたwからなんとかすぐ馴染むことができてよかったです。(^^;)オホホホ
 時間がなくてゆっくり見ることはできませんでしたが、市立美術館と谷崎潤一郎記念館はまた来たいです。


 
 谷崎潤一郎記念館

 
 
 芦屋市立美術館


 
 芦屋市西蔵町から宮川沿いに山手を臨む


 
 山手の岩園町にある岩園隧道の上からの眺め


 レフトアローンには初めておじゃましました。
 そして「Threesom」。
 いずれも関西の誇るトップ・ジャズ・ボーカリストである戸田裕美さん、新井雅代さん、大越理加さんの三人が一堂に会したユニットです。
 この三人が揃ってライブすることはなかなかない、貴重なステージです。
 共演するのは田中ヒロシさん、魚谷のぶまささん、志水愛さんからなる、強力なピアノ・トリオ。
 このメンバーで、しかも土曜日ならば、これは行かねばならぬ!ということで、だいぶ前からこの日はここに来ることに決めていたんです。


 
 モルタルの壁には、これまでの出演者のサインがびっしり。


 
 まずはトリオの演奏から。「But Not For Me」でライブがスタート。
 
 
 「The Threesom」は、三人のボーカリストが集ってのコーラス・ユニットではありません。それぞれが自分の持ち歌を歌い、マイクをバトンのように次に登場するボーカリストに渡す、という構成です。つまり、一晩で三度楽しいステージを味わえるというわけです。
 三人が持っている個性のちがいが、とてもはっきり見えたのが面白かったです。というより、きっと三人が自分の音楽観をナチュラルに表現した結果、それぞれの個性がすんなり伝わってきたのだと思います。
 誰もが歌っているスタンダード中のスタンダードナンバーを歌っても、ちゃーんと歌い手の味がにじみ出ていたのが、とっても楽しかった。
 実はこのお三方(プラス、今復帰に向けて頑張っている北荘桂子さん)は、ぼくが若いころからの憧れです。
 戸田さん、新井さん、大越さん(そして北荘さん)とは、ずっと以前に共演経験があるのは、ひそかな自慢です。
 みんな、ずっとずっとステージに立っていてほしいです。

 
 
 

 共演のヒロシ・トリオの演奏も素晴らしかったです。
 熟練の名手である田中ヒロシさん、魚谷のぶまささんの、関西が世界に誇るリズム隊はもちろん、いま赤丸上昇中の志水愛さんの味のあるピアノ。
 このトリオも、近い将来ぜひまた聴きたいです。


 

 
 
 
 帰る前に、岩園隧道の上からしばし夜景を眺め、いろんな余韻に浸りながら帰路についたのでありました。
 いい演奏を聴くと、なんていうか、家に早く帰って練習したくなりますね。


 
 岩園隧道の上から臨む西宮市夙川方面の夜景


 
 同じく岩園隧道の上から臨む西宮市苦楽園方面の夜景

 
 
2017.7.1 芦屋レフトアローン
「The Threesom vol.1」
 新井雅代(vocal)
 大越理加(vocal)
 戸田裕美(vocal)
 田中ヒロシ(drums)
 志水愛(piano)
 魚谷のぶまさ(bass)





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ロバータ・ガンバリーニ & ロジャー・ケラウェイ @蔭涼寺

2017年05月28日 | ライブ
【Live Information】


 ずっと以前、そう、もう15年以上も前だったか、テレビから録画した「富士通スペシャル 100ゴールド・フィンガーズ」のビデオを先輩から借りて観たことがありました。ジャズ界のトップ・ピアニスト10人を日本に呼んだ豪華なイベントで、たしか「ニューヨークからピアニストが消える日」とかなんとかいうキャッチコピーがついていたような気がします。
 10人の名手をサポートするのは、ボブ・クランショウ(bass)と、グラディ・テイト(drums)の、職人芸を誇る渋いリズム・セクションでした。


 ビデオに収められていた演奏の中でひときわ目(いや、耳かな)を奪われたのは、ジーン・ハリスとロジャー・ケラウェイの、ツイン・ピアノ・カルテットです。
 ふたりとも茶目っ気たっぷり、表情も豊かで、ジョーク好きなアメリカ人気質丸出しの、楽しさ満点の演奏でした。
 もちろん実に小気味よくスイングするとても素晴らしいサウンドだったので、ビデオで観たわずか2曲で、ロジャー・ケラウェイの名は強烈に印象に残りました。
 いつかは生で聴いてみたいと思っていましたが、まさか岡山で聴くことができるとは・・・。


 グラミー賞にもノミネートされたロバータ・ガンバリーニ(vocal)と、ジョージ・ケイブルス(piano)のデュオ・ライブが5月22日に岡山・蔭涼寺で行われる予定だったのですが、ジョージ・ケイブルスが急病(動脈瘤破裂だとか。。。)で倒れたため、急遽立てられた代役が、ロジャー・ケラウェイだったのです。



【ロバータ・ガンバリーニ】
 イタリア生まれ。母国で活動後、1998年にニューヨークへ進出。同年のセロニアス・モンク・ジャズ・ヴォーカル・コンペティションで3位入賞を果たす。
 卓越した実力で、ハービー・ハンコック、ハンク・ジョーンズ、チューチョ・ヴァルデス等、数多くの巨匠を魅了してきた。
 2007年、『イージー・トゥ・ラヴ』が、グラミー賞のベスト・ジャズ・アルバム部門にノミネートされた。
 表情豊かな歌声、強烈なスイング感、パワフルなスキャットを誇り、「ジャズ・ヴォーカルの新女王」との声も上がっている。

【ロジャー・ケラウェイ】
 ジャズ、クラシックなど幅の広い音楽性を持つ名ピアニスト。アメリカではたいへん高い評価を受けており、これまでにカーメン・マクレエ、サラ・ヴォーン、ヘレン・メリル、ベン・ウェブスター、ディジー・ガレスピー、クラーク・テリー、ソニー・ロリンズなどのジャズ・レジェンドたちと共演したほか、バーバラ・ストライザンドの主演の「スター誕生」のサントラをはじめ、ハリウッドでの映画音楽のプロデュース、トニー・ベネットの音楽監督などを務めた。富士通コンコードの「100フィンガーズ」でも何度も来日している。


 
 

