ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

お箸作り

2013年03月30日 | 木工
天神様の桜が咲き始めました。





ソメイヨシノでなく、山桜です。
工房のそばのソメイヨシノはまだまだ咲かないです。
モクレンがやっと咲き出しました。







何日か前の同じ桜の木の写真。







通勤途中にあるワサビ田。花が咲きそうです。







お池のオタマジャクシが孵った。







藪の中で猫が昼寝してた。











先日来たオノオレカンバという材で箸を作ります。
この材を使うのは初めてです。
埃を嗅ぐとちょっと苦い味がする。

丸の内の老舗のとんかつ屋さんからの注文で100膳ほど。
漆を塗って仕上げます。







まず2倍の長さに切って片面を機械で削ります。
面白い木目が出ました。






ご覧のような治具に載せ、箸になる材を楔形に切ります。
小さなものを加工するときには指では抑えられないので、
目打ちのようなものを使って加工材を保持します。
この目打ちは畳針に柄を付けたものです。

指にバンソコウ。ひび割れが治んなくって。






3mの長さの板を3分の2ほど使って、ざっと120膳分、240本ほど取れました。
大きな板で小さいものを作るのはちょっともったいないけれどしょうがない。
広くて無傷の1mほどの長さで幅40cmの板が残りました。
小さい座卓でもできそうです。










看板作り

2013年03月27日 | 木工
また寒くなってしまい、冬の下着を引っ張り出してまた着る。
梅が咲いたところで、春の進行はのろのろ。
でもやっと鶯の鳴き声が聞かれるようになりました。






工房の庭に生えている木に花が咲きました。地味だけど、花は花。
当たり前だが、どんな木でも花は咲く。
クマシデかなー?自信がない。




4種、7台の椅子の木取りをしました。
樹種や寸法など、いろいろ細かく違う仕様の注文だけれど、
基本の形が同じなので一緒のロットで作る。






作るものの型をそろえる。







この材木はブラックウォールナット、北米産。
厚さは66mm、長さは2.5mくらい、幅は20cmくらい。







ウォールナットは名のごとくご覧のように黒い木なので、鉛筆で墨をすると見えない。
そこで白鉛筆で描く。




ウォールナットは普段私が使っている国産材の倍くらいの値段です。
しかも、規格が決まっていて、使いづらい。
今回の椅子も45mm厚の板を普通使うので、66mmでは無駄に厚すぎます。
そこで、板を鋸で挽いて必要な厚さに割いて、残りも有効に使えるように考えました。
66mmの厚みから欲しいのは40mmと20mm。
40mm厚は椅子の足、20mm厚は座面になります。
なーんだ余裕じゃん、と思われますが、板が反っていたりして、そううまくはいきません。






丸鋸(昇降盤)で切りました。鋸が入りきらず、少し切り残しがあります。






それを手鋸で挽き切ります。
帯鋸などの機械でなく、手鋸にしたのは切りそこないを恐れてでしたが、
あとからやってみたら機械の方がよかった、残念。






これは国産のミズナラ。厚さは45mm。
鉛筆を置いたところに節があります。
ここを見ると、木が若い頃に枝があり、その枝が落ちて、
その枝の跡を塞ぐように樹が成長していったのがよくわかります。







椅子の木取りを終えて、それは置いておき、看板を作ります。






材はケヤキ。山の木ではなく、里育ちのケヤキですがなかなかの上玉です。
機械に入らない幅なので、手で削って仕上げました。






これが原稿。
お客さんが分かってしますが許してください。
字はワープロのフォントです。字に自信がないから。






字の大きさを考え、位置を決めたら板の表面に字を写します。
紙の下にカーボン紙を置いて、木のペンでなぞります。
そのままでは薄いので、鉛筆でもう一度書きます。






トリマーという機械を使い、写した字を見ながらフリーハンドで字を彫ります。
トリマーはご覧のような先端刃物が高速で回転して木を削る機械です。
刃は10、6、4、2mmとだんだん細いものに替えて太いところから細いところへと掘ってゆきます。






