ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

虫の穴の話 その2

2011年05月26日 | 
 木を食う虫は木工屋の天敵です。

 蜂が巣を作っていた穴は明らかにカミキリムシの開けた穴です。木工屋的には害虫カミキリムシは大まかに二種類あるといえます。それは生木を食う奴と「死んだ」木を食う奴です。
 生木を食ったか、切られた木を食ったかは見た目ですぐ分かります。生木の方は穴が大きく、私の小指がスポスポ入るくらいで穴の色も黒い。これは明らかに木が生きていて、動物で言う生体反応があるからだと思います。虫にかじられた時に木が生きていて樹液がそこに染み出たから穴が黒いのではないかという、これは本当に調べたわけではなく、私の単なる勘です。この穴が困るのは、木目や木の組織などに無関係に縦横無尽に虫が食べ散らかすので材が台無しになることです。材木関係者では「テッポウ」と呼ばれています。私は今まで材木を扱っていて、この虫の生きている幼虫に出くわしたことは一度もありません。



 木が切られてから、あるいは枯れてから付くカミキリムシももちろんいて、上記の虫とは明らかに種類が違います。こちらの虫は木が伐採されて樹としての命が終わった後にやってきて卵を生みます。卵は皮に産むようなので、卵を産まれないように、取れる皮ははがすのですが、上手く取れない皮もありますし、荒皮はとっても薄皮が残っていれば虫が入ってしまうこともあります。かと思うと全く虫が付かないこともあります。その原因は木を切った時期やその後の管理など、条件はいくつか考えられます。幼虫はしばらくは皮を食べ、やがてシラタ(辺材)に入り、場合によっては赤味(芯材)まで食べ進みます。せめてシラタで止まっていてくれればいいのに、赤味まで虫食いになると材としては使い道がなくなります。
 こんな幼虫です。かなりのアップ。ちょっとウマソウな気もします。飢饉になったら食べてみようと思います。




 この虫が入った板はカリカリと虫が木をかじる音が聞こえることがあります。硬い木をかじることのできるこの虫の口は一体どんなしくみなのでしょうか?その研究でトンネル工事にでも応用できる技術でも開発できそうです。食べ物の中で暮らす気分はどんなものでしょう。ギネスブックには世界一長生きの虫として、何十年も木のなかにいた幼虫が載っています。切っも切っても虫のつけたトンネルが取りきれないと、がっかりとなります。不覚にも虫に気づかず製品を納めてしまい、お客様に「虫が出たよー」といわれることもあります。無垢の家具がお好きな方は虫のことでそんなにお叱りになる方は少ないのが救いです。農薬もあるそうですが、あまり使いたくありません。
 カミキリ類で虫が出る、ということはすなわち成虫が羽化したということです。その穴に蜂が巣を作るわけです。やっと話がつながりました。
 カミキリムシが開けた穴を蜂が利用するということに、連綿とした自然の営みを感じずにはいられません。穴に巣をつくる蜂もいろいろいるはずです。だいぶ前、草刈機のエンジンがどうしてもかからず修理に出したところ、不調の原因は蜂がマフラーに巣を作ったせいだということがありました。先日も久しぶりにエアガンを使ったところ、筒先から黄色いものが噴出しました。やはり蜂が巣を作っていたようです。
 これからしばらくするとシリアゲコバチという蜂もやってきます。変わった姿の蜂で、木に産卵管を刺し、他の幼虫に寄生する蜂です。長い産卵管を持った蜂も寄生する虫を探してよく集まります。私が見かけるだけでもいろんな虫が木を利用しています。借り入れまでして私が買った木を食べる虫は憎いですが、自然の輪の中にある素材としては当たり前のこととして受け止めるしかないという思いがあります。虫に食べられ、腐っていつか土に還るから木はいいのだとも思います。でも、大事な材をなるべく虫に食べられないように戦う日々は続きます。
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蛙池 阿鼻叫喚