 ほぼピアノ目当てで行ったライブですが、ロバータのボーカル、とっても素晴らしかった。
 「ジャズの曲を歌うボーカリスト」ではなく、正真正銘の「ジャズ・ボーカリスト」の素晴らしさ楽しさを久々に堪能しました。
 のっけからアカペラで「Over the Rainbow」。
 伴奏がなくても全然寂しくない。
 ファースト・セットでは「Oh, Lady Be Good」「Poor Butterfle 」「Lover Come Back To You」「Take the "A" Train」など、セカンド・セットではロジャー・ケラウェイのソロで4曲演奏したのち、再びロバータが登場、「It Don't Me a Thing」「Bewitched」「No More Blues」などを聴かせてくれました。
 めくるめくようなスキャットの連発。これがまたスウィングしまくりで、爽快感たっぷり。
 そして改めて感じたのは、歌詞がとても伝わってくるということです。
 英語があまり得意でないぼくにでも、ロバータが何を歌っているのかはっきりわかるんです。
 ほとんどの曲で、バース(前歌)から歌ってくれたのも嬉しかったな。
 
 
 ロジャー(ミスター・ケラウェイと言った方が良いのかも)のピアノは、あのビデオから受けた印象どおり。遊び心満載の演奏は相変わらず。
 ノッてくると右足を大きく外側に出し、指は縦横無尽に鍵盤をかけめぐり、キメた瞬間右腕を大きく上に掲げるそのポーズ、いや~エンターテイナーです。
 ではピアノは終始弾きまくっていたのかというと実はそうではなく、間の取り方がとても大胆で、動と静の対比がほれぼれするほどでした。
 たまらなくグルーヴィーな左手のフレーズや、音を小さめに弾いた時の音色の美しさなどなど、最初から最後まで夢中で聴いてしまいました。


 


 セカンド・セット終了後は熱烈なアンコールに応えての「Honeysuckle Rose」と「Fly Me to the Moon」。
 最期のロバータの挨拶「ガンバリマ~ス」も、たぶん日本での定番なのでしょうね。(^^)
 
 
 会場では、ベースの赤堀君やボーカルの矢野君と久々に言葉を交わせたのも楽しいできごとでした。
 とにかく、JAZZで、楽しい夜でした。




 
 
 「富士通スペシャル 100ゴールド・フィンガーズ」のビデオで観た、ロジャー・ケラウェイの演奏。5分23秒からの「Splanky」がとても好きです。
 ロジャー・ケラウェイ(piano)、ジーン・ハリス(piano)、ボブ・クランショウ(bass)、グラディ・テイト(drums)





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Duo Bleu @蔭涼寺

2017年04月06日 | ライブ
【Live Information】 
 
 
 年度が替わって間もない4月4日、押し寄せてくる仕事の波にどうにか区切りをつけて向かった蔭涼寺。
 ドラマーの中のドラマー、いやミュージシャンの中のミュージシャン、と言ったほうがいいのかもしれない村上"ポンタ"秀一さんと、6弦ベースを駆使する服部龍生さんのライブです。


 ベースとドラムのデュオ、というと、バンドの「リズム・セクションだけを抜き出したもの」だと思ってしまってもムリはないです。
 しかしこのデュオは、リズム楽器としてのベースとドラムを聴く(または見る)つもりで行くと、大きく期待を裏切られるでしょう。
 ライブは、全編にわたって、ベースが奏でる「歌」と、ドラムが奏でる(叩く、ではないと思う)「歌」に満ちていました。
 曲は、すべて服部さんのオリジナル。無国籍な感じもすれば、どこかフランスあたりの香りもしていたような気がします。
 聴き手が自由にイメージを膨らませることができる曲ばかりだったように思います。


   
 

 MCでは、ポンタさんが語ってくれた、1970年代の日本のポピュラー音楽界「ウラ話的」ヒストリーが、抱腹絶倒かつ非常に興味深かったです。
 
 
 アンコール前の服部さんのMCは印象に残りました。
「今夜のこの顔ぶれは二度と集まることはない。誰かが欠け誰かが増えることはあっても。だから今夜のこの顔ぶれが集まったのは奇跡なんだと思う。それだけで自然に感謝の気持ちが生まれる」。
 

   
 

 そして、アンコールとして演奏された「この世界にあなたがいてくれてよかった」的なタイトルの曲(覚えられなかった・・・汗)ですが、心底感動しました。
 美しく、優しく、そして力強かった。
 一音たりとも聴き逃したくなかった。
 ずっと聴いていたかった。
 曲が終わってほしくなかったです。
 

   
 

 それにしてもポンタさん、神聖なお寺でのMCで「オッ〇イ」「チ〇コ」を1回ずつ口走ったのはさすがですwww (^^)ゞ

 

 


 2017年4月4日(火)
 Duo Bleu @岡山蔭涼寺
 
〈Duo Bleu〉
  服部龍生(6strings bass)
  村上 "ポンタ" 秀一(drums)





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吉田秀×長坂拓己 @岡山ルネスホール

2017年03月18日 | ライブ
【Live Information】


 昨夜は岡山ルネスホール。
 クラシックのコンサートです。
 出演するのは、NHK交響楽団首席コントラバス奏者の、吉田秀さん。
 共演するのは、地元の作陽音大出身のホープふたり、長坂拓己(violin)さんと角田奈名子(piano)さん。
 バーチュオーゾ吉田さんに若手が挑む、という構図かと思いきや、曲が進むごとに音はより調和に向かう感じで、とても雰囲気の良いコンサートになりました。
 吉田さんの演奏は、「若手の挑戦を受けて立つ」的な大上段なものではなく、温かくも真剣な、「一緒に作り上げていこう」感のあるジェントルなものだと思いました。


 

 
 昨夜、聴きながらなんとなく感じていたのは、「アンサンブルって単なる足し算ではない」ということ。
 大勢で合奏すれば音が厚くなるというわけではないんですね。
 今夜聴いた音は、相手の音に自分を引き立ててもらい、でも相手の音を自分も引き立てている、というか(引き立てる、という言葉は適切ではないかもですが)。
 全体の音を深く意識しているというか、楽譜を音にしているのではなく、楽譜に命を吹き込んでいるというか。
 音を出すだけではなく、自分が一歩下がって音を抑えることでも音楽をより良いものにできる、というか。
 そんな音だったと思いました。
 あとでゆっくり整理して、それから自分の中で言葉にしようと思います(^^;)


 アンコールは、シューベルトの「アヴェ・マリア」でした。
 その美しさは、心が洗われるようでした。
 そのあとのビートルズ・メドレー(イエスタデイ〜ゲット・バック)も最高に楽しかったな。


 


 このコンサートは、先日お亡くなりになった音楽プロデューサー藤原憲一さんが手がけたもので、いわば憲さんの遺作です。
 このコンサートに足を運んだのは、憲さんの仕事ぶりをもうすこし体感したかったからでもありました。
 自分の表面上の好き嫌いとか、高名なミュージシャンと繋がっていることの損得とかよりも、自分の耳と感性を信じて、「良い」と思ったからプロデュースしたんだと思います。そのように感じた、素敵なコンサートでした。
 会場には、憲さんの思い出を口にする方もおおぜいいらっしゃったことを付け加えておきます。



