ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

鉋の刃の裏だし

2015年12月24日 | 木工
今日はクリスマスイブですが、ハロウィンの方が似合いそうなおぼろおどろ月夜です。





明日が満月だそうです。




仕事が一区切りして、ずっとやらねばならなかった鉋の刃の裏出しをしました。



専門的な話になってしまうので省略しますが、鉋の刃は定期的に叩いて調整する必要があります。

この作業が実はとても苦手です。
今まで何回も失敗して刃物を割ってしまってます。

しかし、しないわけにはいきません。



今回はネットで情報を集めて良い方法を探し、作業をしてみました。






これが「裏が切れた」状態の刃です。
白く光っているところが砥石が当たるところですが、
このまま研ぎ進めると窪んだ「裏スキ」にかかって砥石が当たらなくなってしまいます。

この刃を玄能で叩き、金属の展性を利用して曲げて、また砥石が当たるような刃の状態に直します。










改善点その1。

平らだった金敷の面を丸くします。

そのような金敷を新たに購入しようかと思いましたが、
あったものにやすりを掛けたら割と簡単に形を変えることができました。











改善点その2。

叩く前にお湯で温めます。

鉄が柔らかくなり、割れにくくなります、曲がりやすくなります。











改善点その3。

叩き方。

叩き方は何かを特に変えたわけではないのですが、
金敷の形状を変えたので玄能で叩いた時の手ごたえが明らかに変わりました。

刃を叩いたときに、金敷と刃に隙間がありかつ打点がずれると、ばたばたした手ごたえがあります。
それらの条件がすべてうまくいき、打撃の力がちゃんと刃物に伝わっているとずしっとした手ごたえがあります。

そのような手ごたえがあるということは力がしっかりと伝わって金属を曲げているということですね。





叩いたところはこのように荒れます。






研いでみるとご覧のように裏刃が復活しました。






ためにためてしまい、裏出しを待つ鉋が七台もありました。




この仕事を始めてから20余年たってほぼ初めて、失敗せず満足できる裏出しが出来ました。

苦手な作業を克服出来てとても嬉しいです。




ネット上で教えてくれた方、ありがとうございました。

家具を三点

2015年12月22日 | 木工
今年の冬は暖かいとはいえ、やはり冬は寒いです。




朝は工房の庭に霜が降りています。

霜柱がサクサク。






2014年2月の大雪で倒壊した薪小屋をやっと、今頃、立て直しています。

いつだ?ほぼ2年前?



もう薪はここに置くのはやめて、この小屋は材料置き場にします。
入口に掛かっている掛屋もそろそろ寿命なので、そちらもそのうち同じような単管のものに作り変えるつもりです。


仕事の合間にコツコツとやっています。










11月に納品した食器棚の残務をしてきました。

残りの扉を付け、マグネットラッチを付けて完成です。



物が大きいし台所はあまり後ろに下がれないので、全景の写真が撮れません。







シンクの上の棚にカメラを置いて正面の写真を撮りましたが、下は切れています。







ちょっと中身拝見。

たくさん入る、使いやすいと褒めていただきました。









今月の主なしごと。




テレビ台です。





コーナーに置くので後ろがご覧のように45度に切れています。
見えなくなるけど後姿の方がかっこいいかも。







組み立てているところです。


地味に面倒くさい加工になってしまいました。













台所に付ける戸棚です。

お客様がデザインしてお作りしたものです。



両側に板がない変わった形なので、強度が出る構造を考えるのが大変でした。






翼のような形の板を削っているところ。







この扉に合うステーを探すのも大変でした。

金物のカタログを熟読してやっと見つけました。














書き物をする机セットです。
大人用です。




まともな図面も描かずに作った椅子ですが、なかなか良いものが出来てしまったかも。





組み立て前の記念撮影。


いつもは余分に作ったりするのに、今回は忙しくて一脚しか作らず、ちょっと後悔。

また作りましょう。








炬燵とポータブルデスクの制作

2015年12月04日 | 木工
朝、通勤路から河原を見下ろすと、狩猟で捕った鹿を解体してました。






夕方、仕事をしていたら、解体していた人が鹿肉を持ってきてくれました。






ご馳走様です。

刺身で頂くのが美味しいです。






ブラックウォールナットで炬燵とデスクを作りました。


デスクは小さくて一人でも持ち上げて動かせるものをとのことでした。




炬燵は今までも何度か依頼を受けましたが、断ってきていました。

私はあまり仕事を断ったことはないのですが、炬燵を作るのだけは避けてきました。

炬燵の熱で無垢の木が極端に乾燥し、歪んでしまうのを恐れたからです。



しかし今回は、お客様ともそんな杞憂があることを良くお話しした上で、制作することにしました。









これは組み立てる前のやぐらです。





組み立てです。





組み上げればこんな感じ。





ヒーターを付けてみました。
今はとても薄い器具があります。






炬燵のやぐらに付ける断熱用の板は、いろいろ調べると「ハードウッド」という合板が使われています。

ほかにも石膏ボードやケイカル板などという難燃性不燃性の素材でもいいのではないかという意見もききましたが、今回はそのハードボードを使ってみることにしました。



ところが、近所の建材を扱う業者はハードボードなんて知らないし扱ったこともないとのことでした。


ネットで調べると、やっと浅草の業者にあるとのこと。
ちょうど用があったので引き取りに行きました。

帰ってきて、車から降ろすときに気が付いたのですが、自家用のハイエースの荷台に貼ってある素材がそのハードボードでした。






これをせっかくですのでやぐらの全面に貼ってしまいます。
なるべく天板に熱がいかないように。






これが天板です。

両面を同じように仕上げ、反ってきたら裏返して使ってもらいます。

夏は布団を外して座卓として通年で使えるようになっています。
その時にはやぐらと天板の間ゴムをに置いてズレを防ぎます。







こちらがポータブルデスクです。

今回は出来上がった姿からお披露目。
炬燵と同じお宅に行きます。











天板と側板は「留(とめ)」と呼ばれる45度に切った板どうしが接合する構造です。
こうすればすっきりと見えますね。



これを組み立てるのは実はちょと厄介です。


ダボを使った組み立てなのですが、ダボの穴は切った接合面に対して直角に開けます。

留の場合、穴は板の面に対して45度の角度で開いているので、
箱をすぼめるような動きですべてのダボが同時に挿入されるように組み立てなければなりません。
それに反して、地板の方は板に対して90度の角度でダボの穴が開いています。

そのような構造のものを組み立てるにはすべての仕口を同時に少しづつ組まなくてはなりません。

このややこしさを言葉で伝えるのは難しい!


とにかく、すべての穴にいっぺんに糊を付けて滞りなく作業を終えなくてはならないのです。









クランプを総動員し、がっちりと締め付け、何とか組み立てました。







クランプを外せばこうなります。





引き出し、つまみを作って、塗装をすれば完成です。