ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

3件の納品

2015年09月16日 | 木工
1週間ほどの間に3件の納品に行きました。







とんかつ屋さんの椅子です。

欅材、拭き漆仕上げ。


漆塗りは欅と最も相性がいいと思います。
欅の木目の美しさ、漆の仕上げの美しさをお互いに高めあう感じ。





この椅子のデザインの一番の特徴である擬宝珠。






苦労して仕上げた座面。
漆を塗ったことがある人ならば、この仕上がりを褒めてくれるはず。











お店に納品しました。

写真を見ていただければ、
なぜこんなにごっついデザインにこだわってこの椅子を作ったかがわかっていただけるはず。
内装に無垢材をふんだんに使ったお店なんです。


かつ久 無庵 前橋本店とういお店です。


前橋では有名なおいしいお店です。椅子を見がてら行ってみてください。













先日仕上げた座面の大き目なダイニングチェア。
胡坐がかけるようにというご要望でした。






ほぼ同時期に作ったスタンダードの椅子があったので並べて撮ってみました。
おなじクルミ材なので2脚の違いがわかると思います。














新築のお宅に椅子を納品しました。とても凝った作りのお家でした。

定番の椅子です。材はクルミ。



テーブルは工房 凛の澤田さんの作です。



19日土曜日から3日間、創造の森 上野村フェスティバルが始まります。

どうぞお越しください。


新作椅子の制作

2015年09月11日 | 木工
私のところでも、ずいぶんと雨が降りました。




いつもは小川のような流れの工房の前の川も、ピーク時はこのような濁流になりました。


10年前くらいでしょうか、この村も甚大な大雨の被害がありました。
個人的には被災しませんでしたが、消防団の一員として土嚢を積んだり、
土砂に埋まった家屋を掘るために徒歩で被害地に行ったことを思い出します。

大変でした。

被災した人の苦労は想像して余りあります。






新作の椅子を作りました。

新作といっても、定番の椅子のデザインを流用したものです。









椅子作りは五分の一の模型を作ってデザインや座り心地を検討します。






見づらいですが、ベニヤに描いた原寸大の図です。
これで角度や細かい寸法を確認します。






加工の終わった部材です。







後ろ足の組み立て。
前がなくて変な感じ。






前足の組み立て。






前後の組み立て。






このように前すぼまりの骨組みです。






背もたれ。

標準のものよりひじ掛け部分を長くしてあります。






帯鋸で挽いて成型します。






塗装前までできました。

たまたま修理で帰ってきた、デザインの元になった椅子と並べてみます。



この右の椅子をご覧になったお客様が「これで座面を広くして胡坐がかけるものが欲しい」というご要望でした。

ならばそのまま広げればいいじゃん、と思われるかもしれませんが、なかなかそのようにはいきません。

元の椅子は前足と後ろ足を結ぶ骨組みが十文字になっているような構造です。
これをそのまま伸ばせば座面の奥行きも深くなってしまい、うまくいきません。
この辺の説明は難しく、うまくお伝えでできませんね。


つまりは座面を広くするというご要望を満たすために、構造そのものを考えなおす必要に迫られました。



アイデアスケッチを描き、模型を作り、お客様にお伺いを立て、また変更する作業を仕事の合間合間にしているうちに一年経ってしまいました。
お待たせして本当にすいませんでした。





おまけ。




色づいた柿の葉っぱ。


だいぶ秋めいてきました。

でも晴れればまだ蝉が鳴いています。

とんかつ屋の椅子の制作 その2

2015年09月01日 | 木工
ずっと霧雨ばかり降るような日々が続いています。





椅子の部材の加工が終わりました。

例によって並べて記念撮影。






組み立て工程に入ります。





後ろ足。





前足。





糊が乾いてから前後の足の組み立て。

椅子らしくなってきました。







万力で挟んで肘掛けのほぞの加工をします。






このように丸ほぞにします。小刀、鑿を使った手加工です。





肘掛けはこのような収まりです。



この肘掛けはまだ組みつけず、部品で漆を塗ります。
座面も部品で塗って、塗りあげてから組み立てます。






座面の加工は四角の板から始まります。

まず後ろ足がはまる掻き込みを切り、座枠にのせてみます。





肘掛けが付くところを切らなければなりません。

このような加工の印は現物合わせが一番確実です。
ご覧のようにおっつけて鉛筆で書きます。







こんな感じ。





座面の座繰りを加工します。





「四方反り鉋」「船底鉋」などと呼ばれる、下が丸くなった鉋で彫っていきます。

鉋の台が座繰りのアールを作る定規になります。






お尻が当たるところを彫りました。






太ももの当たるところも彫りました。




見た通り、鉋で削っただけでは滑らかな座繰りにはなりません。
サンディングペーパーで仕上げる必要があります。
しかしただペーパーをかけても駄目です。
鉋の跡や木目の強弱が残った見苦しいものになります。

今回は漆仕上げなので特に丁寧な仕上げが必要になります。

きれいに仕上げるのには、「あて木」にペーパーを巻いて磨きます。





これが「あて木」です。
もちろん自分で作ります。

座面のアールに合わせて3種類ほど使い分けます。





機械も使います、もちろん。

あて木を使って滑らかな曲面ができた後、仕上げの磨きに使います。






照明を工夫して、どのような座面に加工したのかがわかるように撮ってみました。













仮組ですが、木地は一応完成です。





自分の頭の中で考えたものが、自分の手を使って形になる瞬間。

この仕事の醍醐味です。






しかしまだ、漆塗りの工程が残っています。


この椅子には少々入れあげてしまい、予定より一週間ほど多く時間がかかってしまいました。






この椅子の肘掛けが妙に短いことお気付きででしょうか?

お店にお伺いして打ち合わせをしたところ、
椅子に合わせるカウンターがやたらごついということがわかりました。
普通の肘掛けではカウンターに当たってしまいます。
でも是非肘掛けが欲しい、とのご要望でしたので、肘掛けがあってもお客様が座れるよう、
片方だけで、しかも小さい肘掛けにすることになりました。