 
 ◆2017年3月17日(金)
 
 ◆岡山ルネスホール
 
 ◆出演
  吉田 秀(contrabass)
  長坂拓己(violin)
  角田奈名子(piano)

 ◆曲目
  アルペジョーネとピアノのためのソナタ イ短調 D821 / シューベルト
  ヴァイオリンソナタ第5番 ヘ長調op.24「春」 / ベートーヴェン
  グランドデュオコンチェルタンテ / ボッテジーニ






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井上陽介カルテット@岡山ルネスホール

2017年03月07日 | ライブ
【Live Information】


現在の日本ジャズ界を代表するベーシストのひとり、井上陽介さん。


演奏中の表情はどこか俳優の吉田鋼太郎にも似ていて、そのうえエエ声。(๑˃̵ᴗ˂̵)


 


五本の指の自在な動きは、まるで指板の上を蜘蛛が這いまわっているよう。( ̄。 ̄ノ)ノ


これからは密かに、勝手に


「Spider Fingers」


と呼ぶことにしよう。
 




演奏は、もちろん楽しかった!


日本ジャズ界の俊英が集まったタレントぞろいのバンドやもん。


どこを聴いても、だれを聴いても、素晴らしかった!


さすが期待は裏切らないね(о´∀`о)


 


◆井上陽介カルテット◆
 2017年3月6日(月) 岡山ルネスホール
  井上陽介(bass)
  秋田慎治(piano)
  荻原亮(guitar)
  江藤良人(drums)


 





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コメント (2)
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MONOCHROME Live at Second Simpson

2016年12月24日 | ライブ
【Live Information】 

 
 MONOCHROME(モノクローム)
  鈴木孝紀(clarinet)
  ヤマザキタケル(piano)
  甲斐正樹(bass)
  福盛進也(drums)
 Live at Second Simpson(2016.12.21)


 「日本のクラリネット界を牽引し第一線で活躍する「鈴木孝紀」、現在日本人唯一のECMアーティストとして録音を控え欧州で躍進するドラマー「福盛進也」、その二人が中心となり結成された新プロジェクト「Monochrome」。東京を中心にあらゆる音楽シーンを席巻し続ける「ヤマザキタケル」、そして5年間の北欧での活動を終え新たな波を生み出す「甲斐正樹」の二人が加わり、この四人の日本人だけにしか表現できない超現実の空気に触れる。鈴木、福盛のオリジナルを中心に、静寂の中の混沌とした世界へと引き込まれる「Monochrome」のライヴにご期待ください」(Jazz Spot Jによるバンド紹介文より)


 
 
 
 福盛進也さんは大阪出身です。
 アメリカで研鑽を積み、いったん大阪に戻ったものの、本当にやりたい音楽を追求するためにドイツに渡りました。ドイツではミュンヘンを本拠地として、まったくつてのない状況から音楽活動を始め、あっという間に超売れっ子になりました。技量もハートも素晴らしいドラマーです。
 彼が、気心の知れたメンバーを集めて鈴木孝紀さんとともに組んだ双頭コンボが、「MONOCHROME」です。
 メンバーに言わせると、「4人ともが同じ方向を向いている」という、集まるべくして集まったバンドです。


 

 
 岡山セカンド・シンプソンでのライブの夜は、「MONOCHROME」にしか出せない、濃密なジャズの芳香が店じゅうに満ちあふれました。
 いろんな種類の音楽が行き交い、融合し、混ざりあい、昇華した、独特の雰囲気でした。
 ヨーロピアンな印象が濃いのですが、それは計算して出したものではなく、結局は、メンバーそれぞれが培ってきたものを礎にして、自由に、出したいように放った音楽だったのだと思います。
 頭の中やハートの中にまず音楽があって、それが自然に両手を伝い、楽器を通して音となってこの世に現れた、とでも言ったらいいのでしょうか。
 

  


 言うまでもなく演奏技術は4人とも素晴らしかったです。
 福盛さんの縦横無尽、伸縮自在な、圧倒的なドラム。鈴木さんのクラリネットの存在感の大きさと、表情の豊かさ。ヤマザキさんのピアノが見せる音楽観やひらめきはとても楽しく、懐が深いように思いました。甲斐さんのベースは状況に応じた柔軟なもので、自己主張しながらも、4人の音の接着剤的な存在だったように思います。
 4人はつねに互いの音を受け入れ、反応し合い、重なり合うかと思えば一歩引くことで相手を際立たせ、お互いの引き出しを開け合っていました。まさに「同じ方向を向いている」からこその、緊張感があったのではないでしょうか。


 


 郷愁を誘うメロディーが奏でられたかと思えば、正統的なジャズも聴かれ、美しい場面にじんわり浸っていたかと思えば、攻撃的かつ実験的な空気を醸し出す。バンドとしてのやりたいことがバラエティに富んでいて、音楽的な幅の広さと自由さに心惹かれました。
 気づけばとても楽しくMONOCHROMEの世界に浸っていました。


 

 
 自然体な演奏、自然な表現、それでいて磨き抜かれた音でした。
 とにかく音色と間が非常に美しかった。
 聴いているこちらも、ただただ自然に音に包まれているだけ、そしてそれが非常に心地よかったです。
バンド名はモノクロームですが、いろんな色に染まることもできる、可能性の大きさを併せ持ったユニットです。
 未来のジャズ・シーンを担って立つミュージシャンのうちの一組だと思います。
 
 
 
 

 MONOCHROME JAPAN TOUR 2016冬
 12/18(sun.) 大阪 Jazz On Top ACTⅢ
 12/19(mon.) 神戸 カフェ萬屋宗兵衛
 12/21(wed.) 岡山 BAR Second Simpson
 12/23(fri.) 名古屋 Live Doxy
 12/26(mon.) 東京 Jazz Spot J





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板橋文夫FIT!+3@岡山蔭涼寺

2016年11月06日 | ライブ
【Live Information】 


板橋文夫FIT!+3@岡山蔭涼寺
(2016.11.2)
・板橋文夫(piano)
・瀬尾高志(bass)
・竹村一哲(drums)
・類家心平(trumpet:guest)
・纐纈雅代(sax:guest)
・高岡大祐(tuba:guest)
 

 板橋文夫氏のピアニスト生活は国立音大在学中に始まりました。
 活動歴はすでに半世紀近くになりますが、より自由なアプローチで、唯一無二の音楽を発信し続けています。
 デビュー以来、渡辺貞夫クインテットや日野皓正クインテットなどに参加したり、エルビンジョーンズ(Drums)やレイアンダーソン(Trombone)のワールド・ツアーにも参加したりと、長年にわたって日本のジャズ・シーンに影響を与え続けてきました。
 現在は2010年に結成した自身のトリオ“FIT!”を中心に、多彩な活動を展開しています。