2011年05月26日 | 動物
 工房の敷地の隅に池があります。




 工房の敷地は平らで、すぐに急な山が迫り、その山から獣などがやってくるのですが、その山のすそあたりから水が常に沸いていて、池ができています。写真でみると美しい泉のようにも見えますが、もしこのブログを見てこの池を見に来る人がいたら、がっかりするようなただの水溜りです。ブログのタイトルは、この水溜りに春になるとヤマアカガエルが産卵に来ることにちなんでいます。鹿や山鳩や蝶なども水を飲みにやってきます。工房を始めた頃にはここに蕗が一面に生えていたのですが、鹿が多くなったせいか、今はほとんど生えなくなってしまいました。



 仕事に飽きると外に出て虫を探したり池を覗いたりします。ただの水溜りもじっと見ているとおたまじゃくし以外にも数多くの生き物が住んでいることが分かります。アメンボ、これは誰でもわかりますね。水棲の甲虫のちっちゃいの。(名前は調べてない。)砂を体にくっつけて蠢くもの、たぶんカワゲラの幼虫。うねうね動く線虫。ヤゴ。もうトンボも飛んでます。
 おたまじゃくしも随分大きくなりました。蛙の産卵はこの池でも二回くらいありました。すると、最初におたまになった奴が後から生まれた卵に群がっているようでした。もしかしたら食ってるのかも!嗚呼厳しい哉自然界!

 昨日、遠目で見て、どうも水面が騒がしいと思い、そっと近づくと、、、



 ヤマカガシがおたまじゃくしを襲って食べていました。ヤマカガシは水辺に多い蛇で、魚をとって食うなどと図鑑にはかいてありますが、うちのおたまちゃんを食べに来るとは!どうも数が少なくなっているような気がしたのはこのせいか。おたまとて馬鹿ではない、ピチピチ逃げまどう。ヤマカガシ、何度もくねくねトライ。あまり近づくと逃げてしまうので一番の望遠でなんとか撮りました。ヤマカガシには怖い毒があるので気をつけて下さいね。
 蛇といえば先先日、朝自宅を出ようとすると家に巣を作っているスズメたちが一斉に警戒の声を上げているのでなんぞとあたりを見渡すと、家の壁にあるわずかな電話配線を伝って蛇が二階の軒下まで登ろうとしていました。そこには当然スズメの巣が、と思いきや、屋根の反対側がスズメの集合住宅でした。手も足もないのに家の壁を登るなんて、話には聞くけれどすごい運動神経だ。ファイトー!イッパアツッ!蛇は屋根の下に消えていきました。
 スズメは自宅の周りにはいるのに、工房では見ません。


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虫の穴の話 その1

2011年05月19日 | 
 この季節、晴れると虫がうるさい。
 クマバチ、このあたりではタマバチなどと呼ばれている蜂が巣作りをしていて盛んに飛んでいます。大きな蜂で、黒いお腹にお洒落な黄色い上っ張りを着ています。大きい虫ですがホバリングをして静止しているので、自転車の私とぶつかりそうになります。同種どうしてで縄張り争いなのか、こんがらがって飛んでたりします。
 そんなやつら、巣は木に穴を開けて卵を産みます。

 巣穴を掘るところは屋根の裏側の梁や干してある木材の柔らかい部分です。具体的には杉やシラタなど。材を入れてある倉庫の屋根はかなり穴だらけにされています。巣穴の下には木屑が落ちているのですぐに分かります。夜暗くなってからも穴にしがみつき、カリカリかじっている音がします。堅い材木のシラタに掘る場合はかなり痛んで柔らかくなったものにしか穴は開けられないようです。赤味には穴は掘れないようです。仲間の木工屋には彼らを嫌って片っ端から殺虫剤をかけたり網を材にかけたりする人もいますが、私は放ってあります。

 写真はクルミの板のシラタに掘られた巣穴です。時々板を切っていて巣をバッサリ切ってしまう事もあります。ごめんなさい!私もこの板を切って品物を作って家族を養っているんです!巣の中は卵や幼虫、エサの花粉のようなものが一列に並んで一匹ずつお部屋が出来ています。彼らの卵は昆虫最大らしい。奥の部屋の子が先に育つはずですが、入り口の方の子が羽化して穴から順番に出てゆくのをじっと待っているとファーブル先生の本には書いてあります。

