ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

がま池

2016年03月30日 | 動物
雨が降っている夜道を自転車で帰っている時です。




道の真ん中に何かがいました。

ヒキガエルです。


メスにオスが変な形でしがみついて、身動きが取れなくなっています。



交通量が少ない山村の旧道とはいえ、たまには車も通ります。

轢かれないように、つまみ上げて道端に移動させました。










ヒキガエルについて書かれたいくつかの本を思い出すに、


・ヒキガエルは産卵時期になると生まれた池に帰ってくる。

・オスはメスを待ちかまえ、メスを見つけるや否や争って抱きつく。

・間違って抱きつかれたオスはグーと鳴いてメスではないことを主張する。


など。




さらに進むとまた何匹かオスがいました。

まあのんびりした奴らで、逃げるようことはありません。









さらに道を進むと、側溝の中で鳴き声がします。

側溝には蓋があるので、カエルはもう出ることができないのではないかと心配です。


穴から覗くとカエルがやはり中で包接しているのがちらっと窺えます。


すわレスキュー!と狭い穴に手を入れてカエルの手を掴み、何とか二匹を吊り上げました。



さすがにこうなるとオスも手を放し、手足を縮めて石に化けたりします。





しかし私の住んでいるのは源流の里で、流れの急な沢はあれど、池のような溜まり水はありません。

水田がない村というのも日本では稀なのではないでしょうか?

調べたことはありませんが。




長年の間、ヒキガエルは見かけるもののその産卵場所は知らないのででした。

ちなみに工房の池に来るヤマアカガエルの卵は川のちょっとした淀みにはたくさん見かけます。







翌日、思い切ってヒキガエルを見かけたあたりに住んでいるお年寄りに
「ヒキガエルが卵を産みに来るところを知りませんか?」と訊いてみました。


すると「うちの池に来るよ」とあっさり長年の疑問は解決されました。









これが「ガマ池」です。



川の本流から一段高いところに畑があり、畑地の終わりは高い石垣になっていていその石垣の上に集落があります。

その集落を貫いて私の通勤路があります。

ヒキガエルの産卵する池は石垣の麓にあります。



池は長さ10m、幅は4mくらいでしょうか。

80歳過ぎのおじいさんにきいても昔からあるということしかわかりません。





池には鯉がいて、姿はなかなか見せませんが何十匹というヒキガエルが蛙合戦を繰り広げていました。





いままさに池に入ろとしている奴。


じっと見ていると時々浮かんできては息をする包接したつがい。

それに横恋慕するオスたち。

ぐーぐーとヒキガエルの鳴き声が何とも言えない風情です。






やたら何かのに抱きつきたがるオスが鯉にしがみついて殺してしまったようです。

鯉は死んでもまだ抱き着いたままです。







卵もありました。

ひも状の卵塊がヒキガエルの特徴ですね。



この池がこのあたり一帯のヒキガエルの繁殖を担っているのかもしれないと思うと、
なんと大切な池なんだろうと愛しく思われました。








やっと木蓮がほころび始めたような季節になりました。


とんかつ屋さんの棚の制作

2016年03月27日 | 木工
テレビ台を納品してきました。




ごちゃごちゃした工房より、お宅に置くとどんな家具かがわかりますね。
長さが2.9mほどあるクルミの耳付き一枚板の天板の下にキャスター付きの箱が5個入っている構造です。

















桑材の椅子を木取りました。

秩父の材木屋さんの材料支給での仕事です。

なかなかよい桑でした。






墨をして、





まず大まかに切り分けます。





切り分けてまた並べてみました。
どのように板から材を取っていくのかがわかると思います。
木の曲がりをうまく利用して、曲がった椅子の部材を取ります。





支給された材でちょうど4脚分の部材が取れてほっとしました。





この板で座面を取ります。

桑にしては珍しくほぼ傷のない立派な板です。
ちょっと粗いけど、木目もいいです。

いい椅子になりそうです。


この椅子はすぐには作らず、しばらくこのまま置いておきます。











いつもご贔屓にして頂いているとんかつ屋さんから、店内で使う棚のご注文を頂き制作しました。





図面です。





最初に出した案では予算が合わず、構造や材を見直してご予算に合わせたプランにしました。

もう少し仕切りや柱がありましたがそれを省き、突板の合板の使用をやめ、無垢材を使うことにしました。



「合板より無垢材を使う方が高くつくんじゃないの?」と不思議に思われる方もいるかもしてません。


そうなのですが、ちゃんとした突板を張ってもらうよう注文した合板は意外と高いものです。

それを注文して支払をするより、手持ちの材を使う方が金銭的には楽であろうといのが今回の判断です。










加工を終えた部材です。

材は栓。









柱の同じ位置に横手の材が集中するのでホゾ穴の中でもホゾ先が当たってしまいます。





そこでほぞ先を欠いてホゾ穴を分け合うような仕口にします。






裏板も合板の使用をやめたのでいつものように雇い実(やといざね)で継いだ構造にします。

今回は着色塗装なので、組んでから色を塗ると、木が痩せた時に溝に入っていたところが白く出てしまいます。
ですので嵌め殺しにする無垢材はすべて先に着色・仕上げ塗装をしてから組み立て時に組み込む必要があります。

