ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

EIGHT DAYS A WEEK  The Touring Years

2016年09月23日 | 映画

【Live Information】 


 ことしのぼくの誕生日に、1枚の映画チケットをいただきました。
 ぼくがいつも演奏させていただいているお店のオーナーからのプレゼントです。
 その映画とは、1960年代前半のビートルズを追ったドキュメンタリー、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」です。

 
  


 【ザ・ビートルズ  エイト・デイズ・ア・ウィーク】
 [原題] The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years
 [制作] 2016年(イギリス映画)
 [配給] KADOKAWA
 [上映時間] 140分
 [監督] ロン・ハワード
 [脚本] マーク・モンロー
 [編集] ポール・クラウダー
 [キャスト] ザ・ビートルズ(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター)
        ニール・アスピノール
        リチャード・レスター
        シガニー・ウィーバー
        ウーピー・ゴールドバーグ
        エルヴィス・コステロ
        エディー・イザード
        浅井慎平         ほか
                   


(以下、多少ネタバレあります)
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 ビートルズは、1966年8月29日に行ったサンフランシスコのキャンドルスティック・パークでのコンサートを最後に、一切のライブ活動を停止しました。
 あまりにもスケジュールが過密で、押し寄せる聴衆に危険すら感じるようになったこと、録音内容や録音技術の向上でステージでの再現が当時は不可能だったこと、などがその理由にあげられます。
 この映画は、サブタイトルにある通り、初期のハンブルグ時代、リバプール時代、1963年に始まった15ヵ国90都市166公演に及ぶビートルズのツアーの様子を収めた公式ドキュメンタリー映画です。


 「エイト・デイズ・ア・ウィーク」は、1964年12月4日に発表された4枚目の英国盤オリジナル・アルバム『ビートルズ・フォー・セール』のB面1曲目に収録されています。もちろんレノン=マッカートニーの作品です。1965年2月にはシングル・カットされ、ビルボードでチャート1位を記録、アメリカだけで100万枚以上を売り上げました。
 当時のビートルズは過酷なスケジュールの渦中にいました。ドラマーのリンゴ・スターは「週に8日も仕事だなんて…」とこぼしましたが、そのセリフがそのままタイトルとなったのだそうです。


 


 ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、シガニー・ウィーバー、ウーピ-・ゴールドバーグ、エルヴィス・コステロなどが語る、ビートルズと自分自身にまつわる思い出を絡めながら、ライブ映像がたっぷり楽しめます。
 もちろん東京の武道館や、最後のライブとなったキャンドルスティック・パークでの演奏も観ることができます。


 聴衆の熱狂ぶりは今見ても新鮮です。
 ヒステリックに叫び、泣き、興奮状態で自分がコントロールできなくなっている、会場からあふれんばかりの女性たち。
 なぜこれだけの人々を虜にできたか、という以前に、これほど多くの人々を熱狂させることのできるビートルズにエネルギーには、改めて驚くばかりです。
 この興奮状態の聴衆がわれを忘れてビートルズを追いかけるわけですから、追われる身からすると恐怖も感じることでしょう。
 とにかく、大規模なライブにおける警備から機材の輸送まですべてに前例がなく、そしてビートルズのライブがすべてにおいて前例になった、といっても差し支えないのではないでしょうか。


 また、当時の音響設備の貧弱さが見てとれますね。
 1000人規模の会場でさえ、例えばドラム用のマイクはセッティングされていません。1965年のニューヨーク、シェア・スタジアムのライブでやっとドラムの真上にマイクがセットされていますが、よく見ていると、それはドラム用ではなく、リンゴのためのボーカル・マイクだったりします。
 球場でのライブで、観客席に向けたスピーカーが写しだされていますが、スピーカーから出てくる音は非常に雑で、演奏はとても聴き取りにくい感じです。
 ステージ用のモニターもなかったんだそうです。
 むしろ、それでよくあれだけの演奏やコーラスができたものだと思います。
 ツアー日程だけではなく、未熟な音響システムもステージで演奏するビートルズにとっては問題だったみたいですね。


 ドキュメンタリー映画というだけあって、ビートルズを追うことが必然的に当時の世相を伝えることにもなっています。公民権運動、ケネディ暗殺、ベトナム戦争・・・。つまり、ビートルズはこれらと並ぶ、大きな社会現象だったと言えるわけですね。
 もちろんスクリーンに映し出される当時のファッション、車、街並みなどを見ても、当時の雰囲気がしっかり伝わってきます。


 
 

 音楽だけではなく、ユーモアとウィットに富んだ彼らの受け答えの様子も見ることができます。
 当意即妙というか、頭の回転が速いのでしょうね。
 大事なのは、音楽も、インタビューに対する答えも、彼ら自身の言動にも、管理されている様子が感じられないことです。自由に、やりたいように生きているように感じます。
 おそらくマネージャーのブライアン・エプスタインが冷や汗をかくことも多かったでしょうが、ブライアンはビートルズの魅力をそぐことなくマネージメントしており、その裏には、ビートルズの4人に対する信頼もあったのではないか、と想像したりします。


 武道館公演の前に、右翼団体が「ビートルズの武道館使用は冒涜である」との宣伝を繰り広げましたが、それについての感想を尋ねられた彼らは「ぼくらは演奏するだけで、冒涜などしていない」と明快に答えています。
 その通り、ビートルズは武道館や、日本人が大切にしているものや気持ちを冒涜したことは一切ありません。力ずくで武道館を使用したわけでもありません。もし仮に武道館の使用が日本への侮辱・武道館への冒涜になるのであれば、それは武道館の使用を許可した側が負うべき責任なのです。
 スターは、大きな人気を得るかわりに、いつか足元をすくってやろうとする悪意にも対峙しなければならなくなります。
 ビートルズが蒙ったトラブルの多くは、ビートルズに問題があったのではなく、ビートルズに問題があることにしようとした側(例えばマスコミ)が、問題のないところにわざわざ作った問題だったのだと思います。
 それでも誰に媚びることもなく自分たちの道を進んで行ったことこそが、ビートルズの偉大なところなのではないでしょうか。


 本編終了後に、30分ほどのとても嬉しい特典があります。映画館でのみ観ることのできる、貴重な映像です。
 それもまた、きっと夢中で観ることができますよ(^^)
 
  


 

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