機械を使っての加工でこのくらいまでにはなります。
このあとノミやサンドペーパーで仕上げ、
字に黒を入れて塗装すれば仕上がりです。




家具作りが本業ですが、木を加工してできるものであれがいろいろ作ります。


学習机の完成・材木干し

2013年03月21日 | 木工
春がどんどん進む。





隣家の紅梅が咲いた。
この木は結構な老木です。
花のアップの写真も撮ってみたけれど、
梅はやはり枝ぶりが大事だよね。






川沿いの崖の木に花が咲いてた。
調べると「アブラチャン」という木らしい。変な名前。
こういう木は花のアップより、全体のたたずまいを見る方がいいと思う。
ので、下の写真も。










桂の木の新芽がわずかに赤くなってきた。





通勤路の道端に比較的大きな漆の木が2本ほど生えていて、
いつも通りながら、実がついたなあとか紅葉したなあと眺めていたのだが、
先日、幹に刻みが入れられているのに気が付いた。



山の人が木を立ったまま枯らす方法だ。
かぶれるから嫌われて枯らされてしまうのかな。
私は漆に強いから気にせず毎日下を通っていたけれど。
漆をかいたりする気はないけれど、何となく残念。







材木にかけていたトタンが強風でふっ飛んでしまい、直していたら、
冬の眠りから覚めた蜂がいた。
セグロアシナガバチかなー。虫の名前は難しいなー。






ヒシバッタなども卵から孵ったようです。






今日、山の向こうの町から材木屋さんが納品に来てくれました。



独立したころからお付き合いのある、もっともお世話になってきた業者さんです。
広葉樹ばかりを扱う、とても珍しい製材屋なのですが、
道路の拡張にかかって、昨年製材工場はやめてしまいました。
今回も本当は少しばかりの材が入用だっただけなのですが、
上野村の特産のシオジという材があったので、ついいろいろ買ってしまいました。
今回のシオジはかなり前に仕入れてあったものだそうで、原生林の木だそうです。

必要だったのはオノオレカンバという木です。
このあたりではミネバリともいいます。
斧が折れるほど硬い木なのでオノオレカンバ。
この木で箸やスプーン、レンゲなどを作る予定です。
硬いけれど狂いにくい木なのだそうです。

写真右手がシオジ。左がオノノレカンバ。



そしてあと1種類、クルミも買いました。
このクルミだけは製材したての生木なので、干す必要があります。
来た板は皮もむいてありません。
皮を付けたままにしておくと虫に卵を産まれて食害にあうので、むく必要があります。





これが皮付きの板。
皮には森に生えていた時の苔まで付いています。





銑(セン)という道具を使って皮をむきます。
結構な労働です。





皮をむいた板。





ヒビの進みそうなところにかすがいを打ち、桟を入れて積み上げ、屋根をかけて作業は終わり。
生の板はずっしりと重いです。
作業中、山中でサルが喧嘩をする声が聞こえる。

45mm厚の板なので、使えるのは2年後くらいです。





さて本題の家具作りといえば、




学習机はやっと完成しました。
机と引き出しはサクラ材。
本立てはサクラがなくなってしまったので、クルミ材です。





サクラの家具は凛とした表情があっていいですね。
ツマミはウォールナット。






今回の机と混成ロットで作っていたTV台。
こちらはクルミ材。
小さい家具で、なかなかわいい出来です。
この倍くらいの大きさのものはよく作ります。
TVが小さいので台も小さい。














学習机の制作 1

2013年03月16日 | 木工
東京では桜が咲いたそうですが、お山ではやっと梅が咲きました。




隣家の白梅です。
紅梅はまだ蕾が硬い。





陽だまりの石垣にあるレンギョウがいつの間にか満開すぎ。
この時期、日当たり次第でずいぶん植物の育ちが違うね。


一日の仕事を終わりにするのはいつも8時頃。
工房を出て空を見上げると、
冬の初めに戸口の正面の山に登っていたオリオン座が
今頃には西の山に隠れて見えなくなっている。