 
 

 強烈、というか、濃い、というか、深く印象に残るライブでした。
 板橋さんのピアノは何度も聴いたことがありますが、それはいずれもピアノ・トリオとして。
 トリオ以外のこういう(3管入り)フォーマットだからでしょうか、プレイヤーとしてより、バンドマスターあるいはコンダクターとしての比重が大きかった気がします。
 日本のジャズ・シーンを牽引してきた板橋さんが率いる5人の若武者、彼らが秘技秘術を尽くして音楽の場に立ち向かう、そんな印象を受けました。また彼らに自分の音楽を委ね、頼もしそうに見守る板橋さんの眼差しも心に残りました。


   
 

 ピアニストとしての板橋さんもまだまだ健在です。相変わらず熱くて、濃くて、パワフル。
 でも、叙情性の方なんだと思います。どんな破壊的な音を出そうが、奥底に必ず美しい歌を感じます。


  


 他のメンバーも素晴らしかった。
 とくにドラムスの竹村一哲さん。バンドの活力とドライブ感を増幅させる彼のドラムは、素晴らしく切れ味が鋭かった。
 そしてコントラバスの瀬尾高志さん。パワフルに、そして自由にガット弦をかき鳴らし、存在感を見せつけてくれました。
 さらにチューバの高岡大祐さん。チューバの概念を覆してくれた自由な発想と自在な演奏には目を見張らされました。
 はたまたトランペットの類家心平さん。噂はかねがね聞いていましたが、素晴らしかった。豊富な音色と独創的な歌はまさに彼独自の音楽。
 そのうえアルトサックスの纐纈雅代さん。自分の限界に挑み続けるかのようなテンションの高い演奏と個性的な表現はとても熱かった。
 
 ・・・あれま!「とくに」って言いながら結局全員の名前を挙げてしまっている!w 
 それだけ素晴らしいバンドだったということが言えるのです。


   
  

 大盛り上がりのステージが終わり、熱烈なアンコール。曲は「Isn't She Lovely」でしたが、これにはちょっと意表を突かれました。
 そしてメンバー全員が舞台裏に消え、最後に聴かせてくれたのは、板橋さんのソロ。
 このツアー中に突然亡くなった、画家の堀越千秋氏(板橋さんの新作ジャケットも手掛けた)に捧げられたものです。
 板橋さんの心象風景を綴ったような、エネルギーに満ちてはいるけれど、どことなく切ない、美しいソロでした。 


 


 3時間以上に及ぶ長丁場、あれだけ強烈な音を受け続けたらさすがに聴いてるこちらも疲れます。。。
 でもそれは、板橋を体験した心地よい疲労感であり、「客として共演」した満足感なのです(^^)b yeah!
 





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高免信喜トリオ@岡山壱番館

2016年11月03日 | ライブ
【Live Information】 


高免信喜トリオ
(2016年10月20日 岡山 喫茶壱番館)


 
 左から會川直樹(drums)、高免信喜(guitar)、棚橋俊幸(bass)
 
 
 ギタリストの高免信喜さん。
 「1977年広島市生まれ。2004年バークリー音楽大学を首席で卒業、同時に活動の拠点をニューヨークに移す。ニューヨークを中心とした演奏活動に加え、カナダやヨーロッパでのツアーも行う。また世界最大級のモントリオール国際ジャズフェスティバルなど数多くのジャズフェスティバルにも出演。欧米のメディアからも高い評価を受けている。」


 お名前だけはジャズ雑誌で目にしていましたが、未だ未聴。
 ところが、よく行く喫茶店「壱番館」で高免さんのライブがあるという。ママからも強く推されたので、聴いてみようと壱番館に行ってきました。


 気がつけば、最後までただただ夢中で聴きいっていました。
 言葉が見つからないです。素晴らしいライブ、素晴らしいギタートリオでした。
 楽しかったなあ。。。
 

 


 セットリストはほぼオリジナルでしたが、曲がこれまたいいのなんの。
 バラエティに富んだ曲調の数々で、しかもどの曲もシンプルでメロディが親しみやすい。
 妙にこねくり回していないので、ストレートに伝わってくる感じがとても心地よいのです。
 それでいて盛り上がり方は劇的で、目を(耳を)離すことができません。
 ジョン・スコフィールドを彷彿とさせる曲(Untitled Tune)でKOされ、ジャジーな「Gee Seventh Avenue」、素朴なバラードの「Homeward Bound」、フォーキーな「Wonderful Days」など、続々披露される佳曲の数々で耳はすっかり釘づけです。
 感涙のラスト・ナンバー、「Memories to Remenber」(7/4拍子の曲。原題はクロアチア語で「Sjecanja za Pamcenje」)では血が沸騰するかと思うような盛り上がりでした。


 幅広い音楽性を持つ高免さんのギターは、あまり派手ではないものの、高度な技術と豊かな歌心に満ちていて、演奏には引き込まれっぱなしです。
 元ヤクルトの古田敦也氏を思わせる風貌と素朴な雰囲気からも、親しみが感じられました。
 ベースの棚橋俊幸さんのボトムを支える安定したプレイ、ドラムスの會川直樹さんの引き出しの多さとグルーブ感も素晴らしかったです。
 アメリカで出会ったというこの三人のサウンドの絶妙なブレンド具合、とても心地良いものでした。
 聴きながら、「あ〜あ、コーフンしてまた寝られんなぁ(^_^;)」と思っていました。


 
 
 高免信喜「LIVE IN JAPAN」

 
 
 それにしても、どれだけ素晴らしいと思っているかをミュージシャンに伝えたい時って、感激のあまり自分でも何を言うてんのかわからんようになりますね(> <;)

 
 





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生活向上委員会2016@岡山ルネスホール

2016年10月07日 | ライブ
【Live Information】 


2016年10月6日 岡山ルネスホール
生活向上委員会2016 
 原田依幸(piano)
 梅津和時(alto sax, soprano sax, clarinet, bass clarinet)
 ドン・モイエ(drums, conga)



 
 
 ちかごろ、いわゆるフリー・ジャズ(フリー・インプロビゼイション、即興演奏)を行うこともままあります。
 よくわかってやっているわけではないのですが、わからないなりに心がけていることは、「相手の音をよく聴くこと。自然に相手の音を受け取り、感じたまま音を出すこと」です。
 音楽=相手との会話だとすると、会話の始まりは相手を受け入れることだと思うからです。