 3ミリくらいの穴に通う蜂もいます。見た目はミツバチそっくりです。しばらく見ていると黄色い花粉のようなものをお尻に付けて穴にやってきてもぐりこみ、花粉を付けずに穴から飛び立つので彼らも子育ての巣を作っていると思われます。




 我が家にある図鑑では蜂の名前は分かりません。
 この蜂の利用している穴は彼らが自分で開けた穴ではありません。その穴は誰が開けたのか?「虫の穴 その2」に続く。乞うご期待!
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リスでしょうか、ネズミでしょうか。

2011年05月12日 | 日記
 外に積んである材木をいじっていたら、出てきたもの。



 たまにこういうことはあります。
 麻の実くらいの草の種が集めてあるのも見つけたことがあります。

 リスは何度か工房の庭で見かけました。甲高い鳥のような声で鳴き、二匹ぐらいでじゃれながら樹を駆け上っていきました。その敏捷さにはびっくりします。
 猫を飼う前には室内でもネズミの気配を感じることがありました。引き出しを開けたら巣があって子ネズミがいたこともありました。先日、久しぶりに漆を塗る部屋で仕事をしていたら、どこかに潜んでいたネズミがあわてて逃げてゆくのに出くわしました。

 工房を開いて18年、庭にだんだん胡桃の樹が生えてくるのは彼らのせいなのでしょうか。
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木取りピーヒョロ

2011年05月07日 | 日記
 今日は「木取り」という作業をした。作るものの図面をもとにちょと大きめの寸法で木を切って部材を揃える、それが木取り。今回作るものは2.5m長のテーブル、1.3m長の座卓、下駄箱など。製材して5年ほど桟積みし、積み上げて庭に置いあった材を下ろしながら使えるものを検分。この材は5年ほど前に借り入れをして購入し、自分で干したものです。作る物の部材が取れるかどうかはいつもドキドキです。どうしても望む材が見つからない時、それは苦しみの始まりです。適した材を探すためにあちこちの材木屋に電話したりネットで探したり右往左往して時間と労力を消耗する羽目になります。そんなことがなるべくない様に、無理をしても材木を集めています。
 さて今日は比較的順調に材を拾うことが出来ました。長いもの、広いもの、外側になる部分などを優先的に選び、次にあまり見えないところ、短いもの、などと木取りの作業は進みます。

 作業は日中はずっと庭でした。鳥たちも巣作りの季節なのでしょうか。外で作業していると、とてもにぎやかです。特に今うるさいのはトンビ。ピーヒョロピーヒョロ一日中鳴いています。工房の上流にカラスの巣があるのか、そちらに飛んで行ってはカラスの夫婦に追いかけられてピーピー鳴きながら帰って来るのを何度も繰り返します。電線にとまって鳴いたりもします。猛禽のくせになんとなく情けないやつです。昔はいなかったうるさい鳥もいます。村の人は「朝鮮ウグイス」などと呼んでいますが、正しい名前は分かりません。ヒヨドリくらいの大きさで、薄茶色、ピーチクピーチク一日鳴いています。きれいな声ではあるのですが、ずっと聞いているとだんだんうるさく感じます。近所にはアオバトという珍しいハトがいるそうですが、姿は見たことがありません。時々「アオーアオー」という声が山から聞こえます。ウグイスも鳴いています。ウグイスは春の鳥とみなさんは思われるかもしれませんが、この辺では8月くらいまで鳴いているので、ありがたみがありません。カケスも鳴きますが木から出てこないので、姿はほとんど見ません。キジバトもよく見ます。夫婦仲のよい鳥ですね。
 日が落ちて鳥たちが静かになった頃、フクロウが鳴き始め、私の作業も屋内に移ります。

 写真は検分した板の一枚。このような穴は初めてです。立ち木の時にキツツキでも巣穴を開けた跡でしょうか。

 
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