ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

食器棚の制作 その3

2015年10月28日 | 木工
だいぶ秋っぽくなりました。



工房の脇の柿の木です。








納期の関係でやむなく少し違う仕事をしていましたが、食器棚の制作を再開です。



側板や天板になる板はできてました。

次に裏板や扉の鏡板になる板を作らなくてはなりません。



その板は27mm厚の板を二つに割いて作ります。




ぐるりと四方の辺に丸鋸を入れ、丸鋸が届かない部分は帯鋸で挽きます。





この作業は正直苦手です。

丸鋸で挽ける高さはの最大9cmほど。つまり9cm鋸刃を出して板を切るのですが、怖いのです。

しかも切り込みを入れると木がぎゅっとしまって鋸を挟みここもうとするのでものすごい抵抗がかかります。





何とかすべての板をひき切りました。

脱力してしばらく休憩。








最近はすっかり裏板などにも合板は使わなくなりました。

無垢の板を使います。

15cmほどの幅の板にしてお互いの木端に溝を付き、実(さね)を入れます。

フローリングのような構造です。








板を所定の場所に組めるよう、ほぞ穴を開けていきます。


写真の手間に横長に伸びている部材は箱を正確に直角に組み立てつつ横剛性を持たせるための部材です。

決まった名前はありませんが「力板」と私は呼んでいます。








組み立てが始まると工房内は一挙に手狭になっていきます。

板だったものが箱になるのですから当然です。








今回の一番込み入った部分です。

慌てず、少しづつ組んでいきます。








二日ほどかけて本体の組み立てが終わりました。

それまでの部品をコツコツと作ってきた時間を考えると組み立て作業はあっけないほど早く終わります。









これから棚板や扉などの付属部品を作ります。




棚板の材だけでもこんなにあります。



まだまだ完成までは時間がかかります。

食器棚の制作 その2

2015年10月18日 | 木工
雨上がりの早朝、打ち合わせのために県境を越えて秩父地方に行きました。





トンネルをくぐって見下ろすと、これから通って行く谷筋が見えます。

遠くに武甲山があり、秩父の市内はまだ霧の中にあるのがわかります。






途中に名峰・二子山もあります。







今回のお話はまず丸太があり、作るものの図面をひいてからそれに合わせて丸太を製材をするというものです。

何を作るかを決めて、そのための材を丸太の製材から始めるというようなことは初めてです。
ワクワクします。





これがそのためのケヤキの丸太です。

色が濃くて目の詰んだ丸太です。




この切り口をよく見て木の質を吟味します。



どのような板が必要なのかは図面が決まればわかりますので、
この丸太をどう製材すればそのような板がとれるのかを検討します。

もっとも、製材した後に材を十分に乾燥させる必要があるので、
実際の制作は何年も先になります。






この丸太はついでに頂けることになりました。
槐(えんじゅ)です。




伐った後にもこのように葉っぱが生えてくることがあります。








さて食器棚の制作ですが、なかなか苦労をしています。







一週間以上かけて、ひたすら家具の部品になるパネルを作る作業をしてきました。

部品が数も種類もとても多く、かなり頭がこんがらがっています。






パネルの部品をを一組並べてみました。





それがこのようなパネルに組みあがります。

クラシックなドアのような構造です。

写真のもので長さが165cm、幅が65cmあります。


このパネルが食器棚の側板や天板、棚板などの部品になります。

65cmという深い奥行きの食器棚ですので、手をかけてこのような構造にすることにより無垢の木の収縮の影響を最小限に抑えることができるのです。

よくある家具ならばべニアを買ってきて切ればできてしまうようなところなのですが、
無垢材にこだわる家具製造業者としてはそういうわけにはいきません。





それぞれの部品になるパネルを作り終え、箱状に組み立てる前の段階までは出来上がりました。


まだまだ家具としての形が見えてきませんね。

食器棚の制作 その1

2015年10月01日 | 木工
催事が済んで、しばらくへばっておりました。








忙しくてろくに写真も撮れませんでした。
雰囲気をお伝えするために2枚だけ貼ります。



初のシルバーウィークで、人の出が全く読めませんでした。
普通の三連休ですと中日がお客様が多い。
今回は三日目の最終日も五連連休の中日に当たり、
結果的には三日目が一番の人出となりました。

それにしても、予想よりはお客様の出は少なかったです。








催事のあとに一つ納品。

ウォールナットの座卓です。


お客様ご提案によるデザインの足ですが、これがなかなかかっこいいです。

折り紙で作ったようなシャープな形が和室にも洋間にも合います。


お客様にいろいろ教わるものです。








これから大作の食器棚の制作が始まります。





秋田県の材木屋に注文した材が届きました。

クルミの27mm厚、全部で約2立米です。


このような材は体積当たりいくら、という値段で取引されます。





これが図面です。
扉、レンジ収納、ごみ箱収納、野菜収納などがあります。

高さが243cm、間口がおよそ176cm、奥行きが65cmです。
高さは壁面いっぱいで作ります。



奥行きが65cmはあまり例のない大きさで、これはお客さまのご希望で決まった寸法です。

奥行きが45cmくらいならば「板の構造」で作りますが、広い奥行きのものは「フレーム アンド パネル」という構造で作ります。
いわゆる「框(かまち)の構造」です。

広い板にすると「板の構造」ですと板の収縮の影響が大きく出てしまいますので「框の構造」にするのです。

その説明は作りながらおいおいします。







部分の図面も別に描きます。

框の構造にすると、部品数が極端に増え、工程も複雑になります。

この食器棚は四つの箱に分割して作りますが、その箱全てと扉や棚板などの図面を描きます。
図面を描いてすべての部品の寸法を丁寧に出します。
そこから木取の寸法を出し、何が何枚必要なのかを洗い出します。
そうしないととても作れません。

上のような図面が何枚もありますがすべてはここにもう載せません。







材を開封して板を一枚一枚見分し、適材適所に使うよう分類します。


扉の鏡板には広くて素性のよい板を使います。

扉の縁には真っすぐな狂いの出ない柾目を使います。

長い部材は曲がっていなくてやはり素直なものを選びます。

広い材から先に木取り、だんだん狭い材を取るようにします。

曲がったものや色の悪いものは棚板など見えないところに使います。

幅が広くて良い板は今回はそれほど使わないのでなるべく取っておくようにします。



見分しながらもどんどん板を切って部材を揃えていきます。






ほぼ丸一日で木取が終わりました。
雨が降る予報だったのでお弁当も食べずに作業を進めました。


ものすごい量の板で工房の板の間が埋まりました。

間違えないように板に部品の番号を振っておきます。




結局、172枚あった板の山を使い、残ったのは40枚弱となりました。

棚物は材をたくさん使うことは承知していたつもりでしたが、改めて驚きました。