 「生活向上委員会」は、1980年にメジャー・デビューした、日本ジャズ史に残るグループです。原田依幸、梅津和時、早川岳晴、片山広明ら、錚々たるメンバーを擁した伝説的なバンドですが、このたび原田、梅津の両人に、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの名ドラマー、ドン・モイエが加わったトリオでツアーを行うことになる、というニュースを耳にしました。しかもそのうち10月6日は岡山公演だというのです。







 いろんな意味で難解なイメージが強いフリー・ジャズですが、あるがままのお互いを受け入れ、お互いに自然に反応しあうということにおいては、他のいろんなスタイルの音楽と全く変わらない、と思いました。
 ただただプリミティヴな感情のおもむくまま弾きまくり、叩きまくるケースもしばしばある中、当たり前のことではありますが、各々のセルフコントロール(とでもいうのかな)が素晴らしかった。決して気持ちの高ぶりに溺れることなく、お互いの音をよく聴き、メリハリのついた音を出していました。そして際立っていたのが、彼ら三人の音色の美しさです。
 それもこれも、土台となる演奏技術が卓越したものだからでしょう。



 
 
 中でも、2ndセットに突如現れたR&B系ロッカ・バラード風のアプローチの美しかったこと。この美しさを表す言葉が、いくら探しても見つかりません。
 最後の「アメイジング・グレース」も、感動ものでした。





 いろんな感じ方や答えを、聴く側も自由に見つけて構わないのだと思いました。
 そして、今夜感じたこと、思ったことが正解かどうかということが問題なのではない、とも思っています。
 とてもいい夜でした(^^)

 

 
 





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鈴木良雄 Special Trio

2016年09月20日 | ライブ


【Live Information】 


 台風の影響で雨模様だった9月19日。
 夕方になって向かったのは、岡山市にあるルネスホールでした。
 鈴木良雄スペシャル・トリオの演奏を聴くためです。





 鈴木良雄さんは、長い間日本ジャズ界を牽引してきたミュージシャンのひとりで、「チンさん」の愛称で親しまれています。
 渡辺貞夫や菊池雅章らのグループを経て渡米、スタン・ゲッツ(sax)やアート・ブレイキー(drums)のバンドのレギュラー・ベーシストとして活躍したのちに帰国、トップ・ベーシストとして日本のジャズ界に君臨してきました。
 その鈴木さんの、早稲田モダン・ジャズ研究会の後輩が、増尾好秋さんです。


 増尾さんも渡辺貞夫グループを経て渡米、ジャズ・レジェンドであるソニー・ロリンズ(sax)・グループの一員として活躍したほか、エルビン・ジョーンズのアルバムに参加したり、リー・コニッツ(sax)やロン・カーター(bass)などと共演するなど、輝かしい経歴を誇ります。


 井上信平さんは、高校卒業後に渡米、バークリー音楽院などで学んだのちニューヨークを拠点にアメリカ各地で活動を続けてきた実力派で、2001年には巨匠ハービー・マン(flute)との共演アルバムを発表しています。





 三人の活躍ぶりはもちろん知っていますが、実際に音を聴くのは初めて。
 何度ライブに足を運んでも、「どんな音なんだろう」と想像するとワクワクしてしまうのは止められないですね。
 

 会場のルネスホールは、大正時代に造られたギリシア風の建物で、1987年までは日本銀行岡山支店として使われていました。
 雰囲気のある外観で、中もゆったりとしています。
 キャパシティは最大298ですが、ホールは天井が高いせいか広々していて圧迫感もなく、居心地が良いです。







 開演予定の19時を少しまわったところで、三人が登場。
 演奏曲目は、「I Thought About You」などのスタンダードと、鈴木さんのオリジナル、増尾さんのオリジナルです。
 とてもオーソドックスな演奏でした。
 難易度の高い凝ったアレンジも多く聴かれる昨今ですが、鈴木トリオの演奏は、とりたてて高度な技術を見せつけるわけではないので、一見地味に思える部分はありますが、オーソドックスなだけにむしろ明快です。





 「Summertime」では鈴木さんがアルコでテーマを弾きましたが、その音色の美しさと衒いのない演奏は非常に強く印象に残っています。
 また、亡き旧友の思い出を語ったあとで演奏された鈴木さんのオリジナル「My Dear Friend」の美しかったことも忘れられません。
 増尾さんのオリジナルを聞いていると、情景が自然に頭の中に湧き出てきます。ストレートで親しみやすい曲ばかりだったような気がします。


 三人の演奏は、決して派手ではありませんでしたが、鈴木さんの演奏はベースの在り方をきちんと示してくださっていたし、増尾さんのギターは「これぞジャズ」だったし、井上さんのフルートのふくよかな音色は明るく楽しいものでした。
 三人の職人芸というか、いぶし銀の演奏をたっぷり味わうことができました。


 それにしても、やはり存在感がありますね。
 鈴木さんは、MCの時は優しい笑顔で語り口も紳士的ですが、いざ演奏となると顔つきがまるで厳格な将校のように、威厳があふれたものになります。
 増尾さんは終始柔和な微笑を浮かべています。増尾さんの作る曲のような、爽やかで温かい笑顔です。演奏ぶりもそんな感じでした。
 井上さんは、一番やんちゃでいたずらっぽい感じ。俳優の寺島進さんのような苦み走った渋い顔立ちですが、演奏中はとても楽しそうです。
 大人の「余裕」と、子供の「(音楽が)好き」が合わさったステージでした。
 客席からの拍手も大きく、最後は熱いアンコールもかかっていました。





 帰路へ着きながら、やはり先輩方が培ってきた技術や経験には敬意を払うべきだし、聴くという作業でサウンドを体感したり、イメージを体に取り込めるわけですから、貴重な勉強の機会にもなるということを改めて強く思いました。
 芸能の世界ですから、その時々の流行があるのは仕方ないことなのでしょうけれど、驚異的なテクニックが前面にくるライブばかりではなく、こういう味のあるステージこそ、もっと若いプレーヤーたちは聴くべきだと思います。
 といっても、かつての自分も派手なプレイにばかり気を取られていて、音楽ってそういうものじゃない、というのが分かってきたのはだいぶ後になってからでしたけどね(^^;)

 
 
 

 

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2016.8.14 西宮PIANO CLUB

2016年08月19日 | ライブ
                                      ♪西宮は夙川からジャズを発信しているPIANO CLUB


【Live Information】 

 
 すばらしいミュージシャンは、みなフォトジェニックだと思う。
 単純に「容姿が良い」ということではなく、とにかくカッコいいのである。
 それぞれのフォーム、アクション、表情、そのどれをとっても「作品」にしか見えない。
 精魂をこめ、かつ奔放に演奏するその姿は、写真におさめてもなお生き生きと輝いている。
 