この冬は空が晴れてとても星がよく見えた。
本当に星が多く見えると星座が分からないくらいになる。
もちろん天の川もよくわかる。
月が明るい夜でも、空が澄んでいると星もちゃんと見える。惑星もわかる。
旅客機が空高く光を点滅させながらどこかへ飛んで行くのも見える。

今夜は西の空にチェシャ猫の口のような月が出ていた。





お子さんの学習机などを制作中です。

いわば季節商品ですね。ご注文をいただいたのは秋ですけど。





穴あけ、ホゾなどの加工が終わった部材です。
材はサクラ。



学習机を作るとき、用材はサクラ、ブナ、クルミなどが多いです。
木を板にしたとき、表面には導管、師管などの穴があります。
樹種によってはこの穴が大きくて、薄い紙に字を書くときなどにペンが取られてしまいます。
でこぼこの上で字を書くようなものです。
なので、穴が無いか小さい木を選ばないと学習に支障をきたすことになります。
上にあげた木は表面が平滑なので机に適しています。
ケヤキ、クリ、センなどは穴が大きくて学習机には向きません。





机の基本骨格の組み立てが終わりました。
結構複雑なものです。
穴が集中するので強度を保つのに気を使います。


これに甲版を付け、引き出しも作ります。

下にキャスター付きの引き出しが入ります。

本棚が上に載ります。




何とかご入学の前にお届けできそうです。

ライティングチェストの完成

2013年03月12日 | 木工
家具ができて、納品に伺いました。




ショウケース付きチェスト。


上部のショウケースのアクリル板は静電気で埃が付くので
養生の紙をはがさないで嵌め込みました。
ガラスの棚板も業者から受け取った時の養生の紙をやはり取らないまま納品にお伺いしました。
つまりアクリルやらガラスの紙をはがし、
ちゃんと部品が付いた完成品を見たのは作者の私もお客様のお家で始めて、ということになります。
LEDを付けると透明な部品が綺麗に冴える。
下もガラスの引き違いです。









こちらがライティングチェスト。


1番上がガラス引き違い。
2番目が木の引き違い扉。
3段目がビューロー。
4段目引き出しと机板の腕木。
下が観音開き扉。


どちらの家具もクルミ材です。




家具の能書きをすこしばかり。




LEDとスイッチ。

配線をうまく隠せたと思う。
スイッチがあまりかっこいいものが見つけられずちょっと残念。
裏板にPCなどの配線穴があり、コンセントも付けてあります。









鏡が出てくる仕掛け。

上と左側に付けた溝を、鏡の枠に付けたダボがスライドして鏡が出てくるような仕組み。



机になる蓋の仕組みについての講釈を。








上の図が普通のライティングビューローの蓋。
黒い点が蝶番の支点を示しています。
閉めたときにどうしても蓋が本体の箱の前に出てしまう。

下の図が私考案の蓋。
支点を本体の中に入れたので、締めたときにすっきりと収まる。
でも工作はめんどくさい。




これは我が家で使っている上の図のような蓋の構造のもの。
ほら、蓋が前にとび出ているでしょう。





さて、仕事の合間に古いちゃぶ台の修理をしました。




我が家に古くから伝わるものです。
よくある足がたためるやつ。
子供が勉強によく使っているのですが、だいぶガタがきているので修理することにしました。




ホゾも手作業で作ったものと分かります。

ばらして、欠けた部材などは補修し、
よい糊を付けて締め直し、調整をしてまた組み立てました。

このような足のたためるちゃぶ台を自分なりに作ってみたいとずっと思っていますが
いまだに良いアイデアが固まらず、作るに至りません。

この古いものを修理して思うこと。
まず、材料の選択。要所にはもっと硬い木などを使わないと強度が出ない。
たたむしくみも、力のかかり方とかを考えると、これではいずれガタが出るのはいたし方ない。

でも、ではどうすればもっと良くなるのか、その答えが見つけられない。
何よりも、これで何十年と使えてきたのだから、
これでいいんじゃないかともいえる。




何より、この使いこまれた風合いがすごい。
これもまた木の良さ、美しさだと思う。
使い込んできれいになって、家族の記憶を刻んでゆく。
そして最後には自然に帰る。



木という良い素材を仕事にできて、幸せに思います。