ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

サクラ材の食器棚の製作

2018年07月22日 | 木工
通勤路のヤマユリが花盛り。




帰り道の夜の方が匂います。







昼間からカエルの池に鹿が来ました。

これは7月13日。





経験がないほどに暑いのに、夕立ちも来ない日々。





これは7月11日の夕立。降るとすごい。

私の村も20年ほど前に線状降雨帯の雨が3日間降って大変な洪水になったことがあります。

当時はそんな言葉はなかったですけど。







やっと一段落し、自分の家具を作っています。


シュリサクラという材で食器棚を作りました。






届いた材の山から適材を選び木取り。







まずは四角い板を作ります。







これが図面。

外に置いといたらザっと来て濡れてしまった。







下台は「凧の足」と私が呼んでいる構造で猫足風に。








下台の組み立て。







上台の組み立て。





地震の時に扉が開かないように、というご要望がお客様からのありました。

一つはガラスを飛散防止フィルムを貼った仕様にします。

さらに扉そのものが簡単に開かない仕組みが必要です。



扉に「丸落とし」という金具を付けることを考えました。




これが「丸落とし」です。

骨董を売るサイトで見つけて買いました。真鍮製です。

これを掛ければ家具の地板や天板に扉を固定できるのでしっかり止まるはず。


しかし難点もあります。

鉄棒が下がったまま扉を開け閉めしてしまうと家具を傷つけてしまいます。

これはどんなに気を付けていても起きてしまうはず。

扉の上側に付けることも考えました。

それなら重力で下がるので傷付ける確率は下がるはず。

しかし金具の出来があまり良くないので回りを歩いたり地震の振動で掛け金が外れそうで、付ける意味をなさなそうです。




悩みに悩んでこの金具の使用は見送りました。







どうしたかというと、こんな取っ手にしました。材は黒檀。






扉にはこのように付き、







このように心棒が刺さります。







開けてみるとこの辺で止まります。


取っ手そのものが破損すればそれまでとも言えますが。

マグネットキャッチも付けます。

後から丸落としも付けられますので、とりあえずこれで納品しようと思います。






因みに丸落としを付けるならこんな感じ。








扉や引き出しを仕込み、取っ手も仮に付けました。








塗りました。

もう一回塗り、ガラスや金具を付ければ完成です。



クリ材のローボードの製作

2018年07月11日 | 木工
ずっと料亭の新築物件の家具を作っています。

建物の進行に合わせて家具を納品施工していくので時間がかかります。

壁とか床とか水道の配管とか、他の職人さんとの連携が大事です。

全てが出来上がらないと完成した写真になりません。




このクリ材のローボードは単体で家具になっていますのでお見せしやすい。





出来た写真から。

まだ塗ってませんけど。



この扉、「鬢太格子(びんたこうし)」というものらしい。

お客さんはどこでこのような物を見付けてきたのでしょうか。

めんどくさいです、すいません。






これは扉の枠です。

これに格子を付けていきます。

本当はどう作るのか知りません。写真を見ただけなので。






枠の中に格子を均等に割り振るのは意外と難しいですよ。

隙間が均等にならないと見苦しい。

隙間の寸法を計算で割り出してそれを作って並べてみます。

コンマ0.1mmの精度が必要です。

木工でそんなに細かいことをすることは珍しいです。







こんな風に糊を着けながら付けていき、






全部付けたら改めて圧着して一晩置きます。







さて、この家具はもう一つ難点があります。


それは、料亭の個室に置く家具なのですが、ご主人がいないときに開けていじられないようにカギを付けて欲しい、とのご要望です。

しかもいかにも「鍵かけてます」といったカギは嫌なのだそうです。

つまり見た目は鍵も何もなく、でも開かない、しかし簡単に開け閉めできるような物、と。




秘密の隠しスペースなど家具に仕込むような依頼はたまにありますが、それを公にするわけにはいきません。

しかし今回の場合は公表してもいいような気がします。

お客様にいたずらされないようにする仕組みですから。



実にいろいろ考えましたが結論から言うと、上からピンが降りてきてそのピンが扉に穿った穴に嵌ると掛け金が掛かるというもの。

そのピンの上げ下げは磁石を使います。






これが図面。図面と威張るほどの物でもない。






これがそのピン。






ピンにはネジで磁石が付き、その磁石がピストンの様に動く筒に入っており、その磁石のストローク寸法を決める木で出来た部材が筒の中に付きます。







この部品は既成の素材が無く木で自作。長さが20mm、外寸8mm、内寸4mm。サクラ材。






今回の肝となる部品。

monotaroのウェブカタログをなめるように探して買いました。







これらの部品を組み合わせ、家具に穴を開け、金具で止めます。

これはひっくり返して撮った写真。






これは扉側のピンが入る穴。







この木札が「鍵」になります。

厚さ10mmの中にネオジム磁石が仕込んであります。

ピンのあるところに当てると磁石でピンが上がって開錠します。







重力でピンは下がるはずですが、裏返せば磁力で反発して鍵がかかるようになっています。




見た目は何も仕掛けが見えない扉です。

最初の写真をごらんくださいませ。








塗ったらきれいな木目出てきました。