 
 写真は、穏やかな笑顔のみねさん、クールな恵子さんと魚谷さん、感情むきだしの小柳さんとヒロシさん。
 でも、その内側には、みんながそれぞれ独自の炎を秘めていて、5種類の違った火柱が燃えさかっている。 
 
  
 おかげで、ちゃんとしたカメラで思う存分撮ってみたい、という欲が湧きあがっているのだが、さあどうしよう(^^)




















 
 小柳淳子(vocal)
 みね栄二郎(sax)
 岩崎恵子(piano)
 魚谷のぶまさ(bass)
 田中ヒロシ(drums)


 



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井上智 & 北川潔 ライブ@岡山蔭涼寺

2016年02月28日 | ライブ



【Live Information】 
 
 
 井上智(guitar)と北川潔(bass)は、アメリカでも長年活躍しているジャズ・ミュージシャンだ。
 井上氏がジャズ雑誌に連載していた記事は愛読していたし、北川氏は尊敬するベーシストのひとりである。もちろん面識はないが、このふたりが12年ぶりにデュオ・アルバムをリリースするという記事は、一種の親近感を持ってぼくの目に入ってきた。
 そのうえ、CDリリース記念ツアーが2月下旬からスタートするというのだが、なんとそれはぼくの住む岡山市から始まるという。
 北川氏のプレイに対しては、一歩でも近づきたいという憧れのようなものを持っているうえに、普段アメリカで生活している北川氏の日本でのライブは地域や本数が限られているので、岡山で氏のプレイが聴けるのはまさに天の配剤。ツアーのニュースを知ったのは、2月も中旬だったので、即座にライブ会場の岡山市蔭涼寺に予約の連絡を入れた。
 早く生で聴いてみたい気持ちが強かったので、ライブまでの一週間はけっこうニヤニヤして過ごしたと思う。
 
 
 会場の蔭涼寺は、建物そのものの音響が素晴らしく、内外のミュージシャンのライブがしばしば行われている。
 住職の篠原氏自らがPAとライティングを担当するのだが、極力生音の良さを生かすことをイメージしているため、音色がとても温かく聴こえる。これは、リスナーとしては嬉しいことだ。
 篠原氏は、お寺には様々な人が集まってきてかまわないし、そうあってほしい、という考えをお持ちなので、毎週のように音楽をはじめとする様々な催し物が行われていて、岡山のカルチャー・シーンにも少なからぬ影響を与えている。


 


 ライブがあったのは2月23日(火)。開演は19時30分。
 客席から見て左にギター、右がベース。
 座席は30~40ほど用意されていただろうか。
 最前列は少し恥ずかしかったので、2列目に陣取る。
 ただし、北川氏の弾く姿をしっかりと見たいので、こころもち真ん中より左に座ったが、ここが最前列の方の頭と頭の間からよく北川氏の見える、自分的な特等席だったので、ひとりでワクワクホクホクしてしまった。


  

  
 井上・北川の両氏が現れたのは、ほぼ定刻。
 小曽根真やジョン・ファディス、ケニー・バロンという、名だたるミュージシャンのベーシストを務めてきた北川氏の姿をやっと見ることができて、ぼくの心は一瞬にして温度が上がった気がする。
 子供が、憧れのプロ野球の大スターに会った時の気分って、こんなんだろうと思う。


 チューニングのあと、おもむろに北川氏がミディアム・テンポでイントロを弾き始める。ゴキゲンにスウィングするベースに井上氏のギターが乗ってきて奏でられ始めたのは、「The Surrey With The Fringe On Top(飾りのついた四輪馬車)」。
 レイドバックした雰囲気で、ブルージーに、どことなくユーモラスに曲は進んでゆく。


  

 
 ライブは、井上&北川デュオのCDリリース・ツアーなので、セット・リストは当然ニュー・アルバム「Second Round」から。それに加えて「Waltz New」「No More Blues」を聴かせてくれた。
 
  
 ふたりとも関西の出身で、付き合いは30年以上。渡米してからの年月も、ふたりとも25年以上になるという。
 長年のキャリアの影響もあるのだろう、気負ったところもなく、ふたりの間の楽器による意志の疎通もスムースであるように聞こえる。
 雰囲気的には井上氏が温厚柔和で面倒見のよい兄、北川氏がどことなくイタズラっぽいヤンチャな弟。
 MCでは穏やかな笑みを浮かべるふたりだが、いざ演奏がはじまると表情が一変、全精力を自分の音楽に費やしているのが清々しい。
 
  
 ジャズ・ギターの巨匠ジム・ホールの愛弟子である井上氏のギターのトーンはひたすら心地良い。訥々と歌っているように聞こえるフレーズの数々には、井上氏の顔に刻まれたものと同じ年輪が刻み込まれているのだろう。
 北川氏のベースは、ウォーキングでは小気味よいグルーブ感が遺憾なく発揮されていて、それだけでぼくの体は心地よく揺れる。ベースソロでは時折「ウッ」とか「ア~」とうめき声をあげていたが、それが却って、氏のソロには切ればほとばしようなアツい血が通っていることを改めて教えてくれていた。


  

 
 各々のソロあとの拍手がやや短いように感じたが、これは演奏が物足りないのではなく、客席が固唾を呑んで聴き入っていて拍手のタイミングを逃したり、長く拍手すると次のソロの頭を聴きもらしてしまうからだと思う。実際客席はみな目がステージに釘づけで、最後まで張りつめた空気が漂っていた。
 
 
 終演後、購入したCDにサインをいただけたが、その時に北川氏と話せて、嬉しさのあまり舞い上がってしまった。緊張してよけいなことばかり口走ってしまったような気がする(^^;)。
 ほんとうは、「あなたのCD「アンセストリー」や「プレイヤー」は自分の愛聴盤である」とか「昔から憧れていた」とか「素晴らしい演奏だった」とか言いたかったのになあ。
 でも、そんなことも、きっといい思い出になることだろう。


  


 北川氏は、今年はケニー・バロン・トリオとしての新譜が出たり、ご自身のバンド「Walkin' Ahead」のツアーがあったりで、ファンとしては目が離せない。
 次のチャンスもまたぜひ聴きに行きたいと思っている。   

 

  

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テッド・ローゼンタール・トリオ ライブ・アット・ルネスホール

2015年09月29日 | ライブ

【Live Information】

 
 最近ちょくちょく寄っている喫茶店があります。
 アップライト・ピアノが置いてあったりして、ときどきジャズのライブなんかもやっています。
 音楽好きのママさんがひとりで切り盛りしていて、「珈琲」という漢字が似合うお店です。
 そのお店で、「テッド・ローゼンタール・トリオ」のライブのフライヤーを見かけました。
 ママは、以前そのトリオのライブを聴きに行ったそうで、「絶対いいよ!」と自信をもってすすめてくれました。
 

