ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

古材で作るセンターテーブル

2016年08月26日 | 木工
お屋敷を解体して出た古材を使って家具を作る仕事です。







長さ1.8m、幅45cm程のケヤキの板です。

板の間か縁側に張られていたのでしょうか?
木端に雇い実(やといざね)が作られています。
今風に言えばフローリングです。
幅はずっと広いですけど。








この溝は蟻桟(ありざん)です。
板が反らないようにするための細工です。

しかし残念ながら見事に反っていて桟を外すのが大変でした。








だいぶ曲がっています。


この曲がりも傷も溝も全てそのままに留めて使える家具を作ります。

この板がどのように使われていたかという痕跡を残し、
かつてあったそのお屋敷を偲ぶためのモニュメントを作ることこそがこの仕事であるという考えです。







しかし狂って曲がってしまったままでは組み立てるようなものは作れません。

どうするか?







平らな作業台に置いて、なるべくバランスの良いように据えます。

作業台を定盤にして、その面を基準に「橋」を架け、
その橋の上面を第二の基準にして平らな面を彫ります。









こんな感じに。

この彫った面は深さがまちまちに見えますが、基準面からの距離は均等になります。

そこにホゾ穴をうがちます。









組み上げました。

少し彫り込まれた溝に足になる板が刺さっているようになります。










元々の物が漆塗りでしたので、漆で仕上げます。


正直な話、ゲテモノになるのではとちょっと心配していたのですが、

出来てみるとなかなか品のあるものになり驚きました、我ながら。

古材の持つ品格なのでしょうか?



昔の職人の残した鑿跡も愛おしいです。




テントウムシのお皿

2016年08月23日 | 木工
昨日は台風が直撃。

しかしどうしても出かけなくてはならない用事があって車と電車を乗り継いで出かけました。


雨が上がって西の空には見たこともないようなすばらしい夕焼け。





東の空には虹。









さて、すこし轆轤の仕事をしました。




これはクルミ材のお盆です。

直径30cm。

いい色のクルミでした。






こちらは「葉っぱにテントウムシのお皿」を作った時に思いついた、テントウムシの付いたお皿。

お皿を挽く時におへそを作り、それに焼きペンでテントウムシの模様を描きます。

これなら簡単に出来てかわいいかも!





こんなのがお皿の真ん中にいます。

いかがでしょう?

レンジ台の制作 再び

2016年08月22日 | 木工
電子レンジを置くための台を再度ご依頼いただきました。

仕口が見えるようなデザインをご希望とのことでしたが、
置く場所のスペースの制約と入れる機械の大きさとの兼ね合いから、あまり太い材厚い材は使えません。






部材の加工が終わって記念撮影。

材はサクラ。










30mm角の足の部材に貫通した穴を掘り、ホゾを入れて楔で止める仕口です。






糊を着けて楔を打ちました。






接着後糊を取ったりホゾ先を面取りをしてきれいに仕上げます。

これは結構面倒な作業です。









これは後ろと横の幕板が足に付く部分の仕口です。

足が細いので、ホゾのスペースを互い違いに分け合ってます。

このあたりは組んでしまうと見えなくなる仕口です。








こちらは横の幕板と引き出しになる前の接合部。

やはりホゾ穴を互い違いにしてぶつからないように設計します。









下の棚板の仕口です。

溝を付き通してしまうと弱くなるので溝を三か所に分けてあります。









最終段階の組み立てです。









漆を5回ほど塗った後、つまみや天板を付けて完成です。










こんなディテールです。








動物モチーフのお皿

2016年08月13日 | 木工
夜はすっかりコオロギの大合唱。

蝉もヒグラシからツクツクホウシの季節に。

山はもう晩夏の雰囲気です。





動物のモチーフのお皿を作りました。





これがアイデアスケッチ。






板にスケッチを移します。






葉っぱにテントウムシのお皿です。

葉っぱの形に切る前に内側を彫ります。
周りが四角い方が固定しやすいからです。






作業台にしっかりと固定します。

あとはひたすら手作業で彫り進めます。








まだラフですがこんな感じ。

このあと外周を葉っぱの形に仕上げます。








こちらは丸い葉っぱにカエルのお皿。

カエルのレリーフになるところを高く残してお皿を挽きます。







カエルの絵を移します。

このあと、またひたすら手作業の彫刻です。







出来ました。
オイル風のウレタンを三回ほど塗ります。






足は焼きペンで描きました。






こちらがカエルのお皿。






アップで見るとまだまだ技術的に未熟さを感じます。




作ってみるといくつか思うところがあります。


もう少し薄彫りにした方が品良く、使いやすく実用的ではないか、とか。

モチーフの組み合わせをもっとリアリティーを持たすとか。(カエルには蓮でしょう)

根付の様に洒落を利かすとか。

材ももっと固い方が刃物切れがよく、彫刻の表現が生き生きとするのではないか。(いや彫るのが大変よ)

人工乾燥の材はパサパサしていてこのような工作には向かないかもしれないとか。

もう少し機械や治具を工夫して売りやすい値段でできる方法はないかとか。

もっとたくさんの種類の刃物が欲しくなります。




デザインとかはいくらでも出てくるんですが作るのは大変です。










長い戸棚の制作 その2

2016年08月03日 | 木工
いつの間にかミンミンゼミやツクツクホウシが鳴き始めています。

蝉の鳴き声にも季節の移ろいを感じます。

コオロギも鳴き始めました。

もう7時には暗くなるし。




戸棚の制作の続き。

納期が迫り、引き出しや扉を作っている写真を撮り忘れました。





これはつまみ。サクラ材。

27個も必要です。

今回の家具に合わせて少し大きめに作りました。






床の間を本体が占領し、その隙間に棚板やら扉やら引き出しを置いてオイルを乾かします。






引き出しや扉を仕込みつまみを付けます。



この家具は全てを並べると前面が扉と引き出しだけ見えるようなデザインです。

つまりアウトセット(かぶせ)になります。
棚口や束などの本体の箱部分が見えません。

このようなデザイン処理のものはインセットより工作がちょっと楽です。






開けたところ。

扉の金具はスライド蝶番というもの。
ほとんどのキッチン収納などに使われています。
ネジを回して位置や出を調整できます。
しかし、方法を知らずにいじってしまうとめちゃめちゃになるので要注意。

閉めたときに金具が見えずすっきりと見えるのが利点ですが中ではちょっと邪魔になります。








納品しました。




間口は5mになります。






長すぎて写真に納まりづらいです。
正面から一部を撮影。







数年前にお納めしたテーブルセットもクリ材。
何年かで良い色になっています。

時間が経って一番良い色になるのはクリだと最近思っています。
このテーブルももっと渋い味が出てくるはず。