合板ならそんな余計なひと手間はいらないのですが。

まあ、自分で塗装もしているからできることです。







部材は組む前に着色します。






裏板を嵌めながら、まず全面、後ろ面を組みます。







先に組んだホゾがどのようになっているか、そこにどのように次のホゾが入るのか。
ホゾ穴を分け合っている様子がわかります。






組み立てが終わりました。

この時点で、パネルはもう塗装は終わっていて、骨の部分は着色だけという状態です。






塗装が済んでいるパネルをマスキングして、残りの部分を塗装します。

マスクをして、眼鏡は塗装用に替えます。


塗料は水性のウレタン塗料です。

この塗料は本当に乾きが早く、朝塗りだして夜には金物付けができます。






扉や棚板を付けました。





引違扉と、




開き戸が二面にある変わった構造です。






出来ましたが、年度末年度初めはいろいろ用が多くて、しばらく納品にはいけません。








長いTV台~小物作り

2016年03月19日 | 木工
年度末、いろいろ忙しいです。


東京九段の桜は2,3輪咲いたという便りをききますが、山里はまだまだ色が少ないです。

しかし夜の闇に春の気配を感じます。





成虫で冬を越したテングチョウが飛び始めています。





池では、しばらく目を離したすきにカエルの卵塊が15個ほどになっていました。
早く産まれたものはおたまじゃくしになっています。









小物をまとめて作りました。





お箸です。100膳ほど作ります。
材はオノオレカンバという固い木です。ミネバリともいいます。

少し大ぶりのもので、とんかつ屋さんでとり箸に使うものです。







握るあたりを「なぐり」風に加工します。






右が「なぐり」風加工をしたものです。






漆を塗ります。

一日に一度、四回ほど塗ります。

漆塗りは根気のいる仕事です。
塗っては拭きとる作業を繰り返します。
一回一通り塗るのに2時間半ほどかかります。







ついでに箸置きも塗ります。











これは真空管を使ったアンプの台だそうです。





こんな仕口です。
たまにはこういうのもやらんとね。










これは額。上野村産のシオジの杢板を使いました。
記念品です。
季節商品ですね。








昔作った引き出しが修理で返ってきました。


もともとは引き出しの前板は穴が開いているだけで、そこにビーズを付けて見本にして販売するための物でした。

それをやめてつまみを付けて欲しいとのことでした。



引き出しの数は80杯。


小さい引き出しにちゃんとしたつまみを付けるのに苦労しました。
数も多いし。









つまみやすく、まあまあの格好になったと思います。









長ーいTV台も作ってました。





材は長さ3.5m、幅は60cm、厚さは7cmのクルミです。






後ろを真っすぐに切って、





長さも切ります。285cmくらい。








作ってる間の写真がないのですが、こんな家具です。

下にキャスター付きの箱が5個入ります。







箱には仕切りがあります。

取っ手はは思い切って握りやすい形にしました。










二つの納品~材木だし

2016年03月05日 | 木工
催事に行ってきました。


カメラ忘れて、写真なしです。

一日中の接客は疲れます。

気持ちが折れないように維持するのが大変。











二件の納品に行ってきました。




クルミ材の下駄箱です。

上に引き出し、下は四枚の引違扉です。



お土産にふきのとうを頂きました。








二件め。




事務所の下駄箱です。

やはりクルミ材。






こちらは開き戸です。

下駄箱には引き出しを付けるのがお勧めです。
認印やお出かけに必要なハンカチやティッシュを入れとけます。









所長室の本棚です。

積み木を積み上げたようなイメージでデザインしました。

何種類かの色の違う樹種を使っています。







次の仕事の材を出しました。


工房の庭の一番奥に積んである大きな板を出さねばならなかったのですが、
ちょうど雪が融け、地面が凍っているタイミングを狙っていました。

積雪以来、フォークリフトを使うのは初めてで、エンジンがかかるか心配でしたが大丈夫でした。

よく暖機をしてから機嫌を取りながら使います。





長さが3.5m、幅が60cm、厚さが7cmのクルミの板です。

めっちゃ重いです。


しかし、リフトがなかった時には腕力だけでこれを扱っていたのですから、我ながら驚きです。







ついでに製材してあった板を桟積みしました。

これは黄槐(きえんじゅ)。
製材の親父はクサエンジュと呼んでいました。







これは黒槐(クロエンジュ)。
黒い木です。

先月器を作った木ですが、一番太い丸太は板に製材しました。