 テッド・ローゼンタールの名前はもちろん耳にしたことがあるし、このトリオは昨年も岡山に来ているし、演目が「ガーシュイン曲集」でもあるし、ママのイチ押しでもあるし、で、これはもう行かねばならない。
 そしてもうひとつ。
 ぼくは、大阪のベーシスト・中村尚美ちゃんと「Vivant(ヴィヴァン)」というベース・デュオを組んでいますが、テッド・ローゼンタール・トリオのベーシスト・植田典子さんは、相棒の尚美ちゃんの旧友でもあるのです。



 

 ライブ会場の「ルネス・ホール」は、もともと日本銀行岡山支店として1922年に建設された建物で、2005年からは文化・芸術の創造拠点ホールとして運営されています。
 客席数は約300。天井が高く、独特の響きと雰囲気をもったホールです。








 テッド・ローゼンタールは、セロニアス・モンク・コンペティションで優勝したのち、ジェリー・マリガンのグループで活躍。「ヘレン・メリルが最も信頼を寄せるピアニスト」だと言われていました。
 植田典子は、20代の頃からニューヨークで活動し、ケニー・バロンやルー・タバキンと共演するなど多彩な活動歴をもつ実力派ベーシスト。
 このトリオのレギュラー・ドラマーは、ウイントン・マルサリスやロイ・ハーグローヴのサポートなどでも知られるクインシー・デイヴィスですが、今回は急遽ティム・ホーナーが起用されました。





 ライブは、「素晴らしい」の一言でした。
 テッドのピアノは優美で歌心にあふれているばかりか、豊かな音楽性が感じられるアレンジも素晴らしかったです。とくに「ラプソディ・イン・ブルー」は圧巻でした。
 植田さんのベースは、抜群の安定感があり、そのうえでちゃんと自分のサウンドを奏でていました。テッドが大きな信頼を寄せるのも当然でしょう。
 ティムは、技術的にも音楽的にも素晴らしかったですが、それ以上に音量のバランスが見事でした。きっとしっかり全体を俯瞰しているのでしょう。
 三人のサウンドはとても調和がとれており、しかもよくスウィングしていて抜群に心地よいものでした。



 

 打ち上げの席では植田さんとも打ち解けた話ができました。
 その時に、植田さんのアンプが不調なので、翌日以降一週間ほどは代わりにぼくのアンプを使っていただく、という話がまとまりました。
 実は、中村尚美ちゃんとの出会いは、「アンプ貸してください」だったのですが、その尚美ちゃんと大の仲良しの植田さんとも初対面でアンプをお貸しする話になるとは、不思議というか、縁は異なものというか。。。



 

 翌日の会場は、岡山シンフォニー・ホールです。テッドのトリオと岡山フィルハーモニック管弦楽団が共演するのです。
 アンプを持っていくという「大義名分」のおかげで、リハーサルも見ることができましたし、昨夜はまったく会話のチャンスがなかったテッドやティムとも少し話せました。
 このトリオ、三人ともとても気さくなんです。
 ティムは「オハヨウゴザイマス」「アリガトウゴザイマス」がすっかり板についている感じ。
 テッドもとても穏やかです。昨夜のMCではゆっくり喋ってくれていましたが、きっとすこしでも分かりやすく聞こえるように、という気配りだったようです。
 ぼくはリハーサルだけ見学して引き上げたのですが、それだけでもとても贅沢な気分を味わうことができました。





 音楽と関わるということは、人と関わることでもあります。
 またひとつ思い出に残る出来事に巡り合えて、ちょっとした幸せを味わえた二日間でした。
 来年も、テッド・ローゼンタール・トリオのライブを聴く機会がありますように! 






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VioraBass

2015年05月06日 | ライブ
【Live Information】

 「VioraBass」。
 「ヴィオラバス」ではなく、「ヴァイオラバス」と読むんだそうです。
 4月29日は、玉野「Musik」にVioraBassのライブを聴きに行ってきました。
 

 VioraBassは、壷井彰久(Violin)と鳥越啓介(contrabass)のふたりからなる、弦楽器2台のみのユニットです。
 鳥越さんは、今をときめく素晴らしいベーシスト。現在は椎名林檎さんや原田知世さんなどのバックを務めるほか、各所で大活躍しています。またコンポーザーやプロデューサーとしても力を発揮しています。
 壷井さんのお名前は、以前からアルバムのクレジットでしばしばお見かけしていました。折り紙つきの実力を持つバイオリニストです。
 ふたりの名前は知っていましたが、このユニットの存在は、うかつにも知らなかったです。
 
 
 岡山県の玉野市にあるライブ・カフェ「Musik(ムジーク)」のオーナー佐々木さんから「VioraBassが4月29日にうちでライブするんだけど、聴きに来ませんか?」とのお誘いをいただいたのが先月上旬だったか先々月末でした。
 鳥越さんは、実はその玉野市の出身で、地元のミュージシャンならその名を知らない者はない、といってもいいくらいの、岡山が誇る素晴らしいミュージシャンです。
 彼は、高度な技術を持っているのはもちろん、驚かされるのはその発想の独創性です。ベーシストに求めらるグルーブ感をしっかり発揮するうえで、鳥越さんしか歌えない、自由な自身の歌を歌います。
 壷井さんのプレイ、弦10本のみのユニットが生み出す音、そして鳥越さんのプレイ、すべてを体感したかったので、お声がけに即「行きます行きます!!」と返事。


 
 


 ライブ自体もすぐチケット完売。なんでも、最初は昼公演のみの開催ということだったのですが、あまりにもチケット購入希望者が多く、急遽追加で夜公演を行うことを決めたんだそうです。結局、昼夜とも満席だったそうです。


 当日は早い時間からお店の周りに人だかり。
 ぼくは前から2列目に座れたのですが、息をするのもやっとの超満員。
 リハーサル後に地元ケーブルテレビの取材があったりして、なんとなくお祭り気分の客席です。


 15時30分開演。2セットの演奏はあっという間でした。
 ふたりの驚異的なプレイには圧倒されるばかり。オリジナルな彼ら自身の音楽をじっくり楽しめました。素晴らしい演奏からは、一瞬たりとも目も耳も離せませんでした。
 しかし、高度な技術を連発するだけかといえばそんなことはなく、演奏は遊びごころ満載、歌ごころたっぷり。セットの途中での、クラシックの曲をまじえたふたりのアドリブの掛け合いは大ウケでした。
 ふたりのMCがこれまた楽しく、客席も笑いが絶えません。壷井さんのキャラクターが、これまた楽しいんだなあ。


 


 ステージのふたりの機材にも興味があったんですが、なかでも足元に置いてあったたくさんのエフェクター類には目をひかれました。エフェクターひとつひとつの性能を熟知しているうえに、操作もスムース。非常に効果的にエフェクターを駆使していました。
 しかし、基本はふたりの技術そのもの。巧く使ってはいるものの、決してエフェクターに頼り切っているわけではないのです。本来の演奏技術というしっかりした幹があるからこその、密度の高い演奏であるのがよく分かりました。


  
 

 演奏後、鳥越さんと壷井さんに挨拶してから家路につきましたが、とても満ち足りた気分でした。
 彼らの素晴らしいステージのおかげで、休日がとても楽しいものになろました。
  
 
 



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島・英・夫

2014年08月14日 | ライブ
                                   ♪左から山木秀夫(drums)、金澤英明(bass)、小島良喜(piano)


【Live Information】 


 「島耕作」といえば、弘兼憲史作の漫画の主人公。作品内では、「初芝電器」の会長にまでなった名キャラクター。
 「島秀之助」といえばセ・リーグ初代審判部長で、プロ野球史にその名をとどめる名審判。
 では島英夫ってだれやねん?
 じつはこれは、小島良喜、金澤英明、山木秀夫の、いわば「歴戦の勇士」三人が集まったピアノ・トリオの名前なんです。


 小島さんは、浜田省吾さんや井上陽水さんが手離そうとしない屈強なピアニスト。もともとブルースやロックのフィールドでは知られた鍵盤奏者で、名サポートの数々で知られていました。のち渡米、ニューオーリンズを拠点に活動するようになってさらに音楽性に磨きがかかったようです。ピアノばかりでなく、ブルージーなオルガンでのプレイも素晴らしいのです。強烈な存在感、遊び心あふれるフレキシブルな演奏、ぼくの大好きな鍵盤奏者のひとりです。
 金澤さんは、渡辺貞夫さんや日野皓正さん、中本マリさんなどのバックを務めてきた、日本ジャズ界の重鎮のひとり。骨太で抜群の存在感を誇る金澤さんのベースは多くのミュージシャンから信頼されています。自己のトリオでの活動のほか、巨匠ハンク・ジョーンズ(piano)や、クラシック畑の溝入敬三(contrabass)との共演盤の発表、アレンジャーや指導者としての活動など、領域を超えた活躍を続ける日本のトップ・ベーシストです。
 山木さんは、日本を代表するグルーブ・マスターのひとり。卓越した技術、表現力、生み出すグルーブ、流れる歌心、どれをとっても最高峰で、参加した録音数知れず、引く手あまたのファースト・コール・ドラマー。ジャズやフュージョンでの活動はもちろん、ポップスやロック畑でも多くの素晴らしい演奏を残しています。
 この三人が結集してライブをする、という情報を耳にしてしまったら、もはやいてもたってもいられません。
 というわけで、8月10日、大阪ミスター・ケリーズに行ってまいりました。





 そもそもこの三人がライブをすることを知ったのは昨年暮れ。
 「食指が動く」という言葉がありますが、以前から小島さん・金澤さんの両名に、これまた凄腕ドラマーの鶴谷智生さんを加えたトリオ「コジカナツル」のアツ~い音にマイっていたぼくとしては、小島・金澤・山木の組み合わせの魅力には食指も中指も親指も動きまくってしまい、即チケットを予約。
 そして今年1月28日に、大阪ミスター・ケリーズで、この三人のライブを初めて体験したわけですが、その凄さ素晴らしさに1曲目でノックアウトされてしまいました。
 席が、最前列、しかも息を吹きかければ山木さんの睫毛がそよぐくらい近くだったので、とりわけドラムの迫力と素晴らしいグルーブ感をたっぷり楽しむことができたんです。
 今まで行ったことのあるライブの中でもとりわけ楽しいものでした。
 ですから今回のケリーズでのライブも楽しみでしかたなく、早々に席を予約、指折り数えてその日を待っていたわけです。





 ところが、折悪しく発生していた台風11号が、よりによって10日に西日本を直撃、当日朝から午後にかけて交通機関が混乱するというアクシデント。まさに「嵐を呼ぶトリオ」です。(^^;)
 ただ、天気は午後には回復したので、喜びいさんで店に向かいました。
 ケリーズは満席。店内を歩くのもひと苦労するほどでした。
 今回の席は、前から2列目くらい、位置的にはちょうどバンドのセンターくらい。三人の演奏ぶりも間近で見ることができたうえに音のバランスも良かったです。





 予定より10分ほど遅れて開演。
 1曲目は、「Summer Night」。ミディアム・ファストくらいの小気味よいワルツで、マイナーとメジャーを行き来する美しいナンバー。
 その後は「コジカナツル」のオリジナル曲や、小島さんのソロ・アルバムに収録されている小島オリジナルのオン・パレード。
 2セット目途中からはボーカリストのSHIHO(Fried Pried)さんが急遽参加。ブルースと、「In a Mellow Tone」を歌ってくれましたが、これまたアニマルな三人に一歩もヒケを取らない、見事なステージぶりでした。もう楽しさ倍増です。
 




 どの曲もアレンジにちょっとしたスパイスが効いているし、次から次へといろんなタイプの曲が登場するので、最後まで引き込まれっぱなしでした。
 そして、とにかく演奏がすごい。最後までパワー全開、スーパープレイ続出で、耳はもちろん目も離せません。
 よく「ワイルド」なんて形容詞が使われますが、この三人に関しては、アニマルです、アニマル。
 しかも豪快なだけじゃない。例えばバラードの時はリリシズム、ロマンティシズム満開。ラテン・リズムはとにかく明るい。三連ノリ、いわゆる6/8の曲はとにかくブルージーで、聴いてるこちらも体が思いっきり粘っこく横に揺れます。「この三人はどんなこともハッピーに変えることができる天才!」とSHIHOさんも言っておられました。
 普段まったくお酒を口にしないぼくですが、あんまり楽しすぎたので、なんとビールを頼んでしまいました。そしてたったグラス一杯でハッピーにヨッパラっちゃいました(^^;)


 演奏後は金澤さんにご挨拶させていただき、再会を約しつつ堅い握手を交わしたのでした。
 いやまったくもって濃くて激しくて楽しすぎた夜でした。



2014年1月。左から2番目は神戸のピアニスト三浦敦子さん。
 


このコントラバスはミスター・ケリーズの入口に飾ってあるものですが、かつてケリーズにミッドナイトのライブがあったころ、今は亡き大先輩・津田清さんの「弾かせて貰てこい」とのお言葉で、このベースで急遽何曲か参加させて頂いたことがあるのを思い出しました。演奏後、津田さんがニヤリと笑って「まだまだやな」とおっしゃったのもいい思い出です(^^)

 
 

  

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